青い空と白いサンダル


「!」
「あ!…あーあ…」
 ぼちゃん。
 遅れて遙か下から聞こえた音。

「……そんなところに座ってるからだよ」
 アルフォンスは苦笑し、それを見た。
 ぶらぶらと揺れる足の先。白いサンダル…だが、もう片方の足には何も履いていない。遙か下の川には白いものが、今まさにつーっと流れていく。
 『そこ』とは橋の欄干。
「もう」
「あはは、やっちゃったねー」
「やっちゃった、じゃないよ。どうやって帰るつもり?」
「ま、片足ケンケンで帰ればいいよね」
 サエナはそれでもぶらぶらと足を揺らして。
「そんなのできるわけないよ」
 段々おかしくなってきて、怒るのもバカらしくなってきた。

 目を上げると遠く遠く澄んでいる空。

 初夏、特に意味なく出かけた。
 今日は天気がいいけれど、サエナは雨が降っていても…雪が降っていても、二人や、三人…とにかく一緒に出かけるときは楽しそうにしていた。


「ね、アル!…こっちの靴、思いっきり投げたら明日晴れるかな!?」
「ええ!?」
 ぎょ、これ以上靴を流すつもりか!?
「どうせだもん、一緒に流しちゃえ」
「…そ、そういう問題かなあ…。確かに片方だけじゃ使い物にならないけどッ…」
「裸足だってどうにか帰れるでしょ。それに――――」

 ぽーん。

「あ」
「お、今の何メートルくらい飛んだ?」
「……ど、どのくらいかな…」
 思い切り振り上げた脚からすぽっと抜けた白いサンダルは、青い空に吸い込まれ――――…当たり前だが下の川に落ちていった。

「…ね、アル、私のサンダルより『上』に行かなきゃね」

「ええ?」
「あんな高さ、ジャンプじゃムリでしょ?梯子でもムリでしょ?だったら飛ばすもの作らなきゃねー。いつか取りに行ってよ」
「なんだ、結局そこに行くんだ」
「あはは」

 そうだ、結局『空』に結び付けたいだけ。
 それでキミが、自分を支える希望になるのなら――――。

「仕方ないなあ…。ぼく、サエナのわがままに随分付き合わないといけないんだね」
「そのよーで」
「もう…」
 また苦笑。
 そして背を向けて、「はい」と。
「?」
「おぶってくよ。流石に裸足じゃ帰れないでしょ」
「別にいいけど」
「いいから」
「……。はいはい、じゃあお願いします。…あ!重くても文句言わないこと〜」
「はは。……どうかな」





何でも、空に結びつけるのは、希望を失って欲しくないから。
それは、人によっては「プレッシャー」だと思う人もいるだろう。
でも、そう言ってくれる気持ちが分かるから。きっとぼくは頑張れる。
「みなぎる自信」

↑なんかカッコイ(笑)。

2007.01.01


挿絵風味

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