踏み出す


 何が人間兵器だ。
 …オレは、また、大事なときに無力だ――――。


 確かに小さい一揆だった筈だが、混乱に乗じてボヤが出たのか、かすかに煙が上がっている。大火事にはならないようだが騒ぎはもっと大きくなっていく。

「アルフォンス!お前、道案内しろ。とにかく一番近い道だ!!」
「あ……は、はい」
 エドワードは言いながらアルフォンスに寄りかかっているサエナに応急処置を施し、急いで…でも、衝撃を与えないように手を伸ばした。
「!…ぼくが、…ぼくが背負っていきます…!だって…」
「バカ、お前こういうのやったことあるのか!?ちょっとでも衝撃与えてみろ、悪い方向になるのは目に見えてんだ!いいから、お前はオレたちが無事にアパートに戻ることだけ考えろ!」
「………ッ。でも…ぼくの」
 碧眼が揺れている。
 いつもの冷静な、そういう考えが出来るアルフォンスではない。
 それは分かる。死にかけの…しかも自分をかばって撃たれた人間なんて見た事がないのだから。
 エドワードはその腕から抱き上げ、背負う。
 ――――重い。
 ウィンリィを背負った事があったが、動ける人間とそうではない人間とは重さが全く違う。倒れた母をベッドまで運んだ時、こんなだったかもしれない。

 道案内をするアルフォンスを、その町並みを見ながら。そして、まだ温かい背の重さを感じながらエドワードは思う。
 …もう、無力になんてなりたくない。


 その数時間後に、見る、アルフォンスの姿。不気味なくらい平坦な声が逆に痛々しい。
 そして、おだやかな、サエナの顔。






「……これは、この戦いはオレたちの所為なんだ…、分かるか、アル」

 もう、無力になんてなりたくない……。あんな顔見たくないんだ。そう思いながらいくつもの、無力を感じてきた。
 だから、

「この世界を守る」

 守れるように、進まなきゃいけない。かっこ悪くても足掻かなきゃいけない。戦争なんて一人で出来ないけど、引き金はきっと引ける。
 だから、この戦いは起きてしまった。いくつかの偶然と意思によって、きっとこの戦いの引き金を引いた一人はオレだ。
 だったら、この世界を守る引き金もオレは引ける筈だ。


 エドワードは弟と走りながら町並みを見つめた。
「(多分、…オレはもう、ここを見ることはないんだろうな…)」

 オレも、オレの大切な友達も、こんなのを望んでいなかった。でも、起きてしまった。ならば、ちゃんと…できることをしなきゃならない。




「ありがとうな、って」

 ごめん、ウィンリィ。――――でも、分かってくれるよな?
 このままオレがこっちにいれば、きっと向こうは門の処理で、ドタバタが起きてもおかしくない。そうすれば、またヘンな争いが起きないとは言い切れない。
 それに、あいつの…あいつらのロケットがそれだけの道具だって思われたくないんだ。こんなおぞましい武器が付いたロケットなんて、望んじゃいない。
 そうだ、だったら、宇宙だけを、戦争がない空へと目指すロケットを今度、打ち上げてやるよ。

  ――――ごめん、母さん。これで同じ世界で眠ることも出来なくなるな。
「…でも、後悔しないから」

 格の違いを見せてやるよ。立ち止まってたまるか。なぁ、アルフォンス。
 これだけのことをしちまったんだ。できることをしなきゃ、楽しいと感じていたあの時間を否定することになる。




「――――…だろ?…『無力』なんて言うだけだったら誰でも出来るんだ。はっ、…そう言って、許しを請いたいとでも思っていたのかな、オレ」
 手向けられた大きな花束は、グレイシアが「もう、お店のお花全部持って行く気?」と呆れたくらいだった。
 二つ並んだ墓石はとある方向を向いている。…ミュンヘンの町の方向。
 短くても幸せだったあの時をいつでも思い出せるように……。





亡くなってしまった彼らへ、たくさん泣いただろう。と「涙の跡」

……。同じような話第○弾(笑)。
エドワード氏の行動を追ってみましたよ。
更新が開いてしまったから、適当に書きました、何て言えないですね。
書きたかったのはうろたえるハイデリヒ(何)。

会社の友達にシャンバラ勧める時「エルリック兄弟の壮大なワガママな話です」と言ったら…「その通りでした」と返って来た。
「こいつらを門の向こうに返す」それはあの砲台とか戦いの道具だよね。
ハイデリヒたちが作っていたのは心臓部のエンジンらしいですが、アレがあのまま残っていたら、
争いの道具だ、だけで片付けられてしまうかもしれない。
まぁ、いくつか飛行機残っていましたがね。エドが乗っていた赤い機体は希望になったんでしょうか。

エドって、進んで止まって、ちょっとバック(?)してを繰り返して、進んでいっている感じ。
たくさん足掻いてそれでも進む感じ。


某国にある戦争で亡くなった方の集団墓地。とてもきれいに整備されたところです。
その墓石はみんなとある方向を向いているらしいです。それは祖国。
…というのが現地の方談でした。

2006.12.17



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