雑魚寝 ―8―


「悪いな、アルフォンス」
「え?ああ、部屋の事ですか?気にしてませんよ」
 いきなり人口密度が増えたロックベル家では一人一人に部屋をあてがう程余裕はなかった。その代わり、田舎の家だ、大きな部屋がある。

「それに、雑魚寝ならよくしてますからね」
「そうだな」
 研究途中に眠くなって床の上にタオルケットだけで寝ていることも…しばしばある。
 その度に気がついたサエナが起こすか毛布をかけていくか…どちらかなのだが。
「俺も雑魚寝か」
「当たり前だろ」
「あーあー、昨日まではベッドだったのにねえ」
「お前、本当にオレを探しに来たのかよ?」
 ラッセルのイヤミな物言いは本心からではないことはエドワードは分かっている…のだが。本気のような顔で言うからたまに本気で言っているように感じる。
「フレッチャーが行け行け言うからさ〜」
「…へいへい」
「アルフォンス。…そっちの科学技術聞かせてよ。…とりあえず、時間はあるんだからさ」
「ええ、いいですよ」



 時計は12時を回った所だった。



「ふあー……」
 メガネを外してあくびで出てきた涙を拭う。
「シェスカ夜弱いんだ?」
「えー…だって本がないからですよぉ…。あー!あの本持って来れば良かったぁ」
「何の本?」
「『ティラノサウルスの生態について』この前!セントラルの7分館で見つけたんですぅ!もう10年近く探してたんですよ!」

「………変な内容」
「大体そんなの覚えてどうするのよ…」


「あ」
 床に布団を敷いている途中、ウィンリィの作業台に目が行き思わず声を発する。
「どしたの、サエナ」
「これ!これが義手?」
「あー義手、なんて言わないでよね。『機械鎧』って言うのよ」
 自分の得意分野を出され、えっへん、と言わんばかりに胸を張り言う。
「オート…メイル?…」
「そ、普通の手足のように、いえいえ、それ以上な動きが出来るのよ。この美しいフォルム!いいわねぇ〜」
「へー…触っていい?」
「どーぞー。心置きなく、ステキなくらいに見ちゃって〜」

 よいしょ、と持ち上げ。
「へえ、結構軽いんだ……。エドのはさ」
「?」


「紐引っ張るとモーターが動いて………壊れるって話」


「「…………」」
 ずどーん。

「なんだって?」
「それ、引っ張るだけ無駄って話じゃ」

 実はエドワードの義手のモーターが動いているのを見たことがないサエナ。
 とにかく『壊れる』ということしか覚えていなかった。
「アイツ、なんつー義手つけてんのよ…。しかも壊してッ……」
 ぴき。
 ウィンリィの額にスジができる。
「うがー!絶対絶対まともな機械鎧つけてやる!!サエナどきなさい!その作りかけ、明日までに出来上がらせるからっ!!!!!」
 サエナの腕から「作りかけ機械鎧の腕」をとりあげ、パジャマの上から作業用のエプロンをつける。
 その目には焔が灯っていた。

「うわー」
「うへー」
 ――――やっちゃったよ、火がついちゃったよ。
 シェスカとサエナは生ぬるく見守るしかなかった。


「っ…」
「……どうしたんです?」
 部屋の扉の近くには小さい棚があった。そこに。

「アルのジャケット…あ!返すの忘れてたんだっけ」
 先程、ちょっと寒くなったからと言ってアルフォンスのジャケットを借りていた。そのまま部屋に来てしまったようで…。
「明日返せばいいんじゃないですか?」
「うーん…」
 燃えているウィンリィをそのままにジャケットのポケットに手を突っ込み…。

「あ…ダメだ」
「?」





 劇場版 鋼の錬金術師 第9話 次回予告!

 ――――ロックベル家って何平米なんでしょうかね?わかる方、50字以上200字以内で答えなさい。

 サエナは何か気がついたようだった。そしてウィンリィは今夜中に機械鎧を完成させるという。
 夜はまだ長い…!





ウィンリィがギャグっぽい。


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