夏場に光る水


 ――――ぼたぼたぼた…。
「「「……」」」

「エ、…エドが悪いんだよ!」
「かー!!なんでオレなんだよ!!先にお前が水ぶっ掛けたんが悪いんだろ!」
「何で応戦してくるの!?」
「目には目を歯には歯を!!…男女平等。手は上げないけど、こういうのならオレはやるからな」
「…あ、あの…」
「だってエド、勝手に食べちゃうんだもん!みんなで食べるって言ったのになんで先に食べちゃうわけ!?」
「アルフォンスだって食ってただろ!??」
「エドがヘンな事言ったんじゃない!」

「ちょっ…ちょっと!二人とも!いいから…タオル持って…来ないと」
「う…誰が行く?」
「こんなびしょ濡れじゃ…シア姉に怒られちゃうよ…」
「怒られるって言うか…迷惑、だよね…」
「「はぁ…」」

 いまだ、ホースからは水が出ていて、熱くなった石畳を冷やしていた。




 ――――その数時間前。
「え?…ああ、珍しいですね」
「へへ」
 じゃーん、とエドワードは片手に載った丸いものをアルフォンスの前に突きつけた。大きい緑色の球。相当重いものだが鍛えているエドワードにはたいしたことがなかった。
「さっき、サエナがコレ抱えて階段上がって来てたからな。とりあえずコレだけ引き上げてやったんだ」
「サエナ、帰ってきたんですね」
 言葉の通り扉から、がちゃん。と音がして、サエナが入ってくる。どうやら買い物に出ていたらしい。
「エド、ありがとー。結構重くて」
「そういえば、スイカなんて誰かから貰ったの?この辺りじゃあまり手に入らないよね」
「うん、お向かいさんと物々交換〜。親戚から送られてきたんだって」
「食おうぜー!!」
「だーめ!」
 早速包丁を入れようとするエドワードから取りあげ。
「なんでだよ!」
「冷やした方が絶対おいしいでしょ、今から水の中に入れておけば夕食くらいには冷えるよ」
「うへぇ…」
「でも――――…そうだね、折角だからおいしく食べた方がいいし、ね。エドワードさん」
「………ちっ」


「…アールフォーンス〜!」
「………(汗)」
 妙なイントネーションで呼ばれ、振り向く。
「な、んですか」
「…な、……スイカ食ってもいいってよ」
「え?サエナ、冷やしておくって言ってましたけど」
 あれから1.2時間ほど経っただろうか。まだ夕食の時間には少し早く…スイカだって冷え切ったとは思えない。
「それがさ〜、グレイシアさんと夕食出かけるんだと、んで、一緒に食べられないから―――ってさ。な、食おうぜ?」
「…はあ…。ああ、でも、サエナやグレイシアさんが帰ってきてからでもいいんじゃ…」

「――――スイカってあんまないんだよな?」
 ぐいっ。
 アルフォンスの首に腕をかけるようにして耳元で。
「はあ、確かに見かけないですね」
「だったら!…食いたいよな?」
「ええ、まぁ…」
「じゃあ話し早いぜ!サエナだっていいって言ってたんだぜ、だったら決まりじゃねえか!」
 あわよくば半分くらい食ってやろう!と思っていた。
 確かに、こちら側に来てからスイカを食べた記憶がなく、…今まで特別に食べたいと思ったことはなかったが、目の前にすると食べたい。




 そして、さらに数時間後。
 時は、一番最初に戻る。
「…私が、「食べてもいい」って?…シア姉と出かけるってェ…??」
「………」
「……あ、はは…(汗)」

「――――んもう!!何で待てないのっ!?今日食べるって言ったでしょう!?」
 腰に手を当てて、睨みながらそう叫んだ後…。
 冷やす為に用意されていた水、そのホースは二人に向けて…。



「…とばっちり…」
「なんだって?アルフォンス」
「いいえ…なんでもないですよ…」






暑中見舞い企画の「スイカ」それからの話(笑)。
もうなんか、…スイカってミュンヘンにあるのかとか、そういう突っ込みなし!!

アニメのトリシャさんの、腰に手を当てて怒ったときの顔と仕草がすごく好きなんですよー。


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