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刀剣乱舞 山姥切長義

バストアップでも体の大きさや厚みがわかる絵が描きたいと落書き。


そして書きながら考える小説。


追記↓
櫛の日で再掲したけど絵と話が古い……!!

また違う時の日常の櫛の話。

↑追記ここまで。

―――――――――――――――――――――


「私も何か渡したいなー」

 事務作業が終わったとある日の夕刻。
 書類を全て転送し、畳に座り込んだ。

「……君はいつも突然だな」
 この審神者、唐突に話を振ってくることが多い。
「お、なんだと思う?」
「それを俺に聞くのか?」
 山姥切長義は呆れた顔を作りながらも審神者に向き直った。

「ふむ………。 あぁ…。俺にもらってばかり、だと?」
「え!すごい」
「……こんな事くらいで感心されてもね」
 わからないか?と片眉を吊り上げた。
 首元に当てた手は青い石のネックレスに(無意識だろうが)触れているし、そもそも二人だけでいて話を振り始めればそれは目の前の刀剣男士の事だろう。
「別に構わないよ。「俺」という刀の個性がこうだった、と言うだけの話だ。君に渡したくて渡しているものだし、俺は特に見返りは求めてはいないよ」
 ひらひら、と手を振りながら。
「えー」
「……はぁ…。見返り、というなら]
「うん!なになに!?」
「(…全く面白いね。そんな目を輝かせて)…「貴女の存在」くらい、かな。俺が求めているのは」
「ッ!!」
「…ほら、それならもう頂いているからねぇ。だから問題はないよ。これからも存分に俺に貰われてくれ」
「う、長義…ッなんかなんでさらっとそういうの言うかな…」
「だから、俺という刀がそうというだけだよ。…別に、照れて何も言えぬより言うことは言った方が精神衛生上いい、というだけかな。それに照れる事でもないだろう」
 顔を真っ赤にする審神者に、はは、と笑いながら手を伸ばす。そ、と手の甲で頬を撫で上げた。


「んー…そうなのかぁ」
 長義の手の感触に目を細めながら。
「なんだ、残念そうだな」
「プレゼントを選ぶ悩みー…みたいなのも楽しくない?」
「あぁ…そういう話か。全く人の子というものは厄介だね。……まぁ、だとしても、特に俺は欲しい物が今の所ないからねぇ。君のように首やらなにやらを賑やかにしていたら戦の邪魔になる」
「まー…でしょうよ」
「だろう?…なら君がしているのを見ていた方がいい。それに、実際その方が見えるだろう」
「……ほぅ」


 何となくうまく丸め込まれた気がする。
「じゃ、お菓子でも一緒に食べよ」
 だが引き下がれず。言いながら長義に背を向け、机の引き出しから袋を取り出してくる。
「ああ、それなら喜んで」
 袋の中から煎餅やらクッキーやらを取り出し、長義が手渡してきた漆塗りの盆の紙の上に並べた。
 全て、現世で購入してきたものだろう。様々な字体で菓子の名前が印刷され、ビニールの袋に小分けになっている。
 実は男士たちに現世の菓子は評判がいい。甘いものが苦手な男士用の煎餅はいつも取り合いになっている程だ。



「でもなんか違う気がする」
 パリ、と音を立てながら。
「……全く、まだ言うのか。 ―――なら」
 このままでは引き下がらないのだろう。そう感じた長義は少し考えた後、ふ、と顔をあげて、口を開いた。

「?」
「君が以前から所有していたつげの櫛、携帯用の小さいものがあっただろう?あれを俺に」
「え? 櫛?」
 元々木の櫛が好きだった、らしい。だから、いくつか持っていたのだ。
 だからこそ、遠征時につげの櫛を購入してきたのだったのだが。そう、このテの物は受け取った者が「使えると思う」か「そうでないか」で価値が全く変わってしまうものだからだ。
「別にいいけど」
 なんだろうか、と、手を拭きながら菓子が入っていた引き出しとは違う小さな白い引き出しから三寸ほどの小さな櫛を出してきて長義の手に乗せた。

「俺が貰う、と言うより、…俺の証を篭めて君に持っていてもらいたい」
「え、結局私のなんじゃない?」
「―――おい、あまりしつこくすると俺も黙ってないよ。それに、半分は俺の所有物になるようなものだ」
 言うと、手で包み、力を注ぎ始めた。
 ふわり、と白く、青い光が舞う。


「?  ……へぇ」
 「山姥切長義」という刀剣男士を示す刀紋。黄色い櫛にまるで彫刻を施したかのように。
「うわ、神気でこんなことできるの!?すごいすごい」
「……。これはまた、面白いことになったな」
「え、知らなかったの?」
「あぁ、いや。一極に集中したらまぁこうなるだろうと予想は付いていたが、機会がなくてね。 …これはなかなかだな。…なるほど?これは、ほぼ俺のもの、か」
 つ、とそれを撫で。
「さ、俺が出かけている時。君が現世で出かける時はこれで髪を梳くこと」
「うん。…あ、長いやつにも入れるの?」
「いや、いつもの櫛は俺が梳くからね。というよりあれに入れたら歯にかかってしまうだろう。機能が損なわれる事は職人に申し訳ないからね。…神気を篭めてもそんなことはしないよ」
 それは長義が遠征時に店屋で購入してきたものだ。
「あー、確かに」

 長義はそれを審神者の手に戻すとそのまま引っ張り胸の中へ。
「んっ!」
「……」
 少し癖のある髪に触れ。指を通す。
「つげの櫛には様々な言い伝えがある。苦しい時も共に在ろう。問題事を共に解きほぐそう。…どんなに離れていても無事に戻れる、と」
「…ちょ、う ぎ…」
「………ただの主と刀の主従ではない。それだけで…」

 櫛を持ったままの手を、長義の背に回して。きゅ、と掴む。
 シャツの下のしっかりとした体躯。その温かさが指に伝わり、思わず掴んだ手をほどいた。
「どうした…?」
「…い、いや その」
 もう一度、掴みなおして。
「……と、うぜんだけど、あったかいって」
「は? 何を今更。身体の作りは人とあまり変わらないよ。恐らくね」
「…じゃあ、付喪神、として…は。この状態ってどう…?」
 肩に頭を乗せ、そこから長義の目を見上げる。
「…俺の?……あぁそうだな。それこそたくさんの男士が存在しているし、例え同名の…同位体でも「この俺」とは考え方が違う。だから「付喪神がこれだ」とは言い難いが」
 少し顔を動かすと、髪が頬を撫でた。

「興味のあることにしか向かない。その他はどうなろうとも知ったことではない」
「どう、なろうとも?」
「ああ、意外だったか? 君以外の人の子が倒れようと、どうなろうと…別に、としか言いようがないね。―――ただ、主である君が歴史を守る為に戦うというから、まぁ、従っているだけだよ。
確かに元政府刀、…刀剣男士としての使命もある。歴史を守る意志は勿論ある。―――だがもし、君と歴史と、と天秤にかけられたら、俺は真っ先に君を選ぶね。…案外付喪神とはそういうものかな」
「へー…、なんか、長義ってすごい正義感というか、責任感すごいのかと」
「おや、幻滅したか? はは、俺が歴史を守ると言っているのは責任感などではないよ。ただ、俺がしようとしている事について他者に邪魔をされたくないだけだ」
「えー、それって責任感じゃないの?」

 つまりは、歴史を守る、と言う意思は長義のモノ、なのだ。
 命令されてしているわけではない、と。

「…違うね。あくまで俺がしようとしている事について、手出しして欲しくないだけさ。まぁ、それを「責任感が強い」と好意的に評価しているのなら、そう思ってくれても構わないよ」
 だから、と続けながら目の前の黒い髪に、首筋に顔を埋める。
「とにかく自分がこうと思うモノに誰か他のモノから手を付けられるのが…許せないだけかな」
「ん…ッ」
「……貴女が、自分の意思で俺に腕を回している事も、俺が贈った物を身に着ける事も。…櫛の意味を分かって受け取っている事も…。なら、これ以上、望む事などない…」
「……ッ」
 首筋に華を咲かせる。濃い色の髪に、ブラウスの襟に、隠れてしまう位置。



「―――あぁ、貴女を俺に縛れるのだからね…」
 指先にくるり、と癖のある髪を絡ませる。
 いつも梳いてやっているその髪。





櫛の日で再掲したけど絵が古い……!!


長義が買ってきた「寸が長い櫛の話」はこちら

そしてまた違う時の日常の櫛の話。


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まぁつげ櫛好きですよね。しょっちゅう手入れしてます。