昔の名前


 ほら、と、サエナは何かを広げた。

「…羊皮紙?…ああ、地図か。ずいぶんでかいな」
「そ。どう?カッコいいでしょ」
「どうって、言われてもな…」
 エドワードは頭を掻きながらその羊皮紙をひっくり返したりして眺めた。地理なんて詳しくないから何処の地図なのか今ひとつよく分からないのだが。
「か、ってほしいんだろ?」
「うん」
「へいへい。オヤジ、これいくら?」
「ありがと、エド」
 サエナはそれを抱えて何処かに走っていく。
「何に使うんだよ…そんなん」
「何だっていいじゃないっ〜!」


「あ、サエナ」
「アルは終わった?」
「ああ、…と、エドワードさんと一緒だったんだね」
 向こうから歩いてくるエドワードの姿を確認すると、それに気がついたか、エドワードは、つい、と手を挙げた。
 教会の前に作られた市場。生活用品の他、古本などもある。意識したわけではないが、広場の中央でばったり再会した三人。意味なく戦利品を見せ合う結果になった。

「いつも同じようなのだな」
「まぁ、仕方ないですよね」
「それ、見せてくれよ。………。――こっちは言語関係の辞書か。…あー、やっぱりいくつか読めねえとダメか」
 ぼりぼりと頭を掻きながら紐でまとめられた本の背表紙を読むエドワード。
「エド、読めるの?」
「あー、…大体な。なんとかなんだろ」
 へえ、とアルフォンスは言葉を漏らす。エドワードの(最近この世界に来たという)話が本当なら言葉だって分からない筈なのに。
「で、サエナのは?…羊皮紙の、地図?」
「なんか古そうでしょ」
「意味ねえよな。しかも何処の地図かわかんないんだぜ」
「あ、失礼ねー…。羊皮紙の地図ってところがカッコいいんじゃない。」
「…?あれ。これ、ここより東の地図だね。ほら、エドワードさん」
「あん?………ああ、そうだったかもな、こっちまでもっていくとルーマニアか」
 つつ、と指を滑らせる。
 あまり興味がなかったからじっと見なかったが…、よくよく見返してみると、一部は昔の名前が使われているようだが、見覚えがある名前が並んでいた。
「へえ…こんな名前だったのか」
「この辺りで研究してましたよね」
「ああ、この辺――――」

「………」




「あーあ…」
 数十分後、サエナは焼き菓子を齧りながら二人をぼーっと眺めていた。
「二人とも、火が点き始めると止まらないよねえ…」
 何かを突き詰めるのが好きな二人だから、今ひとつ興味なかったエドワードも火が点くと集中してしまう。
 昔の言葉で書いてある、とか。
 地図からそんなのは読めないのに、言葉はこんな風に変化していって、今の言語になったんだろうとか…。
「身近で言えば、ドイツ語もいろいろ変化してきた。…ジャンルが違ってもこうやってひっくり返すのはいいかもしれませんね」
「ロケットの研究は最新だから昔の資料なんて役に立たない…なんて決め付けるのはよくないんだよな」
「そうですね。少し昔の発明でも今でも十分通用するような――――」



「ちょっと、それ。私が買ってきたんだけどッ…!バカ」

 小さく文句を言っても火が点き始めた二人には聞こえず。
 地図を広げながら、いつの間にか話題は変化して研究の話になっていく。
「ホント、このテの話になるとすごいんだから…なんでもそっちなんだねえ」



「…大きいからテーブルクロスにしようと思ってたのに、カッコいいじゃない…?」
 というのは…とりあえずヒミツで。

「羊皮紙…テーブルクロスにすんなよ」
「何、こういうのだけ聞こえるわけ?」





「サエナ」って昔の名前の「シエナ」(イタリア)の地名でした。後日談ですが。

昔の名前って面白いですよね。ルーマニアあたりのはちょっとわかりませんが、
きっと旧名もいろいろあった筈(筈、かよ)。
英語名と現地名でまた名前が違うのも面白い。

ヨーロッパの名前の起源は「エウロパ」だっけ?女神の名前…だっけか(オイ)。

地図は好きです。カッコイイ。
羊皮紙はテーブルクロスに出来ないと思うけどどうなんですか?

ハイデリヒもエドワードも、ロケットだけ、突き詰めていたわけじゃないよね。
それだけ突き詰めていたのだったらロケットは出来ないと思うし。

まぁ、なんだかわかりませんが市場に行って地図を買ったと(ソレダケ)。
地図の使い道を教えて?(笑)

08.04.2007



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