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リメイクだけど、この1年で長義と主の関係性が変わったので大分構図変わった……のもそうだけど、絵も変わったな…。
割と1年前の絵が見るに堪えない(笑)。
そして適当に考えながら書く小説。
―――――――――――――――――
つげ櫛が入っている白い小さな引き出し、刀紋が刻まれた真四角の守り鏡の横。
手のひらに収まる大きさの瑠璃色の箱の中には、これまた青を基調とした装飾品が並んでいた。
金色や銀色の枠に守られた青色の石を使ったもの。
「さて…。ああ、これだな」
目を渡すと、今日はそれを付けていなかったのだろう。目当ての物が一段と光を反射していた。
「これって、アンティークなんでしょー?」
いつだったか、その青い石を指で辿りながらそう審神者は言った。
「ああ…何か古いものを身に着ける…という言い伝えがあるらしいからね。それで選んだものだったな。 ……なるほど、骨董、か」
「えー。……骨董とかなんか可愛くない」
「はあっ、横文字にするかどうかの差、だが?……それを言えば刀剣も骨董だろう。古く、美しく価値があるもの、と」
「じゃあ骨董もカッコイイ」
「はは。なんだそれは」
「というか、なんか重みあるよね」
「時も重さ、かな。…なら可愛いよりかっこいい方がいいな」
「あは」
――――そんなやり取りをしたな、と思い出しながら山姥切長義はそれを箱から拾い上げ、机の上に置いてあった白い布でそれを軽く包んだ。
締め切った障子からは午後の光が柔らかく注いでいて、その光が机に落ちている。
そのまま部屋を出ようとしたが、長義は私物が入っている暗い色の引き出しからいつもの黒い手袋を出し、指を通して机の上の白い布の包みを拾い上げた。―――素手を見せるのは極力、主である審神者だけにしておきたいらしい。
「(約束したからねぇ…)」
長義の足は目的をはっきり持って進んでいた。
そこは本丸でも声が届かない静かな所で精神集中するにはうってつけの場所だ。
刀剣男士たちの個室が並ぶ廊下を過ぎてから左に曲がり、それから鍛錬所を眺められる縁側を―――――
「山姥切長義ィ!!」
…―――通過中に廊下を勢い良く滑る音共に大きな声に呼び止められる。
「…おや、何かな。………と言うより個室からずっとつけて来てたな?」
「そうだよ、ここまで来ないとみんなに迷惑だかんね」
「結構。頭に血が上っても物の分別は付いているようだね」
「……っ! だーかーらー、そういう言い方がムカつくっての!」
赤色の内番服を襷掛けして、濃い色の長い髪を結っている。この本丸の初期刀・加州清光だ。
「それで? 加州清光。俺に何の用かな?」
長義は歩みを止め、ひらひらと手を振りながら漸く加州に向き合った。
「かな? じゃないよ!」
「ああ…。まさか、まだ言っているのか?全く今から変わる事もない事を…飽きもせず。ご苦労な事だね」
ああ、と声を上げ、ふっと口元に笑みを浮かべて。
「偽物くんに伝言を依頼したり。まぁ、忙しい事だよ」
「別に!…もう、しちゃった事については……そりゃ仕方ないけどさ」
「………。 へぇ、なるほど? 随分直接的に言うねぇ」
「は!?何も言ってないよ!?俺!」
面白そうに笑う長義とに、加州は「がー!!っもう!!」とでも言いたげに髪をくしゃくしゃとかき、それからはっとしたように撫でて直す。
「主が…」
「―――俺の妻、になったのがそんなに気に食わない、と?」
「…ッ。 良いわけないよ。俺は初期刀。…主が顕現させたわけじゃない政府刀に、なんて」
「……は。初期刀政府刀、と君はやたらと口にするが……。考えようによっては君も政府刀なのではないのかな?」
「何?」
一つ息をついて続ける。
「初期刀は審神者が顕現させたわけではないだろう。主の初鍛刀は他の男士だと記憶しているが?」
「……。 そ、そうかも、だけど!じゃ、じゃあ!俺は主に選ばれた、ってのがある。でもあんたは勝手に来ただけじゃん!」
「勝手に来た。ああ、そうだな。…だがそれに何か問題でも?俺とて、最初から主に懸想していたわけではないよ。…最初から好意、それに近い何かを感じていたらそれはただの刷り込みだ」
話が長くなりそうだ、と。長義は息と共に目を伏せ、壁に背を付けた。
それを見て、加州も縁側の柱に背を預ける。
そう幅がない廊下の端と端で二振りの刀剣男士が向き合っている状況だ。
「お…俺―――は、主をおんぶしたことあるし」
「は? ……――――ああ、それは違うな。背負ってやろうとして断られたのだろう?」
「!? なんっ…で」
「……」
組んだ腕、その中の布の固い感覚がする。
「…やはりか。いくら疲れても怪我でもしない限り、主が大人しく背負われるとは思えないんでね。しかも本丸開設当初の話だろう?」
加州のその反応。
恐らく以前審神者から聞いた「本丸の端まで歩いたら疲れてしまった」の話だろう。
「だから、そんな昔の事を蒸し返して俺に言ってどうするのかな。…まさか、俺が知らない主を知っている―――とでも?」
「あーあー。そうだよ。その時間だけは埋められないかんね」
「ああ、では主の過去の記憶はくれてやろう。俺に会わない主には興味ないんでね。……その代わり未来永劫、主の時は俺のものだが?」
「ッッ…ほんっとうに!!」
「加州清光」
長義は壁から背を離し、もう一度加州の目を見やった。
「な、なに…」
「俺ならば、いつでも相手になろう。手合わせでも何でも、ね。…この山姥切長義。逃げも隠れもしない。まぁ、逃げるなんて選択肢は元よりないけどねぇ」
「……は?」
「確かにこの本丸の主を後から来た俺が奪ったも同然。ならば、仕方ないとは思っているよ、君のような行動はね。――――ただ。主にはあまり心配をかけるな。弟の様な君が、泣く姿は見たくないそうだからね」
少し声を落として、目を伏せる。
「!! っ…。ちょっ、ズルくない…?その言い方」
「だから、俺から主を奪うのではなく、…主から俺を消してみればいいよ。それなら主が心を痛めることもないさ。双方、恨み言はないだろう? ……どうぞ、存分に挑戦を」
「あー!」
だが、加州が「なるほどー」と続ける前に、
「まぁ、…どんな男が束になってかかって来ても到底無理だろうけどねぇ?」
口角が上がる。
笑いを堪えるように何となく口元に持ってきた指先、そこに包まれた布から青い装飾がきらりと零れ落ちた。
唇に触れるその青い石は審神者――――彼女との誓いの証だ。
「っあ…!! そ、それに!可愛いのが好きな主は青より赤だって!!あ、赤いバラとか!?」
「おや、だが君はその青い装飾を付けている主も可愛い、と褒めているだろう? …ああ、青いバラは夢叶う…だそうだよ。俺は主の夢も、全て守ってやれるよ」
「では、俺は予定があるから失礼するよ。――――俺に戦いを挑むのならいつでもどうぞ」
「(全く、無駄な時間を食ってしまったな…)」
それから、いや、無駄ではない、か。と言い直し。
「そうだな。…まぁ、あいつの言う気持ちもわからないではないからな…」
他本丸の加州清光にも勿論、会ったことがある。その加州より少し幼く、騒がしいかもしれない。
だが素直で真っ直ぐで。
「はは………。主がこの本丸の審神者でいる限りは皆を邪険にはしないさ」
ただ、もし自分逆の立場だとしても。
「俺は変わらないけども」
あの栗色の瞳が、こちらを向くまで。
当初、騒がしいと思っていた。
戦を知らぬ時代の生まれの審神者。
だが、いつからだろうか。
刀剣男士らと話すその姿に胸がざわつくようになった。
こちらを包むような言葉――――
祈らせて、守らせてよ。 ――――と。
「………は、やれやれ、だね、本当に」
ギ、と音を立てて戸を滑らせた。
ここ数週間使っていなかったのだろう、少し滑りが悪くなっている。
だが、足を一歩踏み入れると、凛とした冷たい空気と、耳鳴りがしそうなほどの静寂。
「ふー………」
小さな台に包みを置き、手袋をゆっくりと指から抜く。
その台の前に跪坐し、息をついた。
素肌に触れたその装飾―――首飾り。青い石は長義を待っていたかのようにとくんと波打つ。
「ああ、これも骨董だったな、古いもの同士、仲良くしようじゃないか…」
彼女を守る。
俺の力をこれに分け、「俺」にして。
片時も、離れぬように――――。
* * * * * * * * * * *
「――――――〜ッ!!」
「………ご苦労だったな」
どすどすと歩いてきて、加州清光は山姥切国広の隣にどっかりと腰を下ろした。
「あのさ、なんで写しなの?あれの」
「…そのようなことを言われてもな。…何故生まれた位に答えようもない質問だぞ。発注された時の話でもしたら正解なのか?」
「いや…。そんなん聞きたいわけじゃないけどさ」
「……本科は、誰よりも主を見ているし、…この本丸を見ている。…と思う。 確かに嫌味な奴だとは思うが、……俺は今となっては、悪くないと思っている」
「へー…」
「主に心配かけるな。お前が泣くのを主は望んでいない…、と言われたんだろう?」
「…。なんで知ってんの」
「なんとなく、だな」
国広は、いつものように茶菓子を二つ取り出し。加州に差し出し、残った一つは自分で齧った。
「まぁ、さー…俺は主の可愛い弟だからさ。いいんだけど」
「…ああ」
「だが―――…俺は主の弟になったつもりはないが」
「!?」
「……そうだろう?主は「俺の」主だ。本科とは関係ない」
「………うわ…。ねえ……。山姥切長義に似てきた?」
「……。気色の悪い事を言うな」
装飾は「こちら」で、
約束したからな、は「こちら」
本丸の端まで歩いたら疲れた話は「こちら」 …何気にいろいろ続いた。
加州は主に恋愛感情があるというより、「取られて悔しー」「状況変わったら嫌ー」ってだけの様な気がする。
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