懐中時計 ―1―
――――その日、彼は少し壊れていた。 「気持ち悪いな、アルフォンス…」 「え、具合悪いんですか?」 「いや、オレじゃねえよ。…お前がさ」 「ぼくが?」 「うん、アル…なんか変だよ」 朝、朝食のソーセージにフォークを突き立てて…エドワードはアルフォンスを怪訝な目で見る。 同じくサエナ。 「笑みがヘン」 「同感…。どうしたの?アル」 「…ばれてしまっては仕方ないですね」 にやり、と笑うアルフォンス。 「「…!??」」 ――――ああ、毎度毎度ロケットロケットって騒いでいたツケ(?)がとうとう来たのか!? ――――ええっ!「実はぼくはアルフォンスじゃありません〜」とか言い出すわけ!?ぎゃー。 「エドワードさんが『史上最年少天才国家錬金術師』でしたら、ぼくは『史上最年少(おそらく)天才ロケット製作科学者』とでも名乗っておきましょう」 「えー、長いよ?それ、もっと短くならないの?」 「オイ、ツッコむ所はそこかよ!?まあ、『天才ロケット工学者』とかでもいいよな。……つーか別にオレは毎度毎度そんなの名乗ってないぞ。『鋼』だ」 「…話の腰を折らないで下さい。……まあとにかく、これ、昨日なんとなく出来てしまったんですよね。このタイムマシン(仮)でロケット製作資金を調達して…」 「「タイムマシン!?」」 ――――ぷつ。 そこから覚えていない。
「母さんのっ!???」 エドワードは飛び起きてそれに彫られている名前を凝視した。 「ト、トリシャ・エルリック…」 墓石。 何度も何度もそれをさすって、確認する。 「なんで、ミュンヘンに母さんの…」 「う、うーん…」 「痛っ…」 その隣でもぞもぞと動き始める二人。どうやら三人で倒れていたらしい。 「サエナ、大丈夫…?怪我、ない?」 「うーん……っていうか、アルの頭は大丈夫…?」 「え、ぼく?…何かしてたっけ?」 「『天才科学者アルフォンス・ハイデリヒ』……がなんとかって」 「え…そんな事言ったかな…?」 「覚えてないのっ?」 「昨日、エドワードさんにビール呑まされて…」 言いながら頭をさするアルフォンス。 「あー、エドだめじゃない…アルが酔うと大変なんだから。いくら呑みやすいって言っても、アルコールはアルコールなんだからね」 「なんだよ、まだ抜けてなかったのか?だからおかしかったのか…ってここは何処なんだアルフォンス!!!!」 「知りませんよ」 「草原だね〜……何て言うか、墓地?」 「…いや、オレは…知ってる筈なんだ」 「アメストリス…」 「「!?」」 「オレの、世界…だ」 妙な笑みで、二人を見る。 「わー、明るいんだね〜天気いいならお弁当持ってくれば良かったね。アル」 「そうだね。結構あったかいし…いいかもね」 「…お前ら、現実逃避しただろ」 「だって!…そうでしょう!?…酔った勢いで作ったようなタイムマシン(自称)でなんでエドワードさんの世界に来られたりするんですか!!」 ぐるり、振り向いて。 「知るかよ!!だいたいなんでタイムマシンが懐中時計なんだよ!?」 アルフォンスの手には懐中時計。 「だって『タイム』なら『時間』でしょう!?」 「だからってそれをタイムマシンに改造するか!?つーか、時間は飛んでないぜ、これ!?」 「酔っていたんだから仕方ないでしょう…!ちょっとした誤差はありますよ!」 「誤差とかそういう問題かよ!?」 「あ、誰か来るよ」 ケンカしている二人は放っておいて、景色を見ていたサエナ。 人影を発見したようで、その方向を見るように手をかざす。 「「!?」」 ここはエドワードの世界なのだから、エドワードはビクビクする理由はないのだが、思わず、サエナの陰に隠れる。 理由は『何故か今一番落ち着いているから』…だ。 劇場版 鋼の錬金術師 第365話(何) 次回予告! ――――自称・史上最年少天才ロケット製作科学者、アルフォンス・ハイデリヒ(酔い気味)の作った懐中時計型タイムマシンは何故か時は越えず、世界を超えてしまったようだった。 言い争う二人と何故かのほほんとしている約一名。 そこで突如現れる謎の影…。 その影は一体誰なのか、そしてミュンヘン1922年には戻れるのか!?? 緊迫の次回へ続く!(笑) |
お友達からのリクエストをやってみました。 「アメストリスに彼らを連れてくる」 「ハイデリヒを壊してみる(その2)」 「科学者っていいよね(何)」 映画設定もへったくれもないので、パラレルのパラレルとして(?)お楽しみください。 別にタイムマシンじゃなくても良かったんですが、懐中時計だし…。 こないだ知人宅でタイムスリップモノの洋画をエンドレスで見て…。 ほら、研究の合間に違うものが出来てノー○ル賞とか(?)。 #実験に失敗はつき物なんです。発明は爆発だ。失敗から何かを生み出せ。 『天才国家錬金術師』もいいけど『天才科学者』ってのも語呂いいよね?とか。 ←私信? #17歳でアレだけやれば天才だろ。 ハイデリヒを壊すなら酔わすしかないだろとか(ごめんなさい)。 #実は酔ったアルって好評だったんだよね。 後半、どうなるのか私も知りませんし、何話になるかも分かりません(いいんかそれで)。 TOP NEXT |