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6月です。ジューンブライドとか言うやつです。 笑。

出来ればこちらを先に読んでいただけると何となく話が繋がってる。


思いつくままに話を書いたらなんか長い。


――――――――――――――――――――――――――

「お前もか、偽物くん」

「…?」
「あぁ、いい。……はあっ、今日「も」騒がしいね。朝からずっとこんな調子だが。仕事にならないよ、全く」
「忙しそうだな」
「おかげさまでね。……それで、なんだ?俺の仕事を手伝いに来たわけではないのだろう?」
「俺ではない。…加州清光から伝言だ」
「……は、 まぁ、予想は付いている、が。 ――――とりあえず聞こうか」
 長義は文机から目を上げ、山姥切国広に向き直った。
 夕刻――――だが、長義が零した通り、朝から何度か繰り返されている。

「では、そのまま伝えるぞ「初・期・刀の俺が言うけど!ぜっっったい認めないからね!!」……だそうだ」
「ふうん、それについての返答は必要かな?」
 顔色一つ変えずに、息だけついて。
「あるのなら伝えよう」
「「別に初期刀に認められずとも…俺は政府刀だからな、関係ないよ」…と」
 額に手を当て、前髪をかき上げた。
「そんな問題ではないだろう。俺たち刀剣男士の所有権は完全に今の主だ」
「…それこそそのような話ではないよ、偽物くん。俺の所有権の事ではない。あちらが「初期刀」とわざわざ付けてきたからだろう。だからわかりやすく返してやっただけの事。……―――ふん、…側に居る時間など…なんだというのかな」
「………。羨ましいのか。俺もかなり初期の顕現だが。主と共にしている時間はお前より長いぞ」
「は? 全く何を言っているのやら」
「本科も、主の事になると妙な言い訳をするもんだな。お前にしては回答が妙だぞ」
「何がおかしい?今の流れで何か愉快な事でもあったかな?」
 少し、ほんの少し国広の口角が上がったのを長義は見逃さなかった。それを見、片眉をく、と上げて。
「いや…。…では確かに伝えたぞ。山姥切長義」
「はいはい、お勤めご苦労様」
 いかにも「興味なさげ」にひらひらと手を振って。





 それから数時間。
 風呂上がりで乾いた髪をつげ櫛で梳いてやりながら、ふと先程の国広との会話を思い出した。

「………」

 あの子たち、と彼女は言う。
 確かに「自分の刀剣男士らのお姉さん」になるつもりだったらしいのだから、どうやら今になっても保護対象の目線は抜けていないのだろう。
 彼女―――審神者より精神的にも肉体的にも大人の刀剣男士ばかりだが。

「どしたの」
 手が止まっていたのだろう。振り向いた審神者と目が合う。
「…ああ、いや」
「昼間さ、清光にいろいろ言われて。主はみんなのものだーとかなんとか」
「へぇ?」
「でも、あの子、納得してくれたよ。主が幸せならいい、って」
「…ああ、「主の」幸せなら望むだろうねぇ」

 だが、他の視点からはどうかな、と心の中で付け加える。
 ――――「納得してくれた」 時間軸的にそれはない、だろう。国広が伝言を伝えに来たのは夕刻だったからだ。あの山姥切国広が誰かに頼まれたことを先延ばしをするとは思えない。つまり、伝言を頼まれてすぐに来た、と踏んでいる。
 それに、口に出してやる義理もない。自分の想いは、自分とこの審神者だけで理解していればいいのだから。

「あー、もしかして、それ?」
「……。だったら何だというんだ?」
「うわ、なんかごめん。結構言われたんじゃない?」
「は?君が謝る必要などないだろう。…まぁ、些末な事。これだけ男が居るんだ。すんなりいくとは思ってないさ」
 手の櫛を椿油がしみこませてある布で拭い、机の小さな引き出しに仕舞いながら。
「俺は誰が何と言おうと、ね。関係ない。 ――――ああ、君に顕現された刀でなくて良かったよ。……俺の姉やら妹になられてはこの仲にはなれないからな」
「え、なにそれ」
「はは、こちらの話、かな」
 髪を、首筋を撫でれば、くすぐったそうに肩を捩らせ、背後の身体に身を預ける。

「ふふ。ちょーぎー」
「おい、俺の名を改変するな。…返事しないぞ」
「してるじゃん」
「ッ ………どうにも甘いね…全く」
 苦笑しながら、撫でる手を髪から肩に滑らせ緩やかに審神者を抱く。

「ね?長義」
「何かな」
「私さ、うちの子たちとみんなでワイワイするもの好きだけど、長義と二人っきり、ってのもいいなぁって思うんだよね」
「へえ」
「実際は…まぁ、難しいかなー、って思うけど」
「ああ……。俺は騒がしいのはあまり好みではないけどね。…その後半は同意かな」






 ――――深夜、ふと目が覚める。
 心地よい重みが胸から腕の付け根に。
「……ああ、そうだな…」
 長義は指に触れる濃い色の髪をくるりと絡め、ぽつりそう言うと傍らの肩を抱き直してまた目を閉じた。




* * * * * * * * * * *




 ―――――で?
 あれ?うちの本丸の空間ってこんなんだったっけ。

「いやいや、そんなことないし」
 何となく昨晩からの記憶が曖昧だ。
 あのあと長義の部屋で何となく喋っていたらそのまま寝てしまった気がする。

「で、朝になったらなんかこれだし」

 見回してみる。
 あったはずの布団がない。今、畳でもない何となく白い地べたに座り込んでいる。
 着替えた記憶はないけれど、夜着ではない。

 どうもふわふわする。
 空間は「なんとなく」白くて。気温も心地よい。
 確かに来たことがない場所なのに何故か安心する。

「うーん? 真っ白だし…また豆腐建築?」
「白ければ豆腐などと…。残念な辞書の持ち主だね、君は」
「あ!長義だ。よかった。……ってここ何処?部屋じゃないよね?」
「まぁ、俺の神域みたいなものかな」
 手は、空間の何かを掬うように。
「みたいなもの?」
「ああ、完全に入れてしまうと君が出られなくなる…かもしれないからねぇ」
「うわ、なんか今、さらりと怖いこと言った!」
「だから、大丈夫と言ったよ」
 言いながら手を貸し、立ち上がらせる。
 もやがかかっているような空間を見上げていると装飾の彫刻を纏った白い柱が建ち、祭壇の様なものが突然現れた。

「お、なんか教会っぽい」
 気が付けばまるで最初からあったかのようにその中央に立っていた。
「ああ、君の記憶からね。 ―――へぇ…これが」
「記憶? え、じゃあ本物じゃないの?すごい!近くで見てもいい?」
「はは。どうぞ」
 駆けだし、その柱を見上げたりしている審神者を横目に祭壇の目の前に歩みを進めた。


「主」

 呼ばれて振り向く。
 手を差し伸べて。

「俺たちだけだ。 俺の神域、君の記憶。 ――――ここで」
「! あー…そういう、こと」
「……。何だと思っていたのかな。全く呆れるね」
 導かれるようにゆっくりとその手に歩み寄る。

 こつ、こつ、と鳴るこの靴の音は現実にしか思えない。
 気が付いたら鳥の声が聞こえ、陽の光まで落ちてくる。

「まさか今更、嫌などとは言わせないよ。この俺を本気にさせたんだ。……だから俺に貰われてくれ、名実ともにね」
「ふふ、…もう、なんかすごい言い方」
「…だが事実だろう? 俺はあまり他に執着する方ではないと思っていた。―――が、それを覆された。ならばもう決められた事」
「うん…」

 目の前に立つその銀色の髪を持つ刀剣男士は、恭しく手を胸に当て。
「この本科・山姥切長義。――――貴女と共に在ることをここに誓おう。この刃も身も、貴女の為に」
 差し出され、その首にかけられた装飾は、とても古い時代からその深い青色だったのかと思うほど深く。角を持つ石は目の前の刀剣男士を表すそのもの。
 濃い色の髪を分け、首の後ろに手を回してチェーンを掛ける。ゆっくりと両の手を首に沿わせながら、青色の石に触れて、顔の輪郭を辿り。
「ああ…。よく似合っている」
 目を細め、微笑みながら言ったその顔が、その瞳がとても美しくて、優しくて。
「っ…」
「どうかしたかな」
「…うんん…」
 じわりと胸が熱くなる。この青い瞳に今、自分しか映っていない事にとても幸せを感じる。



「これって、二人を死が分かつまで とかって言うやつ…?なんかそういう決まり文句みたいなの言うよね?」
「ああ、そのようだな。「末永く共に」の意味だろうが。……だが、死が分かつ、だと? はは。何を甘い事を。冗談も程々にしてくれないかな。……言っただろう?俺はその位では手放さないよ、と」
「…ん…ふふ…知ってる」
「書に残し、周知させ、人はこれを契約と言うのだろう。…付喪神である俺が契約、…さて、どういう意味かな」
「ど、…どういう意味…?」
「さぁ?当然だが俺もこんな経験ないんでね。 …まぁ、はっきりしていることは―――」


 交わる視線、それから誘われるようにゆっくりと目を閉じて。




* * * * * * * * * * *




「え」

「……起きたか」
「あれ、…うそ、今の  えー!夢かぁ!??なんだぁ…まじかー」
 いつもの本丸のいつもの部屋。
 すでに着替えが終わっている山姥切長義は布団に膝をついて目線を合わせてきた。

「……っ」
 先程の触れられた手。それは現実と同じ感触だった。それを思い出し。
「なんだ? ……夢見は良かったようだな」
「あー…… ん、そう かも?」
 今までの「夢」からか、長義を目の前にして、なんとなく居心地悪い気分になって。少し目線を落とした。
「しかし、どうかしたかな、腑に落ちない、と言った顔だが」
 笑みを浮かべながら。
「いや、そうではないか。 妙ににやけてて…愉快な顔だな」
「なんか、夢見て て? それが妙に現実感があって…ね。うん……いい夢だったなぁ、とか」

「へぇ……? ―――いや…」

「?」
「なら良かったな。君のソレは現実だよ。胸に手を当ててごらん」
 言われて手を当てる前に、しゃり、と小さな音がした。

「あ!?」
 そこにはあの神域の中で首にかけられたもの。
 青い石と、銀色の髪の様な白い珠が連なっている。
「ああ、それを君が付けているところを先に見たくてね。少しばかりあちらに連れ出したんだ。…誓いの言葉など一度でいい。戻す気などないのだから。――――だけど」
 夢と現実でふわふわとしている審神者の背を引き寄せ、抱いて。
「…人の子は言葉で言わないとわからない所があるからね……。何度でも口にしてやろう。これで貴女は名実ともに俺のものだ。ふ、漸くここまで来たかな……喜ばしいよ」

 耳元で囁かれた真名と愛している、の言葉。

「!?っ……ぁ」
 かあっと体温が上がり、視界は何故か滲み。
「へぇ、全く朝からそんな顔をして。誘っているのか」
「!! 朝ッからこんなこと言うからだよ! …で、でも、嬉しい。二人きりで、ってのやってくれたのとかもすっごい嬉しい。…どうしよ、もう…」
 真っ白のシャツに手を回して、きゅ、と掴んで。

「私の山姥切長義。誰にも渡さない。 ……私は長義を守るから、長義も私を守ってね」
「言われずとも。この山姥切長義の身に、刀身に懸けて。―――――共に在ろう、未来永劫に」
「うん。……私の……だっ……」
「………。 おや?言ってはくれないのかな?」
 顎を微かに上げ、意地悪そうに目を細めて見下ろすように。
「…あ、  あ  …あとで ね」
「全く。…まぁ今の俺は機嫌がいいからね。許してやろう。時間はいくらでもあるのだから焦る必要もなし」

 そうして唇を耳に近付け、耳朶を噛むようにして、真名を囁く。
 囁く声が少し掠れていく、それは息混じりになっているから。漢字二文字、ひらがなにして三文字。その名がここまで甘いとは―――と長義は思う。
「(全く、俺もどうかしたものだ……)」
「ん、 長、義 ぃ   まっ、て」
「……駄目だ。逃がさないよ…」
 身を捩るのはわかっているから、囁いたまま、肩から手を滑らせて、指先を絡め。
 もう片方の手は、髪、頬と辿り、柔らかい唇に。
「そうだな…。俺が名を囁くだけで、貴女が何処まで蕩けるか見てやろう」
「っ は…? ぁ?」
 名を囁きながら、体温が上がっているのだろう。耳まで真っ赤に染める自分の腕の中を見て、ふ、と笑う。
「(まぁ、…俺も我慢をしないとねぇ。…ここで唇を合わせては…恐らく止められなくなる…)」
 まるで壊れ物を扱うように。優しく辿る指。



「―――ああ、はっきりしていることは……」
「(! あ… あの時の…?)」
「重いよ、 俺は……。契約だのなんだの、そのような事はどうでもいい。…俺と共に在ることが貴女の幸せだと断言しよう」
「長義…」
「それに、知っての通り、俺のものに手を付けられるのを許すことはできない。 貴女の栗色の瞳が他を向いたら。他の者が貴女の手を引いたら。 …―――到底、許してやれない程にね」


「余裕、あるのかと思ってた」
「うん?―――あぁ…。貴女が俺以外を愛することはない…という自信ならあるよ。…だが、露払いは大事だろう? まぁ、そんな気も起きないほど、俺が全て叩き斬っていくけどねぇ」


「これからが楽しみだよ」









「別にーさ! いいんだけどね俺は。主が幸せだーって思うなら」

「……。いいなら、何故本科にあんなに突っかかるんだ?」
 縁側で足をぶらぶらとさせながら加州清光は山姥切国広に投げかけられた言葉に、ちら、と視線を動かした。
「おもしろくないじゃん。 …主は俺の主だから。それはずっと変わらないし?」
「そうだな。俺の主だ」
「!! いやいや、俺の主だって」
「…俺――――  いや、話が進まないな」
 
 それから清光は審神者が現世でお土産で買ってくる菓子を懐から二つ出して、国広に一つ渡し、それからもう一つの封を開けて口に放る。
「……ん、 だからさ、皆の主じゃん?みんなそれぞれ「俺の主」って思ってるわけ」
「………」
 かさ、と音をさせながら同じように封を開け、国広も菓子を齧りながら頷く。
「それはずっと変わんないよ。主が長義の…その、アレになってもさ。だって俺も主好きだし、主も俺が好きって言ってくれるもん。可愛い弟だよって」
「長義のアレ」
「ぐ……。ちょっと、なんでそこだけ言い直すわけ!?」
「はは、分かっている。俺も同じだ」
 笑って清光に視線を渡す。
 それを受けて、「わかってるんじゃん」と苦笑しながら、むすっとしながら。


「…でも、後から来てさ、あんな「俺は何にも興味ないんだが?」「俺は本丸より使命の方が大事だ」「失望させるな」みたいな涼しい顔してさ、口開けば偉ッそうに嫌味ばっかり言ってるあの山姥切長義だよ!?主の事好きとかなんとか一番縁遠い感じだったじゃん!?いつの間にだったわけ!?」
「………。気が付いたら、だな」
「確かに戦略には長けてるし強いし……。 だけどさ、俺だって強いもん。…出来れば奪いたいとか思うよね?」

「それは…」

 正直その辺りに関わりたくないと山姥切国広は少し思っている。
「(主の事になると…、戦闘とはまた違う意味で本気で来るからな…)」





半分夢なので長義がいつもと同じカッコ(笑)。
うちの長義はあまり大人数で騒ぐ方じゃないのでした。

長義、本気モード?になると「貴女」って呼んでくるけど、実はそれ、フォロワーさんからのネタだったりする。
「こういう感じ」だったらしい。
……確かに。

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そして二年目