お昼寝
柔らかい日差し。 一気に上がることのない気温と、この日差しは昼寝にはぴったりで。 膝には先ほど屋台で買った菓子(の食べかけ)を持ったままの手。 木に寄りかかるように座って。その隣には買い物したらしい紙袋が転がって。 栗色の柔らかい髪が陽の光に反射して、蜂蜜のような色になっている。 「………あ」 さて、もともと淡い蜂蜜のような色の髪の彼。 その姿を見つけると、まず息をついて、ちょっと眉をひそめて。…怒ったような顔をするかと思うと……苦笑。 「まったく」 見つけられたことの安心感の方が先に立ったのか、そのまま怒って起こすようなこともせず、静かにその隣に腰を下ろす。 「治安だって良くないのにさ、よくこんなところで寝られる…」 確かに、昼間とはいえ、女一人で公園でなんて昼寝しない。 ――――事の発端は、特にたいしたことがなく。 『公園行って来るね、今日、雑貨屋さん来てるって、日用品安いんだ』 と、出かけたまま帰ってこなかった…ということ。 「ぼくが見つける前に何かあったらどうするの…」 聞こえてないからか、聞いて欲しいのか、声に出してちょっと毒づく。 それでも、その寝顔を見て、やはり起こす気にはなれず…また苦笑。 「………仕方ない、か」 サエナにジャケットをかけ、持ってきた本を広げる。 まだ、暖かい陽が照っていた。 ――――とん。 「っ?…サエナ、起きたの?」 肩にかかる重みで本から目を上げるアルフォンス。 起きたわけではなく、木に預けていた体が横にずれてきただけであって。 どうしようか、これから。 起きそうもないし。 「………」 サエナの膝の上の菓子に手をのばし、それを食べながらちょっと考える。 買ったばかりの焼き菓子はまだ焼きたての柔らかさが残っていてとてもおいしかった。 「……君だけ、ずるいよね…?」 「あ、お前ら何やってるんだよ」 「エドワードさん」 突然、影が降りてきたかと思うと、エドワードの顔。 起き上がろうとするアルフォンスにエドワードは『そのままでいい』と制して、自分も一緒に寝転ぶ。 「…ったく遅いと思って迎えに来たらこれかよ」 「サエナ、こんなところで昼寝してて…しかも起きそうもないんですよ」 「だろーな…。ふぁ…オレも眠くなってきたぜ…」 「あはは。結構、こういうのも気持ちいいですよね」 ――――あれからいろいろ考えたアルフォンスだが、あまりにも気持ちよさそうに寝る隣人を見て、一緒に寝てしまえ、と、芝生に寝転んでみた。 腕にかかる重み……は、『重さ』だけ言えば決して心地いいものではないけれど、規則正しい息遣いとその温かさに安心する。 栗色の髪を指に絡めながら空を見上げる――――。 流れる雲がとてもゆっくりで。 見えない筈の風が見えるような気がして。 とても、柔らかい気分になった。 「エドワードさん、……寝ちゃったんですか?」 「ん…。……ふぁ……今、何時だ…」 腰のベルトから懐中時計を外して、ぱちん、と開ける。 「…まだ、寝られるよな…あと少…しだけ…」 「はは、…どうぞ。あと少しだけ、休んで帰り…ましょうか……」 「あれ?…なんで寝てる…?」 その後、一人で目が覚めたサエナ。 ぼーっとした目のまま、とりあえず何故二人がここにいるか考えたが。 「……ああ、天気いいなぁ…。……二人とも気持ちよさそ…」 それだけで、もうなんでもいいや。と言う気分になって。 「あ。アル、お菓子食べたなー…」 そのまま広げられている腕にまた頭を預けてみた。 ――――後日談。 「サエナ、あんなところでひとりで寝てたら危ないよ?」 「あはは、よくやってたからね…」 「「よく?」」 「だって、村じゃ村の人しかいなかったから」 「…要するに田舎モンってことか」 「そういうエドはどうなのよ」 「…あ?……リゼンブールじゃよくやったよな」 「なんだぁ。人の事言えないんじゃない」 「…なんで、…外で昼寝するの……」 |
さて。50題「腕枕」で絵を描いたところ、本田さんから…。 「ハイデリヒは木陰で昼寝しているサエナを見つけました。 あんまり気持ちよさそうに寝ているので、起こすのは止めて、隣で本を読んでいたら、こてんと寄りかかられました。 そのまま、ずーるずーると芝生に寝転がっていたら、 遅いな〜と探しに来たエドに発見されて呆れられ、でも結局三人でお昼寝。」 …と、話をいただいたので「そうだったのか!??」と書いてみました。 しかし、なんかまた食ってます。 日用品の屋台で日本人がシャンプーとか買っているととても珍しがられるのでお試しあれ(笑)。 TOP ネタ提供者・本田様HPはコチラ。 しかし、劇場版鋼知らないのにいつも付き合わせてごめんなさい(笑)。 |