秋と冬の間


「あ〜…今日も寒いわねえ…」
 秋なんてあるようでないようで…いつも駆け足で過ぎていくものだ。
 車やらが通ると一瞬遅れて寒い風が吹いてくるから、こういう風を感じてしまうともう冬だと思う。
「…あら」
 路面にいくつかの丸いもの。自然に落ちたソレは、そんな車輪たちによって……、
 ごつん! だとか、 ばちん!だとか音を立てて――――。

「また、栗がつぶれてるわ…」



「あ、シア姉」
「ただいま。サエ、ちゃんと店番してた?」
「してたしてた!うー…いきなり寒くなったよね。さっきもセーター探してるって人が来てたよ」
「そう…じゃあ仕入れ先にでも中古衣料探してもらいましょうか。…サエもあの子たちのも欲しいでしょ」
「うん、貰えるならねー」
「その分働けばね〜」
 あはは、と笑いながらそんな他愛のない会話の後、

「焼き栗」
「…? 栗…」
 先ほど、路面で勢いよくつぶれていた栗の話はしてなかったわよね?とグレイシアは首を傾げる。
「ん〜…セーターとかニットの季節になると…売ってるなぁ…って。焼き栗の屋台」
「ああ、そういうことね。確かに…あったわね」

 多分、冬の風物詩だった。
 屋台とも言えない屋根のない場所で、道の曲がり角みたいなちょっとしたスペース。そこに大きな丸い鉄板でごろごろと栗を回しながら焼いているおじさん。
 サエナや同じ年齢の友達はお母さんから貰ったたった少しのリラで「コレで買えるだけ」なんて言いながら買っていた。

「マロングラッセとかって言わないの?」
「えー、そんなおしゃれそうなのより、屋台のがいいなぁ…」
「そう?」
 グレイシアはくすくすと笑いながら言ったが、その表情は少し寂しそうでもある。それはサエナの声が、目が遠くを見ていたから。
 いつ帰れるかも、親や友達がどうなったかも分からない状況で、思い出すのは楽しい事ばかりではないだろうから。


「栗、早く行かないと潰れちゃうかも」
 しかし、そんな顔を悟られないようにまた笑って。
「は??」
「さっきね、外に出たときすごい勢いで栗が潰れていたの。車とかリヤカーに轢かれて…、ね、拾って来なさいな。そしたら今日の夕飯の時にでも焼くか茹でるかしてあげるから」
「はは〜ん、なるほど。…落ちてるから貰ってきていいのかなっ!?」
 ぱっと顔が明るくなったように見えて、今度は本当におかしくて笑ってしまう。
「ふふ、…アルが帰ってくる前に行くの?」
「ん〜……うん!だって二人帰ってくるの待ってたら、暗くなるし、なくなっちゃうよ!!」



 皮のまま焙るから真っ黒になってしまって、見た目はちょっと悪い。
「でも中身はホクホクでしょ」
「ふーん、買ってきたのか?」
「違うって、拾ってきたの」
「へえ。…そっか、もう…そんな季節なんだね」





ネタで「秋のものでいかがでしょう」といただきました。
秋、秋…。
こんなのでいかがでしょうか…??
焼き栗屋さんはイタリアの冬はよく見かけますね〜。
なんかでかい鉄板のようななんだかでごろごろやってるんです。
見た目は確かにちょっと悪い(笑)。

シア姉ちゃんがいい人だわ〜〜。

全然関係ないのですが胡桃の木の下を車で通ると、「ばちん!」だとかいう派手な音がします…。
栗はそれほどでもないと思うがその辺はご愛嬌。


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