幼なじみ ―3―


 ――――アイツらったらさ、こっちが心配してやっているのに、全然連絡よこさないで。
 たまに来たと思ったら『よぉ、ウィンリィ…悪ィな、これ壊れた』だの『ウィンリィさん、すみません!』『壊れちまったものはしょうがねえだろ〜』だの…。
 まあ、手紙がバカバカ来るのもアイツらしくないからいいけどね…。

 でも、…いきなりいなくなっちゃったんだ。
 アルは人間に戻っていたけど、旅をした4年間の記憶と成長が全然なくて。
 今ね、アル、イズミさんのところで錬金術を学び直してる。

 あ、そうそう。数日前に戻って来たのよ。トリシャお母さんのお墓参りにって。

 ――――エドもたまにはお墓参りしてあげなさいよね…。あんたら兄弟はほんとにお母さんっ子なんだから。





「ってェ……」
 冒頭部分から喋りすぎてしまったのは、あまりにも信じがたいものが視界に飛び込んできたから。

 ――――さっき「お母さんっ子」なんて言っちゃったから、理想(?)が現実になっちゃったわけ!?あー!ごめんなさいトリシャお母さんっ!!
 こんな若くなっちゃって………若…?


「ぎゃうぁああああ!!!!」


 叫び。
「うるさい、シェスカ!!」
「だって、ウィンリィさん〜…この人見たことありますよぉ〜、そう!そうです!アレです!あの盗聴に行ったときに襲って来た水っぽい〜!!!宇・宙・人ッ!!」
「あの人は宇宙人じゃなかったって理解したでしょ!?…全く、叫びたいのはこっちなのに…。ほら、アンタちょっと向こう行ってて!」
 叫んだのは……シェスカ。
 セントラル勤務の筈なのだが、先日、セントラルでアルと会い、久々にリゼンブールに遊びに来ていたのだ。



「宇宙人?」
 栗色の長い前髪をさわ、と分けながら、は〜…と首を傾げる。
「うーん…そんな風に言われたことはないんだけどなあ、宇宙系ならアルの方が得意だと思うけど」
「あ〜…。ちょっと待ってて」
 シェスカを向こうの部屋に封印してきてから、ウィンリィは再度玄関に戻ってきて…。

「…ええと、トリ…」
「トリシャさんじゃないですよ。サエナって言います。あはは、トリシャさんと間違えられるの何度かあったから慣れてる」
「え、じゃあ……そう、だよね。…同じ歳くらいだもん。あ、で…機械鎧の注文…じゃないわよね、何の御…よ……」
「ああ、ちょっと待って、用は私じゃないんだ」
 サエナは身体をちょっとずらして後ろが見えるようにする。


 ――――ロックベル家は階段を数段上がって玄関がある。
 その階段の手摺に隠れるように………。

「エド!?」
「ぐわ!何で分かったんだ!?」

 手摺に金髪のアンテナだけひょこひょこ揺れていたのが見えたから。
 前回に引き続き、エドワードが隠れる必要性など全くないのだが、なんとなく入りづらくて。

「何やってたの!?アンタ……もう」
 スパナを持ち出すことも忘れて、階段を駆け下りて…………。


 はた。

 隣の『彼』と目が合う。
 少し淡い金髪に碧眼。


「ア……アル!???あれ、なんでっ!?」

 エドワードの隣にいたのはアルフォンスだ。
 もちろん、自称天才科学者(まだ言うか)アルフォンス・ハイデリヒ。
「あ〜……ぼくは…」




――――その日は少し肌寒かったかな。

『アル!?……アルフォンス!』
いきなり声をかけられた、
ぼくより少し背の低い、金髪で金色の目の人。
懐かしそうな、驚いたような不思議な声だった。

『え?………ああ、ぼくは確かにアルフォンスですけど?…アルフォンス・ハイデリヒって言います』
『そ、そうか……――――オレ、エドワード・エルリック…よろしくな。アルフォンス』
ちょっと眉をひそめて笑う。




 思わず1921年にルーマニアでエドワードと会った日のことがフラッシュバックして来た。
 ここまでお約束の反応をされて、困っていいのか、どうか…。
「とりあえず、ぼくはエルリックの『アル』じゃないですよ?」
 困ったように、笑うしかない。

「あ、ご、ごめんなさいっ……!!もう、エドっ!どういうことか説明しなさいっ!!!」
「へいへい」




*




「要するに…」

 ロックベル家のリビング。
 エドワード、アルフォンス、サエナ、ウィンリィ、シェスカ、ラッセルがそこにはいた。
 とりあえず、一通りの説明を終えたところだった。
 ウィンリィの目の前にはノート。その紙に今までの説明が簡単に図式化されている。

「『こっちの世界』…と、『向こうの世界』とやらがあって、この二人はそこから来て…エドは今までそこにいた、と」
「ああ」
「へ、へえー…」

 『そんなバカな!』と笑い飛ばしたくなったが、アルフォンスとアル。サエナとトリシャの顔の似具合からして、そして『こちら側』にはありえない話からして、現実として受け入れなければならなかった。

「向こう側に帰る手段探さないと」
「お前が作ったタイムマシンでどうにかならないのか?」
「あれ、一度しか動かないんですよ、…もう壊れてます。同じ物があれば話は別ですけど」
「…お前、時間超えて帰ってくるときどうするつもりだったんだよ…」
 人間、酔っているととてつもない行動に出るんだなあ、と今更ながら実感したエルリック兄だった。



「あ〜、じゃあ宇宙人さんじゃないんですね〜」
 ほっと胸をなでおろすシェスカ。
「だから、イタリア人だって言ってるのに」
「イタリアって何処だ?」
「うーん……ドイツより南、アフリカより北」

「「…………」」
 まったく話が分からないアメストリス人のシェスカとラッセル。


「ね、そんなことより」
 にこっと笑って。手を合わせる。

「観光〜…折角来たんだもんっ。あと錬金術が見たいっ」

「サエナッ!!!」
 隣から怒りと焦りの声が飛ぶ。


「ま、折角こんな田舎まで来たんだし?そのくらいの楽しみ欲しいよな、フレッチャーに土産買って行ってやらないとな」
「あの〜…サエナに妙なこと吹き込まないで下さいよ。ノリやすいんですから」
「……………ふうん?」
「な、なんですかっ…」





 劇場版 鋼の錬金術師 第4話(ようやく戻った) 次回予告!

 ――――状況がやっと把握できたウィンリィと、なんとなく宇宙人じゃないことで安心したシェスカ。
とりあえず、アルフォンスの懐中時計が直らないようなので、……観光することに!?

 それでいいのか、現実世界の人!?






3話。
話的にはつまんないですが、とりあえず『紹介』としてなきゃならないかな、と。

挿絵


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