それぞれの12月
――――とある12月の昼下がり。 毎日とても寒いが、いい加減この寒さにも慣れてきた。 グレイシアに頼まれた店先の掃除。箒を持って…その手が止まった。 「…………」 12月の声を聞けば、そこらじゅうでプレゼピオが見られたりして。 そこらでかわいらしい飾りが…ある筈だ。それは自分の国の話だが、どこも似たようなものだと思っていた。 そう、ミュンヘンでも変わりなく、…何度か行ったクリスマスマーケットでも…かなり楽しんできた、…筈だった。 「な、何あれ…」 ――――ぞくっ。 「(何でもいいけど、どうでもいいけど…こっちだけには来ないで…)」 サエナの身体は段々柱の影に。顔だけひょこっと覗かせてその通りを凝視。 通りには、藁の服のようなものを身に着けた…毛むくじゃらの怪物が2体。そして何故か聖人みたいな格好の人。 「…う…」 「あれ、サエナ。どうしたの?」 「っ…ぎゃあああああっ!!??」 「!??」 背後からのアルフォンスの声に驚き、すごい声で返事をしてしまう。 …と、ソレも気がついたようで…ゆら〜り、とこちらへ顔を向ける。 「や…こっち、来ないでっ!!!??」 箒を持ったまま、店先から飛び出して……とりあえず何処かに走り去るサエナ。 「え…サエ…」 がーん。 『こっちに来ないで』とアルフォンスは自分が言われたものかと勘違い。 「…ぼく。…何かしたっけ……」 そしてそこにはアルフォンスが残った。 「な、な…なんで町中にあんなのが…!?………」 未だに箒を持ったままのサエナ。ぜいぜいと息を切らす。 「はー…マリエン広場まで来ちゃったよぉ…。箒持ったま……ま!??」 顔を上げると、そこには『先ほど』サエナを驚かせた謎の生き物がたくさんいた。 「ひッ…!??」 ゆら〜り、ソレが近づいてくる。 もうなんだかワケ分からなくて、足も動かなくて。 「悪い子はいねえか!?」 「へっ?!」 「お前は悪い子か!?」 「え?は………」 もう、「なんで化け物が喋るの?」とかそんな考えはすっ飛ぶ。 「その子は悪くないですよ?」 「ほら、サエナ。自分で言わなきゃ」 「ア…。………わ、悪くない…と思う」 「思う!?」 「いええっ!!!わ、悪くないですっ!!い、いい子にしますッ…」 「そうか、じゃあ、よいクリスマスを」 「は…はあ……?」 にっこり。とその化け物(?)と一緒にいた聖人(?)らしい人はサエナに笑いかけ…小さい袋を手に置いた。 「…な、何?アレ…」 「クランプス」 「?」 「アレに驚いて走って行ったんでしょ?ちょっと驚いた。………サエナ、見るの初めて?」 「うん…」 「聖ニコラウスのお供でね。…ああやって各家庭を回るんだ」 「………こ、わかったぁ…」 思わず座り込むサエナに苦笑して手を貸しながら。 「まあ、ぼくも昔は怖かったけど」 「はー…」 「それ、お菓子」 先ほど、聖人らしき格好をした人がくれた袋。 「そうなんだー。ラッキー…かなぁ。でも怖かったし…」 「はは。……帰ろうか?」 「ん…」 「ねえ、ドイツって…サンタさんの後ろに…あんな化け物がいるんだね…すごい…」 「………その解釈ってどうなんだろう?」 「なんていうかイタリアは魔女なんだけど」 「…へえ」 ――――とりあえず、 とりあえず…。 「(ぼくのことで逃げたんじゃなくてよかった…)」 …と、今更ながら胸をなでおろすアルフォンスだった。 |
ドイツには!!ナマハゲがいるらしい。 先日、「秋田県ローカルヒーローサイト」を見て爆笑していたらこんな記事が。 ミュンヘンのソレの写真を見たがとても怖かった(泣)。 ナマハゲだって怖いのに!!こんなんが来たらマジ泣く。 …と思ってミュンヘン市をふらついてみたけど……そう言えば見かけなかった。 TOP |