気だるい午後


 珍しく、その日はとても暑かった。

 夏になっても一気に気温は上がらない。
 しかし、一日や二日は狂ったように暑い日があるもので。そういう日は出歩きたくなくて、できれば…屋根のあるところで寝ていたい。
 そんな、午後――――。

「………」
 額に手を当てて、目に入る光を防ぐようにする。
 床の上にはシーツが一枚だけ、その上に寝転んで手の隙間から天井を眺める。
「あつ…」




「………」
 それを見ながら、でも見られていることに気が付かれないように、横目で、横目で…。
 図面を持ったまま静かに通過して、テーブルにそれを置く。
「寝てる…?床で…?」
 ようやく言葉を発する…が、相手は答えない。そのかわりにころん、と寝返りを打った。白いワンピースの裾は少し短いようで、無意識にそれを隠す為か、足の方はシーツが巻きついていた。
 そのシーツは先程サエナが洗濯したばかりのもの。まだ残りの洗濯物は微かな風に揺れている。
「…そんなところで寝てないで」

 ゆさゆさ。

「…ん?……ふぁ……あ、いつの間に、寝ちゃ…?」
「〜ッ…」
 ――――この暑さだからか、頬が少し赤くて。汗で前髪が額に張り付いていて。
 …おまけに、気だるそうに開かれた薄荷色の瞳は揺れている。いつもの目じゃなくて、少しだけ空ろそうな…潤んだ(あくびで)目。

 思わず、アルフォンスまで頬を赤くした。
「………う」
「うー…アル?…おかえり……せ、洗濯……乾い……」
 未だに焦点が定まらない目で伸びをしながら。その動作に(少し大きめの)服の肩が少しずれ……。

「――――って…シャツっ!??ぼくのっ?」
「こないだ…貰ったやつ」
「そ、そうだけど…でもっ…」
 ワンピースではなかった。
 サエナが着ていたのはアルフォンスのシャツ。かなり前に寝巻き代わりに一枚貰ったものだが、……何故昼間着ているのか。

「全部…洗っちゃって…コレしか着るのがなかったんだよ、ね…」
 暑さと眠さで未だにふらふらしている。
 ぼーっとしたその潤んだ目は、少し(いや、かなり)だぶついているシャツ姿のそれはアルフォンスを慌てさせるには十分で。
「い、いいから着替えてきなよ!サエナの服も乾いてるからっ!!」
「?…うん…」
 何故叫ばれているのか分からないが、乾いているのならと、よろっと立ち上がり、リビングの扉の方へ。靴は部屋にあるらしくはだしだ。

 ぺたぺたぺ……。
「やっぱりいい」
「なんで」
 扉に手を掛ける前にアルフォンスにとおせんぼされる。
「ぼくが入れてくるから」
「いいよ」
「い・い・か・ら!!…サエナはここにいて」
「…アル、顔赤いけど、…風邪引いたの?…」
「違うよ!!」
 まくった袖もいつの間にか戻っていて、腕を、指先までも完全に隠している。

「この暑いのに、ジャケット…羽織りたくないでしょ」

 アルフォンスは「絶対ここから出ないこと!」と念を押してリビングから出て行った。
「ヘンなの……風邪じゃないならいいかぁ。ふあ…昼寝なんてしなきゃよかった…眠くて仕方ない……」




「あんなカッコ、他の人に見せられないよッ…!」

 あんな潤んだ目して(くどいようだがあくびで)。
 ワイシャツ一枚でワンピースだと思ってて。
「――――〜ッ…!」

 顔を真っ赤にしながら、早く部屋に戻りたくて必死に洗濯物を籠につっこむアルフォンスを見て「罰ゲーム?」とグレイシアが思ったとか思わなかったとか。





「こんなん書けるか、誰が魅惑だ!!!」
…ってか魅惑って何だ?


いろいろ悩んでましたら友達が「ハイデリヒが熱出してぼーっとしてるとか」
…熱出してたら魅惑もなにもないだろ?「どき☆」の前に心配するよ。彼は元から体悪いから。
「じゃあサエナで」
………。ぼーっと、ねえ…。

…と、出来上がった話。ちなみに友達は「絵でやると思ってた」だそうだ。
一部で大人気(?)裸ワイシャツをオプションで追加(笑)。
だいたい、こんなんで「どきっ」ときますかね?

サエナ、料理はしないけど洗濯はしてるのか。

2006.07.24



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