第24話:Dear…。親愛なるあなたへ―



―親愛なる、勇者様―

 読めない文字の、手紙。誰かの想い。
 一人で旅をしているつもりが、誰かを感じる事がある。

―ねえ、あなたは今、何をしていますか?…私の大事なアルカヤには季節が巡っていますか?―

 人々に差し出す手は、もう迷いはなくて。

―あなたのことだから、ぶつぶつ文句を言いながらやってるのかな、……ううん。そうじゃないか。…迷いがなくなったあなたなら大丈夫ですね―

 『誰かの為に』…なんて出来ないと思っていた。
 自分だけだと、『全部から目を逸らしてて大事なことを見逃している!』…と誰かが叱ってくれた。

―旅に出て、自分が小さく思えますか?…それでいいと思います―

 挫折を味わう事などたくさんあった。自分の力の小ささ。
 この手の力は果てしなく大きいと思っていた、小さな自分。
 なんだかんだ言ってこの手の力に頼っていた。みんなこの手の所為にすれば気がせいせいすると思って。
「…………………」
 力が大きかったのではなかった。…勝手に大きくして、一人でイライラしていただけ。


―……天使じゃない私の気持ち、書いていいですか?―

 君に会いたい。僧侶や教皇ではない、人としての感情で。
「君って誰だ…?」
 その問いに答えるものはなくて。空を見上げる。
「バカバカしい…空に誰かいるもんか」
 あの聖都を旅立つときのように、笑って。

―私に、一人の人が大事だって教えてくれた、たった一人の人。私の事なんかを大切だと言ってくれた人―

 翼で守ってもらって、いつのまにか苛立ちが消えていた。
 今度は守っていきたかったのに。
「だから、誰を…」

―…傍にいることさえ叶わなくて、でもいつか、傍に行きたい…祝福の風でもいいから―

「………」
 どうしても名前を呼びたくて。

―そしたら、また、雪を見せに連れて行ってください…、私も見せたいものがたくさんあるんです―

 アルカヤの大地を風が吹き抜けていく――。春先の風。
 懐かしい祝福。

―あのね。今度は、聖都をちゃんと全部、探検したいです。お買い物をしたりして…。でも、あなただから『いつまでそんなところでふらふらしてるんだ』ってちょっと不機嫌そうに言うんでしょうね―

―………ロクス……―

―…わがままな私を許してください―




『手紙』でしたのです。あの封書は。
手紙ってのはずっとやりたかった〜〜。しかしくどいEDだ。
針千本やらないのだろうか、エスナさん。

これもかなり前に書いたものです。これ(と他のED)やった後、
ロクスの科白(ED間際のやつの通常の)で「また君の名前を呼べるときを楽しみにしている」
というのがあると見て、驚いた。「名前」にこだわるって良いねえ(謎)。

挿絵風味

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