ネームプレート錬金術対決
「流石、工業都市…だな、こんなんまで作ってんか」 「え?工業都市は関係ないでしょう?」 いつもの朝。アルフォンスはいつものようにカバンを用意する。 「でも、……芸術、工業…何をとっても一番ですよ、だからここでロケット作ってるんです。材料も調達しやすいし、精密機械に詳しい人はいるし」 言いながら、今日使うものをカバンに詰めていく。 「こんなん、って…?」 「おはよ、サエナ。……ああ、これだよ」 ちゃり。 カバンにつけた小さいプレート。 「あ〜!ネームプレート。へえ、自分の名前入れてくれるならいいな〜…」 「欲しいか?そんなん」 「だって迷子にならないじゃない」 「…迷子になっても自分の名前くらい言えるだろ」 「違うよエド!荷物が迷子にならないでしょって話!」 「まあ、銀時計にも名前彫ってあったからな……。よっし!オレが作ってやるか!」 手を打ち鳴らそうとして――――。 「と!………まあ、それは置いといて、だな」 「…今、何やろうとした?」 「気にすんな」 「…銅板彫るならそこにありますよ、この前余ったのが」 机の上には何枚かの板。 確かに中途半端な大きさばかりなのでもう何にも使えない。 「よし、アルフォンス」 にやり、と笑ってから。 「どっちがいいのができるか対決しないか?」 「は?」 「だーかーらー!いいものができるか対決だよ!工業と芸術が盛んなんだろ?これくらいうまくいかないとダメじゃねえの?」 「は……はあ…」 関係あるんだろうか、と首を傾げる。 「じゃ、アルフォンス、これな」 半強制的に銅版の切れ端を押し付けるエドワード。 受け取るしかないアルフォンス。 「……じゃあ、休み時間にでも作ってくるよ」 なんとなく納得がいかないような、妙な笑み。 「でも、ま。負けるわけにもいかないけど」 「お、言ったな、アルフォンス。…オレのセンスにびっくりするぞ」 「あはは、…いってらっしゃい…」 アルフォンス・ハイデリヒ。 彼は勝負を持ちかけられたら、受けて立つ…という性格じゃない。 でも、「工業が盛んなんだろ?」とか、「どっちがいいのができるか」とか言われたら受けないわけにもいかない。…それに「欲しい」と言っている人が約一名。 そんなこんなでアルフォンスは昼休みを返上して銅板に向かっていた。 切る為の機械や彫る装置もここにはある。 「…さて、ネームプレートにデザインも何もないと思うけど……。とりあえずサエナの………あれ…?」 手のひらに指でいくつかのスペルを書きながら…。 一方、エドワード・エルリック。 言い出した本人なのでやる気はある。それに彼は勝負を持ちかけられたら受けて立つタイプだ(今回は持ちかけた方だが)。 頭の中にはいろいろなデザインらしきものが錬成されつつあった。 「ふう…。構築式なんて関係ないんだけどな。そっちから考えることに慣れちまってるから仕方ないけど」 「お帰りなさーい!」 「ただいま。約束の出来たよ」 「こっちも」 「(わ。ホントに作ってきたんだ…二人ともまじめなんだね…)」 まさか本当にやるとは思っていなかったサエナ。しかも開口一番これが来るとは思わなかった。 さて、リビングのテーブルには裏っ返した状態のネームプレートが2枚。 「大きさは同じくらいなんだね」 「そうだね」 「あわせたわけじゃないけどな」 「じゃあ…。いっせーのせ!でひっくり返すとか?」 「それでもいいか。よし、アルフォンス…見てろよ。国家錬金術師の腕前なめてもらっちゃ困るぜ」 へへへと笑うエドワード。 「そんな、エドワードさん…錬金術は関係ないのに…」 苦笑するしかないアルフォンス。 「(楽しそうだな〜)」 なんとなく微笑ましいなあ…と思っているサエナ。 どん。 「ぶっ…なにこれ〜!!エド!!」 「なんだよ!かっこいいだろ〜!?」 「…………」 「な、アルフォンス、カッコいいと思わないか?」 しかし、アルフォンスはそれどころじゃない。 ――――ど、どうしよう。 はっきり言って………。エドワードさんの趣味が理解できない…。これ、ネームプレートなんだろ!? 「なんで、ネームプレートにドクロなの!?」 「だから、かっこいいからだよ。独創性があっていいだろ」 「……え〜だったら錬成陣ってやつにしてよ」 「錬金術使えないんだろ!?」 「それとこれとは違うじゃない〜!!」 「………はあ」 「アルのは普通だね」 「まあ、…名前が彫ってあるのが分からないとね…」 「なんだよそれ。…オレに言ってるのか?」 「違いますよ」 「じゃあ、この二つはもーらい♪」 「…あ?」 「え?ああ、どうぞ?」 「…なんだ、文句言うだけ言ってもらうのかよ。結局欲しかったんじゃねえの?」 にやにや笑いながら手を振る。 「二人が作ったんだもん、欲しいよ?どっちも大事」 にこっと、笑う。 その笑顔。 「あ…」
「別なのに…似たようなこと言いやがってさ」 笑って。 「でもま、書いてある文字は『エルリック』だけどな」 「『ハイデリヒ』だけどね」 「…う…うん」 「ホントはさ、『ルドフィーガ』で作ろうとしたけど、…イタリア語表記がよく分からなかったんだよね」 ――――そのままなんだけど。 サエナは心の中でツッコんでおいた。 そんなこんなでサエナのカバンには『自分の名札』はついていない。 |
「Heiderich」のネームプレートなら作りました。というか…作ってもらってます(笑)。 お世話になっている動物病院の先生の知り合いが、ストラップくらいの大きさのネームプレート作ってるんで。 なんかエドが壊れてる…(笑)。 さて、50のお題開始です。 ギャグ風味で行きつつ、シリアスに行きつつ…まあとりあえず全部出来たらいいなあ。 2005.10.30 TOP |