銀時計 ―15―
「ちょっと待って!わかんない」 夕刻。 エドワードは『アルはここにいない』と言うことをみんなに話した。 そして、直ぐにでもあちら側に帰らなければならないということも。 「ウィンリィ、黙っててくれ。お前はわからなくていい」 「なんで!」 「……頼むから」 「アンタ、いつもそうじゃない!言ってくれなきゃわかんないよ!アルがいない理由も!」 「…わかったよ。順を追って話すから、だから、ちょっと、黙っててくれ…」 エドワードは目を伏せた。
「なんだ、中尉、わざわざこんなの送ってきたのか…。まさかまたコレに会うとはな」 エドワードは懐かしいような、渋いような…微妙な顔つきでそれを見下ろした。 郵便として送られてきた箱の中は銀時計だった。国家錬金術師の証の。 これの所有者はもちろん『鋼の錬金術師 エドワード・エルリック』 もう、銀時計は時計としての役目は果たさず、中を開けてみても何も入ってはいない。 これは賢者の石錬成時に跡形もなく消えた筈だった。 しかし、最近になってアームストロング元少佐のリオール調査のとき、偶然見つかったのだ。 砂に埋もれて。 ――国家錬金術師制度はなくなっているが、『所有者に返すのが道理』である。―― …同封の手紙にはこんな風に、銀時計の今までのいきさつが書いてあった。 ぱちん。 「……忘れるな、か」 自分で刻み込んだ言葉。 「はは…。……そうだな、コレが…また道を開くかもしれない」 「エドワードさん…?」 「アルフォンス。…お前、『偶然』をなんて解釈する?」 「…『必然』、でしょうか?」 「……へえ、どうして?『偶然』は『偶然』じゃないのか?」 銀時計から視線がアルフォンスに移る。その時の目が、かつての『鋼の錬金術師』の目。 アルフォンスはそれを知る由もないが、強いその目に一瞬びっくりして…それから考えを述べる。 「それはそうでしょうが…。それは後から考えると『必然』だったこともあります。…起こるべくして起きたこと。そうなってしまっては『偶然』という言葉は当てはまらないかもしれませんが…。でも、それが起きた当時は確かに『偶然』だったんです」 アルフォンスにしてはうまい説明ではない。それは彼も少し混乱していることを表していた。 「未来は分からない、ってやつだな」 「ええ、まあ」 「……向こうに帰るぞ、アルフォンス」 「…いいんですか?」 うなだれるエドワードにアルフォンスは小さく聞いた。 「聞くなよ、そんなこと」 妙な笑いで。 「…そう、だ」 エドワードが話し始める。 イギリスに飛ばされたとき、『ロンドンのエドワード』に乗り移ったこと。つまり、同じ世界には同じ人間はいられない。 「だからアルは向こうだ。……オレのときみたいに同じ身体に二つ魂が入るよりマシかもな」 「門を開く」 「どうやって?誰かが禁忌でも犯すのか?」 「いや。…銀時計に多少は赤い石の力が残ってるだろ。…アバウトって言われても仕方ない。でも、これが今オレの元に戻ってきたのは必然だ。偶然じゃない。……コイツの力を借りて向こうに戻る。あとはお前のだ、アルフォンス」 「え?」 「…銀時計を改造しろ。時計の中身なんてその辺から調達すればいい。……いいか、『オレたちがここに来る前』にタイムスリップするんだ。そうすれば今までのことはなかったことになる。…タイムマシンなんだろ。それ」 「…なんだかいきなり非現実的会話ですけど」 「そういうならお前のタイムマシンは最初から非現実的だ」 にやり、笑って肩をぽんっと叩く。 その笑いが、本当なのかと言われたらそうではないが。 「待ってよ!!じゃあエドは!?」 「オレ…また向こうに戻らなきゃな」 「なんっ…」 「オレも戻らないと、術は発動しないだろ。……普通、術者はその外にいるが、でも、この場合は…戻らないとならない。向こうのアルを引っ張るためにも」 ――――ちゃり。 銀時計を手にとって、それを眺め…。 「…………ちょっと、出かけてきます」 持ったまま扉の方へ向かい、振り向かずにそのまま…。 「アル!」 ずっと押し黙っていたサエナがはじめて口を開いたのはその名前だった。 エドワードとその扉を交互に見て、他に何か言いたげに口を開きかけたが、結局何も言わずに後を追う。 劇場版 鋼の錬金術師 第16話 次回予告! ――――『あちら側』に…。 |
うーん。コメントしようがなくなってきたぜ? どうしたらよいでしょうかね〜(聞くな)。 回想シーンのアルの台詞が意味分からないです。 TOP NEXT |