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刀剣乱舞 山姥切長義

当初、万屋街でデート、ってつもりだったのに気が付いたら木漏れ日の中で散策になっていた。



そして考えながら書く小説をやったら思いのほか重くなってなんでだ、と思ったりなんだり(笑)。

――――――――――――――――――――――――――

 雨上がりの庭を眺め、あーもう6月だ、とつぶやく。
「……」
 意識せず何となく指に触れると硬いものに当たった。
「…こんなことしてる場合じゃないんだけど、……気には、なるよね」
 相変わらず戦は多い。
 戦況は良い方向とは言い難いのだろう。政府の指令を見ていれば。…だが、かといって非常に悪い、と言う訳でもないのだが。
 だから、休息日はきちんと設けられているし、刀剣男士たちにも無理をさせない程度にはやっていけている。




「……散策に出たい?」

 休息日の本日。
 本丸の刀剣男士たちはめいめいに好きな行動を展開しているようだった。
 万屋街に出かける、庭で刀を振るう、厨で創作料理を作っている、部屋でのんびりとしている―――などなど。

「うん、長義が他にやることあるなら無理にとは言わないけど」
「まぁ、特にはないが」
 少し前に見つけた雑木林の少し開けた所。―――そこで刀を振るおうかと思っていたが。
 顎に手を当て、息をついた。
「――いいよ。君の誘い受けるよ」
「! え、いいの?何かやることあったとかじゃない?」
「再度聞くな。…一度言ったことを引っ込めないよ、俺は」


「それで、買い出しにでも出るのか?」
 とにかく何処かに出る準備はしていたのだろう。
 政府連絡用の緊急端末は直ぐに持ち出せるよう、机の上にあるし財布なども用意されていた。
 長義は襟元とタイを直すように指を滑らせながらそう聞く。
「んー…どうかなぁ」
「……。 なんだ、目的地は未定だったのか」
「ね、どこか行きたいとこある?」
「は?俺に聞くな。君に付き合うよ、と言っているんだけど」
「んー、なんかね、長義と歩きたいなーって思っただけなんだよね。万屋でもいいけど、どこでもいいなぁなんて」
「ああ…なるほど」

 す、と音をさせて部屋の障子を開ける。
 まだ暑くも寒くもない、丁度いい風が吹き抜けてきた。
 外の明るさを背負った審神者の顔は影で表情がわかりにくかったが、きっと少し言葉を選ぶような顔をしている…だろう。

「…――――なら、転送ゲートを使うまでもない。本丸の裏手に林に囲まれた小路があるだろう?そこにでも行ってみようか。今の時期なら緑が綺麗だろう。…何かあればすぐに戻れるし、本丸内ならば緊急端末を持ち歩く必要もない」
「あぁー」
 一歩、足を進め。審神者に手が届く範囲に。
「(ああ、ほらな)」
 思った通りだ、と。
 何処か、不安な目。
「ん、じゃあそこで」





 本丸の空間は刀剣男士が増える度に広がっている…という。
 とはいえ、空間の端まで行こうとするとかなり距離があるらしい、と言うのは何となく聞いたことがあった。

「昔ねー、本丸の空間ってどこまでなんだろーって壁あるのかなー、だったら見つけよー、って清光とかと歩いたことあるんだよ」
「へえ、…で、見つかったのか?」
「うんん、見つかる前に私が疲れちゃって。あは、めっちゃくちゃ広いんだねーって笑って帰ってきた」
 段々と本丸の建物が遠くなる。
 次第に視界には緑と空の青の色となる。
「長義、知ってる?」
「いや、知らないね。…言っただろう?俺は現場に配属―――…譲渡されたのはこれが初めてだと。何度か監査官としての派遣はあるけども、そこまで探索をする時間も…まずしようと思った事はないよ。それに、本丸の土地管理はまた違う管轄だからね」
「そっかー」
 長義の数歩先を歩き、頭上の届く葉を引っ張りながら。
 そういえば昨晩は雨が降っていた。だから雫が陽光に照らされながら降り注いでくる。
「うわつめた!」
「っ、おい!…何をしているんだ。こちらにまでかかるからやめてくれ」
 でこぼことした石畳。
 陽の光が届きにくい所から中心に、間から草が生え、苔生し、滑りやすくなっている。
「じゃあさ、…長義」
 手が微妙に宙に浮く。
「ああ…」
 どうぞ、と言う前に長義は手を伸ばし、その手を掴んだ。
「滑るよ、ここで転んでは散策どころではなくなる。…俺に掴まって。少しぬかるんでいるところもあるからな」
「うん」 





「わ……」
 緩やかな坂だったのだろう。
 気が付けば本丸の建物は目線の下にあった。
 木々の間から見えるその建物と、上から下へと流れる小さな川…とも言えない水の流れ。
「んー、こうして見ると結構広いよねえ。私の部屋あの辺かな!?」
「ああ。随分上ってきたな。…疲れてないか」
「大丈夫」


「―――それで、そろそろ話す気になったかな?」

 目線を審神者と同じく本丸に渡したまま、長義は息をついてそう切り出した。
「他の奴らよりは敏感なつもりだけどね。それでも君が思う事、全てを把握できるわけではないよ」
「! 待って。何、が」
「おや、俺を見くびるなよ」
 本当に驚いたのか、びくりと肩をすくませ、隣の長義へと首を回した。
 と、同時に視線が当たる。
「…話す、っていうか」
「不安に思うことがあるのなら、その可能性は潰しておくべきだと俺は思うけども」
 ずっと繋いでいた手が、指が動き、絡む。
「…何を聞かされても驚かないよ、俺は。 …一人で思案して――どうせ君の事だ、堂々巡りをしているのかな」

 いつもなら躊躇なく手を掴んでくるし、背に寄り添ってくる。
 他の男士が居る時には遠慮しているが、今はその状況も当てはまらない筈だ。 

「…話したくないのならそれでもいいが、二人きりになりたいというんだ。何か聞いて欲しいのだろう?」
「………。長義、ってさ、よく見てるよね」
「なんだ、それは」
「…そういうんだろなってのは分かってるけど」
 絡めた手はそのままに、肩に顎を乗せるようにすぐ近くに。

「あのね」
 長義の頬に長い前髪に息が当たる。
「……」
 何も言わずに、先を促すように微かに頷いた。
「…私の刀たちは、居る頭数は少ないけどさ、すごくいい子たちばかりで。私が何年も審神者やってられるのもあの子たちだからだと思うんだよね。バカやってもフォローしてくれて」
「……」
 木々の間から小さく見える建物を見つめ。
 意識せず、掴んだ手が少しだけぎゅ、と力を増した。
「…その中でも、長義が、その、私の中で特別、でしょ…」
「……」
「人みたいに好きだなんだ、って。一緒に居たい、って。…付喪神―――人とは違うのに、私を選んでくれたんだ?って。たまに、不安になる…」


「い、いいのかな、って思ったんだよね」



「…………」
「…………」


「い、…………以上、です …はい」
 審神者はその肩にぐ、と顔を押し付けた――――が、
 あまりに長義の反応がなく、顔を放し、同時に手が緩まる。居心地が悪いように。

「あぁ…はいはい」

 離れていく温もりを繋ぎとめる前に、呆れたような息の流れと共にぼそりと。
「馬鹿、なのかな。…いや…」


「う、わ!?」
 視界が回る。片手は頭上に固定され、木の幹に縫い留められた。
「は? ちょ ぉ ぎ…?」
 先程まで眼下にあった本丸は消え、その代わりに緑いっぱいの林と、長義の顔。目線が近い背丈もあってか、視界にそれしかない。
「今更、何を言い出すのかな君は」
「……え」
「本丸の運営は問題ない。戦況は――まぁ、一審神者が今気にしても仕方のない事。 …ならばどうせ俺だ。…そんな事だろうとは思っていたけど、本当にそうだったとはねぇ」


「もし、君が俺から離れるというならば…、俺の刃を俺と共に貫いてもいいんだけど?」
「っ…長 義…」
「前にも言っただろう?…俺に会わない君など俺にとってはどうでもいい。つまり、俺のものにならない君など、興味がない。この山姥切長義という刀はそういうものだ、と」
「………」
「確かに俺たちには使命がある、だが。 ……俺、個刃としてね、君が手に入らないのならば―――…」
 目が合い、ふ、と息をつく。
「主、……俺は、君に強制されて君を愛しているわけではないよ」

 頭上に縫い留められている片手がゆるゆると力を無くして、
 二人の掌が合わさり、指を絡ませ。

「……」
 ふと指に当たった硬いもの。
「…俺の瞳と同じ色の石、……ああ、そういえば、「契約の前段階」…妻問いをして一年か。…なるほど、それで気になったのか?」
「自分だけで、…あの、盛り上がってるのかな、みたいな。人にとって指輪は、つげの櫛は、…あの、そういう事、だけど」
「……へえ」
 長義の指先は、その石を辿り。
「では、君は俺がなんとなくやら遊びやらでこれを渡した、と? そう思っているのか?」
「え、いや、そんなこと」
「同じ事だ。あまり俺を軽く見てると、……どうなるかな」
 するり、と指から抜けた感覚がした。
「あ…?」
 今まで吸い付くように嵌まっていたそれが無くなると途端、寒気の様な違和感を感じる。
「…君は先程「私の中で特別」と言ったな。……なら俺はどうだ。言わないとわからないのは、まぁ、理解しているけどねぇ、ここまでだとは。……君も妙なところで回りくどいというか何と言うか」
 手の中で金色の枠に守られた石を転がし。自分の指には最後まで通らない環を軽くひっかけ、唇を当てる。
 ひやりとした感覚が一瞬、それから長義自身の体温で石の温度が上がっていく。
「…全く妙なところで自信があるくせにね。君は」
 目を伏せ。それから審神者の手をもう一度とった。

「ならば、…もう一度だ」
「長義」
「…この山姥切長義の正史。貴女が俺から離れたいと言っても許さない。…貴女をこの俺に焼き付ける。―――嫌なら今ここでこの手を振りほどくといい」
 木漏れ日の間から落ちる光の所為ではないだろう。鋭く光る眼。迷いがない青い瞳は、射るように。
 だが―――、
「(なんて優しい目)」
「……人の子よりも重いよ。…たかが数十年の話ではない。それでもいいのかな」
 微動だにしない手に長義は少し力を込めた。
 すると我に返ったように手が動き、そのまま握る。

「ごめん…。ありがとう。……私さ、どこかで長義みたいな何でもできる人がーって思ってたんだよ。神域に招いてくれるって言ってたけど、…それが私でいいのかな、って」
「……」
「長義は、私が数十年先に死んでも、顕現を解かれなければこの姿でいられる。って事はだよ、もしかしたら次の主がいるかもしれない…。そうじゃなくとも、たくさんの人と会っていろいろ経験できるだろうし。……それを私が奪っちゃっていいのかなって」
「…馬鹿な事を」



「同じなら、よかった」
 笑い、安心したのか、何かじわりと湧いてくる。

「……――――まぁ、必要だったのだろう、今のこの時間は」
 すっかりと長義の体温と同じ温かさになったその石を再度、その誓いの指に滑り込ませる。
「貴女は俺のものだ、こんな事は遊びでは…気まぐれでは口にしないよ」

「この本丸の主だ、君は。……だが刀剣男士の山姥切長義としては――――」
 まるで自分の瞳を見ているかのような石、その手を引く。
 濃い色の髪が頬に触れる。

「俺の妻だ。永劫ね」

 今の生を終えても、俺の神域に招き入れて。共に在ろう。
 誰にも干渉されない、例え、政府にも。

「! ……う、ん」
「おや?そこはもっと声を上げて喜んでもいいのではないかな?」
「…ん、  もう」




「ふふー…」
 頬に当たる髪と、笑った息の流れ。
 長義の肩にぴったりと顔を乗せて。
「全く先程までは世界の終わりみたいな顔をしていたのにねぇ」
「え、そんな顔してないよ!」
「おや、していたさ。自分の顔を見ていないからそう言えるんだよ。…まぁ、そんなに想われていたら、男冥利に尽きる、という奴かな」
「でも長義、自分の刀で刺すとかそう言うのは駄目だからね」
「………。ああ、するものか」
 息をつき、目を閉じてひらひらと手を振る。
「俺は、君を繋ぎとめる自信があるからね」
「うわ、自信すごい」
「当然。君はそういう俺を好いたのだろう?…まぁ、離れることは許さないよ」

 小川沿いに道を下ってきた。
 先程までは眼下に広がっていた本丸の建物が目線近くになる。

「……と。このまま戻るのか?」
「んー…もうちょっと二人だけでいたいかなぁ。ね、せっかくの休みだもん。ええと、なんか心配させてたみたいだし…」
「…。心配などと。…当然の事だから悪いとは思ってはいない。必要な時間だったと言ったよ。―――俺は笑っている君だけを必要としているわけじゃないからね」


「まぁ、だが、俺もこのままでは、とは思うけど」
「ふふ、うん、じゃ、仕切り直して、さ」
 長義の腕を抱きしめ、ぴたりと身体を寄せる。


「お散歩行こ!」




戦いが長引いているとかたまにゲーム中で出るけど、玉とか楽器集めとかさせてる謎の指令とかどうなんよ(そういうこと言うな)。
うちの長義さんは(ゲームで言えば最初の特命調査からの出身ですが)うちの本丸に配属される前、なんかいろいろしていたようです。


そして続き

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