ビアホール事件


「グレイシアのイメージカラーはピンクだな」

 薄暗い照明の筈なのに何故かそこだけ明るい気がする。



「「「…………」」」

 三人は同時に固まった。

 エドワードはソーセージにフォークをさしたまま、
 アルフォンスはオーダーしようとして手を挙げたまま、
 サエナはブレーツェルをくわえたまま…。

「!…う、しょっぱ…塩の集合体直撃ィ…」
「水、飲む?」
「そうじゃねえだろ…今は。…――――んで?なんで?」

 ここは行きつけのビアホール。
 三人が座っているこの席は『常連席』のような扱いになっていて、周りの客も知っている顔ばかりだ。
 テーブルに来て…『グレイシアが何とか』なんて言い出すのは一人しかいない。予告なく突然そんなことを言われれば、聞かされた方は固まるに決まっている。

「『柔らかい』『女性らしい』って言ったらピンクだろ!!」
「…へー。安直だな」
「はあ…」
「あ。シア姉のセーター、ピンク系だよね」
「こらこら、そういう話じゃない!こう、…内側からくる感じの…!」


「つーか…さ」
 フォークにさしたままのソーセージを口に運び、ばくっと食いついてから。

「何度も言うようだけどさ。…早く告白すれば?毎度毎度オレらに告白しても仕方ないだろ?」



「――――う。…そ、それができればお前らなんて相手にしてないわっ!!!」

「えー、酷い!おまわりさんっ。シア姉の事があるから相手してくれてるわけ!?」
「まあ、オレらなんて結局そんなもんだよな」
「………はあ」
 思いっきり被害者面する二人(アルフォンスはついていけない)。それはヒューズをからかっているだけなので、本気でそう思っているわけではない。
 しかし、正常な思考が出来なくなっているヒューズはそれをそのまま受け取る。
「おいおい!何、妙なこと…!!」


「じゃあ、慰謝料としてこのかごの中身の精算頼むな」
 にやり、笑うエドワード。
 ひょいっと挙げたその手にはブレーツェルが何個か入ったかご。
 テーブルに置かれたかごの中身(パンや菓子)は普通、『食べた分だけ』の精算になる。いらなければ手をつけなければいいという話なのだ。

「はあ?なんだその『慰謝料』って!?」

「オレとアルフォンスの夜食。今晩、資料整理で遅くなりそうなんだよねー」
「え、エドワードさ…ッ?」
 口を挟もうとするアルフォンスを制し、


「いいよな?優しいおまわりさんっ?グレイシアさんによろしく言っておくからさ」


「…………う」





「あ、おまわりさんっ」

 ビアホールを出る直前、サエナは思いついたようにヒューズの袖を引っ張った。
「なんだよ。…ったく、お前らのテーブルにはもう行かんからなっ…いつもいつも俺におごらせてばかりいて…ッ」
「ピンクには茶色が似合うんだよー」
「はあ?」
「ココアとイチゴってかわいいでしょ?だからヒューズさんも茶色で決めてみれば?」





 ・後日・

「まあ、おまわりさん。……今日は制服じゃないんですね」
「ああ。非番でな。……いい、天気だな、グレイシア」
「?…ええ」



「ああ見えて素直なんだよな」
「うん、わざわざ買ってきたのかな」
「茶色だ…」


 こそこそと扉の向こうからガラス越しにそれを見守る(?)三人の姿があった。






映画のヒューズさん、こんなんじゃないですけどね(笑)。

『君色』でサエナよりグレイシアさんにしようってのは前から決めてました。
服の色合いもピンクに近いグレイシアさん。

エドたちはこうしておまわりさんに毎度毎度たかっていたのですね(笑)。
長編でもたかってました。

茶色とピンクの組み合わせはかわいいと思います。
ピンクと青もいいかな。黒とか…結局なんでもいいのか?(笑)

2006.02.11



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