空からの手紙


Herrn Edward Elric

××.××.192×


 お元気ですか?
 今、ぼくたちはとても静かな柔らかい所にいます。
 あれだけ苦しかった咳も何事もなかったかのようになくなって。


 ――――1923年のあの時、ぼくは自分のことだけ考えていた。あの時はそうじゃないって思っていたけれど…。客観的になって自分を見ると、そうだったな、って思うよ。

 でも、あの時はぼくも必死だった。『今』みたいに時間があったわけじゃなかった。
 あなたのことを、向こうの世界のことを考えていられるほど、強くなかった。
 考えてしまったら、それを認めてしまったら……。ぼくのロケットは何処に行くのか分からなくなるって思ったんだ。

 あなたを乗せた赤い機体は結果的にはあちら側の世界に行ったけれど…。
 本当は、…本当の行き先は『空』だった。星の世界だった。サエナに見せたかった、ぼくが『行く所』だと小さいときから思い描いていた『きれいな空』だったんだ。


 あなたのこと、ぼくはとても大好きでした。悪いことははっきり「悪い」と言えて、行動的で、強くて…優しくて。
 ぼくとサエナが言い争った日、部屋から出ようとしなかったぼくにサエナを連れてきてくれた。
 彼女が亡くなる日、目を覚ます直前まで、もうダメだと分かっていても生きる可能性を見つけるために本をあさっていたのを知っている。
 彼女が亡くなった後…お母さんの錬成の話をちらりと聞いた。2度殺してしまったかもしれないと…とても悲しい目をして…。サエナのことも守れる筈だったのに守れなかったと、…後悔の目をしていた。
 それでも、自分も悲しくてもあなたはぼくを慰めてくれた。



 ……でも、あなたについて少しだけ…少しだけ苛立ちがあったのは事実です。
 ぼくは、ぼくたちはあなたの側にいたんですよ。『弟』じゃない。『母親』じゃない。…『友達』なんですよ。
 直ぐに目を逸らして、この世界を見ようとしないあなたに苛立ちがあった。

 それをずっと言いたかった。
 忘れないで欲しかった。

 友達だとわかって欲しかったから、この世界はあなたの世界でもあるとわかって欲しかったから――――…、

 …いや。わかってくれたと思ったからぼくはあのロケットをあなたの世界へと打ち上げたんだ。
 あなたがこれから生きていく上で一つでも多くの選択肢を作れるように。
 笑ってくれるように。
 弟のアルフォンスに会えるように、トリシャお母さんのお墓参りが出来るように。

 ぼくたちと、例え少しの期間でも一緒に暮らしていた、…「楽しかったね」…と後で思い出してもらえるように。

 それが何処の世界であっても、自分が決めることができた所ならそこが理想郷でしょう…?


 ――――あなたがミュンヘンに戻ってきた姿をぼくは見ていない。
 でも、今度は本当に争いのない世界を取り戻す為にこの世界を走り回っているって、…何かで聞いた。

 結局、人間一人の力じゃ世界は動かせない。
 でも、誰かの生き方は、生きる道は…きっと少しなら動かせると思う。

 ぼくも、あなたからきっと何かを貰っていたと思う。
 三人で暮らしていた時間、とても心地よかったあの感覚。
 一人じゃきっと思い浮かばなかった考え方や研究。
 それまで友達がいなかったぼくから孤独を取り上げてくれた。あの幸せな時間を否定できるほどぼくはやっぱり強くありません。

 だから、ありがとう、エドワードさん。

 今度、…もし今度があったら、また三人で『ただの一日』を過ごしたいな。そうだ、買い物の後、ビアホールに行きましょうか?
 今度は、あなたの世界の話、ぼくにも聞かせてくださいね。


 ――――その日まで、さよなら。これからも、元気で。

Alfons Heiderich





これだけだと意味不明かもしれませんな。
…とあるサイトさんでウチのハイデリヒ宛に手紙をいただきました。
エドのこと、わかって欲しいと言うこと、
あなたは寂しくないよと言うこと。

そして、空からの返信手紙を書きましたー。
ウチの彼はこんな感じ。
エドのことは本当に大事な友達だと思ってます。

それでも、手紙になっても病気の事をはっきりと書かないのは…(もうエドは知っているかもしれないが)
今更言っても仕方ないというのもあるけど、心配させちゃならんと、
その所為で胸を痛めて欲しくないと…思ったからじゃないかな。

ちなみに、サエナとは一緒にいると思いますよ。だって「ぼくたち」って言ってるもの(笑)。
んで、「あ!私も書きたかったのに」って。

11/8の話

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