第13話:毒蛇の誘い―



 あの時と同じ目、全部変わってないように見える。
 でも、確かに違うのは、当時のようにコイツの正体を知らないわけじゃない。
 もう、逃げも隠れもしないのはわかっている。それに今さら、こいつをどうこうしても天竜が蘇った今、世界がどうにもならないことも、わかっている――――。

「ヴァイパー、お前には散々やられたよ」
「ロクスか」
「…だけど、僕はやられっぱなしは好きじゃない。借りは返させてもらう…」
 だから、エスナは連れて来なかった。連れて来れば『戦わないで』と頼み込むのは目に見えている。
「借金は返さねえが、恨みは返すってか…。つくづくイイ性格だな、気が合うぜ…ホント」
 そうやって上目遣いで笑うのも。
「………………」
「まあ…このあたりが潮時だろうな」
 悪魔のカードを取り出す。あのカードのせいで本当にいろいろやられた。
「来いよ、ロクス」
「ここで…」

「(―――多分、こいつにはとどめがさせない)」
 何を考えているんだ。自分が傷ついているのに!
「(そんな価値もない…こんな奴…)」
 戦っているのは自分なのに、まるで客観的に見ているようで。
「(コケにされて…散々…)」
 じゃあ、そんな価値もないやつと僕は戦っているのか?
 自分の詠唱も、自分の声に聞えない。悪魔のカードでさえ、恐怖を感じなくて。
「………終わりにするぞ…!」
 最後の詠唱が終わりを迎えそうだったのに、
「…な?」
 声が止まる。いままで客観的に見ていた戦いが色をとり戻した。

「…………羽!?」
 戦場を舞う、一枚の羽。
「バカ…エス――…」
 咄嗟にそれしか思い浮かばなかった。
 しかし、舞っていたのはその一枚だけ。
「ちっ…」
 それはクラレンスが持っていたことがわかって、目を見開く。
「ロクス」
「まさか…ヴァイパー…」
 ゆっくりと舞降りてきた羽と、クラレンスを交互に見つめて。
「あの間抜け天使様のだ。お前のな」
「…エスナに、何かしたのかっ」

 問いには答えないでただ笑っただけだった。地面に座って、胸を押さえて。
「俺の体はもうダメなんだ、どっちにしたってな。世界の終わりってのを見てみたかったが」
「ふざけた事を…」
「それも叶わないみたいだな。…とどめはささないのか?ロクス」
 地面の羽に目を落としただけで。
「はは。俺もあるいは………。なあ、ロクス、こっちに来てくれ」
「……………」
「治して欲しくなんてねえよ。…ただ、側にいてほしいんだ」
「……………」
 どうして、歩いていったのだろう。最期くらい…という哀れみか?

「…ッ!」
 いきなり、目に衝撃があって。思わず手で押さえる。投げられたのはカード。…死のカード。
「……ヴァイパー…お前…ッ!!」
「はは…お人よしだな、ホントに…。気をつけろ…今度は、かすり傷だけじゃすまない時もあるぜ……」




「どうして…戦ったんですか…」
 目の傷に手を伸ばして治癒魔法をかけている。もう、これ以上直りそうもないのに無駄に。
「……………」
 手を払って。
「あ!駄目ですよ、じっとしてて下さい!」
 こっちだって聞きたい。どうして、ヴァイパーが羽を持っていたのか。
「……。魔石を取り戻しに行ったのか。一人で」
「!……は、はい。結局ダメでしたけど」
「余計なことをする…ッ!」
 その所為で、気が晴れない。いや、それだけではない。ヴァイパーが最後に傷をつけた意味も。…意味があるのか、ないのか…。
「あいつの気持ちなど知りたくないッ…」




無理やり…作ってしまった…。む〜。ヴァイパー×天使をまだ引きずってますね。
ヴァイパーが羽を取ったのは『取り返しに』のときです。羽取られても気がつかないものなのか。
あ〜気にいらねえ!!なんだこのできはっ!
今回も戦ってるのは数行。


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