特設カフェ


「ふあー、いい天気…」
 思い切り天に手を伸ばして、ついでに背伸びまでする。
「なーにしてるの。ちゃんと店番頼むわよ」
「は〜い」
「じゃあ、頼むわよ」
 そう言い残してグレイシアは店先から去って行った。友達と約束があるとか、市場に出かけるとか。


「さて、…店番店番っと…」
 お客が来ない間は商品の陳列など…と言っても、先ほどまでグレイシアがやっていたので特に追加するものもなく。それに今までも手伝っていたので特に一人でも大変なものではなかった。
「二人は…今日はお昼くらいには戻る、って言ってたっけ。そしたら三人で店番ってことでいいよねっ」
 無意識に視線がいった先は壁の時計。もう、こんな時間になっていたのかと思う。時計はお昼を少し過ぎていた。
「そういえば、鐘も鳴ってたし…。じゃあ、そろそろかな」
 ――――店番。エドワードは本を広げながら椅子に座っているんだろう。
 アルフォンスはちゃんと手伝ってくれるだろう。…そんなことを想像しながら笑う。

「…ふふ、――――あ、ウワサをすれば…!おかえり!!」
「ただいま」
「ああ、…あれグレイシアさんは?…お前一人?」
「うん。あ!ちゃんと二人にも手伝ってもらうから」
「じゃあ、これ、部屋に置いてくるから待ってて」
 『これ』…カバンをちょっと上げて。エドワードは「へいへい」と手を振りながら廊下に消えていく。数分もしないうちに二人は店先に戻ってきた。
 案の定、エドワードの手には本が数冊あってサエナは思わず笑ってしまう。
「んだよ…」
「いーえー。なんか、なんだなーって」
「…はあ?」


「…――――で、そんなに忙しいのか?」
 エドワードは椅子に掛けて、暫くしてから、口を開いた。
「別に、そうでもないけど」
「じゃあ手伝う必要―――…」
「たまにはいいでしょう?エドワードさん。ぼくら、いつも夕方にしか戻ってこられないから、役に立てる機会ってそんなにないし」
 そう言うが、できるだけ店を手伝っているアルフォンスをエドワードは知っている。
「……エド、本読んでるだけじゃない。それでもいいからここにいてよ」
「なんで」
「一人でこんな所いたらつまんないじゃない。ね、三人でこうしてるってのもいいかもよ。今日、ちょっと暇だけど」
「お前の為かよ…。いいけどな」
 呆れたように笑いながら、サエナが差し出してきたコーヒーのカップを受け取る。
「天気もいいからね」
「うん…。…………そうだ!」
「「?」」


「アル、そっち持って!」
「え、ああ」
 ずるずるずる。いらなくなった木箱。それを椅子に掛けたエドワードの前に置いて。そうしてそこに椅子を追加。さらに…木箱の上にコーヒーのカップを三つ。
「なんだよ」
「特設屋外バール!!」
「だろうと思ったけど」
「どうせ暇だし、天気もいいし……折角の花屋だもん。かわいい花が満開!…満開の花を見ながら外で食事、なんてちょっと贅沢でしょ〜。Via Vittorio Veneto!…高級通り!みたいじゃない?」
「…こんな、「不景気です」な風景でか?」
「いちいち口答えしないの。ようは思い込みじゃない」
「思い込みかよ…。…あ!そうだ、アルフォンス。さっき帰ってくる前にパン買って来ただろ。ここで食うか!」
「ええっ?」
「あ、いいねー。お昼まだなんだもん、お腹もすいたし!」
「じゃ、オレ取って来る」
「うん」

「み、…店番じゃなかった…?いいのかなぁ…」

「ほら、アルー!ごはんにしよ」
「あ、ああ!………ま、いいか」




「で、三人…?でここで飲み食いしてたと」

 『三人』に疑問符がついた理由は。
「なんで、こう人が集まってるのよ…」
 店の常連、また、エドワードたちの顔見知りが何人かが特設カフェの周りで談笑していた。
 何処から持ってきたのか、ビール片手の人もいてここはビアホールかと思うくらい。
「シア姉も混ざる?」
「…買ってきたお菓子、あんた達の分しかないのよ?」
「えー」
「ふふ、あとで三人で食べなさい。…ねえ、サエ」
「うん?」
「久々ね。…不景気になってあまり、屋外でこういうのって見かけないでしょう?」
「…じゃあ、またやろうか?」






何がかわいいのか「店先の花」(汗)
なんだかハイデリヒがまた苦笑ばかりしているような気がします。

花が咲く庭園でお菓子とお茶を…って高級だな。と話していて思いついた話。
どうなんだろ、この時代も屋外カフェしてたのかな?あ、してたか…。

あのアパートの花屋って店先に椅子が置けそうだったよね。
んで、花が並んでいて、空が青くて。いいよねー。気持ちいいと思うなぁ。
明るい声に誘われてお友達でも遊びに来ればきっと楽しいよね。

サエナの「ヴィットリオ・ヴェネト通り」は今でも高級ホテルが立ち並ぶ高級カフェ通りです。

2007.02.25


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