ウィンリィ
 
*「ミュンヘン1922」補足話に付、設定が違います。


「ね、手伝って欲しいんだ」
「?…トマト?…なんだ、ラッセル、やっと出来たのね」
 サエナの手に下がっている籠の中身。それを見て苦笑した。
「あはは、これ違うみたいだけど。…今度会う時には〜…できてるかな。アルがモーターの作り方とかなんか教えてたし。…ね、ウィンリィ」
「……こん、ど」
 家の裏手、勝手口の階段。そこに腰掛けていた。何故か、玄関先には出たくなくて。
 手に持ったライトを地面に置いて、立ち上がる。
 あたりは薄暗くなってきていた。
「今度、なんて…」
 俯くと長い金髪がさらりと落ちて顔を隠す。
「あいつ、…何も言わないでいなくなっちゃって。アル、そんなあいつを探してずっと駆けずり回ってて…!」
 段々大きくなる声。不安と一緒に。
「ウィン…」
「あんな手足で、しなくてもいい苦労して!…あたし、エドとアルが身体を取り戻すまで、近くでサポートするって誓ったのに。…それなのに、あいつ、また…」
「あ、あの、さ」
「……あ…。別にサエナを責めてるんじゃないわよ。…――ほら、それ、トマト使って作るんでしょ。早くしないと夕食の時間過ぎるよ、腹減ったーって騒ぎ出すから」
 上げた顔は…笑っていた。
 ライトを持って、何事もなかったかのように勝手口の扉に手を掛ける。

「ウィンリィ」

「?」
「何処だか知ってる?私の…家があるとこ。今度ウィンリィがミュンヘンに遊びに来る時、…ほら、地図とかないと分からないでしょ。教えてあげる!」
「いいよ」
 肩をすくめて笑う。
 にわかには信じられないが、『遊びに行ける』場所なんかではないことは分かっている。それに、エドワードを連れて行ってしまうような違う世界の話なんてしたくなかった。
「でも、…エド、ここに帰りたいってずっと思ってた」
「……」
「だから、ウィンリィを悲しませるようなことしないと思うから、今、向こうに行っても、また…」
「――――別に、今回だけじゃない。いっつも…そうなのよ。待ってるこっちの身にもなって欲しいわ」
 はあっと肩で息をついて、サエナのほうを振り向く。それは「話をしてもいい」との合図だった。
「前もそうだった?ああ!旅してたとか聞いたことある」
 二人で勝手口の階段に腰を下ろす。
「そ、…手紙も電話もよこさないで、ふらふらしてるのよ」
「ふふ」
「それで、「機械鎧が壊れたー」って、どんな使い方してんの!!って思うような壊し方ばっかり……――で」
「……」

「あいつ、そっちで迷惑かけてない?」
「…大丈夫。仲良くやってる…。……でも、こっちを思い出すことも多いみたいで、…寂しそうな顔もしてる。…エドの見たことないような顔、ここで見たし。リビングにある写真もいい顔してるよね」
「……。あたしもそっちに行きたい、なんて言わないわよ。あたしはここで一流の機械鎧技師になるの。…それで、ここであいつらを待ってるから」
 かち。
 手のライトを天上に掲げてスイッチを入れた。光の帯が空に吸い込まれる。
「世界が違っても空くらいは一緒でしょ。そのうち降ってくるんじゃない?」
「その時は〜…エドのこと、ちゃんと送り出してあげるよ。あ!ウィンリィが好きそうなお菓子とか持たせるから」
「あはは、それじゃ郵便みたい。…そういえば、エド、そんな寂しそーにしてるの?」
「ん〜…。ちょっとね。……その度にアルも寂しそうで」
「…。なんだ、結局サエナはアルなんじゃない」
「ぶっ、今、そういう話じゃないって!!……そうじゃなくて!この世界もいい所だからって…」

「…あたしも、ちょっと安心したかな。アルとか、サエナがいる所で。…ねえ、サエナ、またいつか会えるよね」
「ん。空は繋がってるとか、あるんじゃないかなー…。次に会ったら機械鎧の中身、ちゃんと見せて」
「その時はこれ、合図」
 かちかち、とライトを光らせる。
「これ?」
「分かりやすいでしょ。特に夜は」



*


 かち、かち。
「……おかえりー。アル、エド」

「!」
「サエナ。ただいま」
 二階からの光。
 エドワードとアルフォンスは道路から二階を見上げた。


 二人が部屋に戻ってきた後、数回、今度は窓から星空に向けてライトを点滅させた。
「……」
 その背をなんとなく眺めるエドワードとアルフォンス。

「今は誰に合図送ってるんだよ…?」
「合図…?」
「内緒。…って言うか、わかんないんだけどね…。帰る所って感じかなぁ…」





16話17話の間辺り。
ウィンリィの話がなんとなーく抜けていたから。
きっと彼女もイヤだった筈。折角戻ってきたのに何処だか分からない所にまた行くなんて。

ライトの話はアニメであったやつ。忘れかけているのでよく覚えてないんですがね。
どんなんだったっけ、…ま、いいけど。
ライトの光を空に向けると帯が出来ていいじゃん?って(笑)。

ウィンリィの性格がよく分かりません…。いや、分かるけど、書いた事があまりないから動かしにくい。

15.08.2007



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