二人は実験台


「ふー」
 エドワードはソーセージにフォークをつき立て、適当に切って…それにかぶりつきながらちらり、と視線を移動した。
 その先にはアルフォンス。彼はいつものように行儀良く、…そう、いつものように食事をしている、が。
「(やつれてんなー。…いや、通り越して死んでるか…?)おい、あんま…ムリすんなよ」
「え?ええ…」


「絶対ムリ!!!!」
 台所で格闘する姿。
「何がだよ」
「70度で20分茹でろ〜なんてムリじゃない!?沸騰するに決まってるじゃない!」
「はあ…」
「あはは…」
「……何、そのビミョーな反応…」
「いや、さぁ。確かに最初は「失敗作は片付けてるから」って…言ったけど、よ」
「う、ダメ?」
「ダメじゃねえけど、これ以上増やすな!!!」
「エ、エドワードさん…ちょ」
 なるほど、エドワードたちのテーブルにある白ソーセージたちはまともな姿をしていなかった。つまりはサエナの『料理中失敗作』
 しかし、育ち盛り(?)の男二人が居ればどうにか片付くだろう――――と曖昧な見解の中、失敗作はどんどん増えていた。
「……仕方がないね…」
 がたん。
 いきなり立ち上がって、台所の方へ。

「サエナ」
「アル?」
「ああ――――、…と。いい?」
 並んでいる調理器具やらなにやらを眺めてから、手際よく教え始めるアルフォンス。

「へー…。すごい!アル」
「…たいしたことないよ。ぼくは一人暮らし生活もあったし…。サエナはこっちで暮らしてないもんね、本当の作り方なんて分からなくて当然」
「私もアルやシア姉に負けないようにしなきゃね」
「ムリじゃねえの」
 未だ失敗作を咥えて、もごもごしながら背後からの声。
「マスタードがうまいから何とか食えてんだぞ、これ」
「うるさい!エドっ!!」
「アルフォンスも甘いんだよ。…冷や汗ダラダラじゃねえか」
「う…ア、アル…。そんなにまずかった…?」
「い、いや。大丈夫、だよ」
「ちょっと待てサエナ!!オレには心配とか何もナシかよ!?」
「エドなら蛇とかトカゲでも食べそうだもん」
「………(く、食ったことあるな、そういや)」
「あはは。それにさ、ちゃんと出来るようになるよ。ほら、段々うまくなってるし」
「だったら、最初っから教えてやればいいだろ。…て、――――ああ。そういうイミか」
「…ええ」
 肩をすくめて苦笑する。
「最初から工夫することをしなかったら、敷かれたレール通りにやったら…失敗なんて知らないでしょ」
「ってことだな」
「あは、二人とも厳しい…」
 とは言っても、『失敗作』の山は…笑い事で片付けていいような量ではなかったが。


「さて、サエナも食え、遠慮すんなよ?」
 にやり、エドワードはイヤミな笑みを浮かべながら皿を差し出す。
「た、食べますよー。自分で作り出したものはちゃんと処置します」
「…………あ、サエ…」

「「………」」
 必然的に視線はサエナに集まって。

「……………お、いしくない、ね」
「お前、それオレらに食わせてたんだぞ」
「いや、そ、そんなに大変じゃなかったしさ」
「…うー…ごめん……」


 ・数日後・

「今日はスープに挑戦!!」
「うえー」
「うん」
「……エド、食べないの?あー、残念。じゃあ二人分でい・い・の・ねッ!」

「サエナ、トマト系はうまいんですよ?お国柄」
「…それかよ!!!オイ、一人分追加な!」
「はいはい。…じゃあちゃんといつもの時間に帰ってくること!ビアホール寄るとかはナシだからね」
「うん」
「へいへい」





「一緒に」食事。
流石食っているシーンが多い小説です。とうとう作り始めました(笑)。

これ、ホントはアルフォンスが嫉妬する話だったんですが、
途中から路線変更。全く違う話になりました。

トリシャさんって料理うまそう…。でもシチューだけなんていうオチじゃないよね?(笑)


2006.08.21



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