‡エスナのピンチ第二弾
〜夏バテ注意報〜
宿屋のベットに伏せて心中愚痴をはきながらロクスは天上を見上げていた。心の何処かで柔らかな光が現れる事を祈って。
「来ない。。。。か。」
ふと自分から漏れた言葉に驚く。此間は風邪を引いて今度は夏ばてだ。いくらエスナのアルカヤ北部から南部への急降下任務の所為だとは言え、自分に何時までも動向する事はできなだろう。ましては勇者は他にも沢山いる訳であるからして。。。。
「そんな事僕に頼まなくっても勇者なら他にもいるんだろう?」
前にそう言った時、彼女が困った顔をして否定したのを思い出す。けれど、それはやはり真実で、今更だけれど、歯がゆく思う自分がいる。
窓辺を叩く音。
もしかしたら。。。。
それでも鳥だろうと自分に思わせて、業と窓に背を向ける。
コンコンコンッ
きゃっ
ドサドサーーーーーーーーーーー!!!! |
流石に鳥にしては大き過ぎる音を立てられてロクスは窓を開けた。蒸し暑い風が流れ込む中下を覗くと案の定。。
「何やってるんだ?」
業と呆れたような声で聞いて。
「あっロクス〜。夏バテだと聞いたので、お見舞いに来たんですけど。。。。」
「ドジって木から落ちた訳だ。」
「うっ。。。。。。はい。。。。」
反論する事もできずに、エスナは照れたようにロクスを見上げた。深緑の芝生がエスナの薄翠のワンピースと良く合って眩しいくらいに可愛い。
「まったく。。。。入れよ。」
業とため息を付いてそう言うと嬉しそうに微笑んで翼を広げる彼女の姿が目に入る。
「落ちるぐらいなら飛べば良いだろう。余計な手間は掛けさせるな。君は一応見舞いに来たんじゃないのか?」
「そんな急に飛ぶのは無理ですよ。」
ベットの横の椅子にちょこんと座って首を傾げるエスナ。と突然思い出したように手をパンッと叩くと、ポーチを何やらごそごそと漁りだした。
「えっとですねー。ロクス、実は薬を持って来たんです〜。」
そう言って小さな布袋を取り出す。見た目からして天界から得たものではないと言う事は解るが。。。それを見た途端何故かロクスは嫌な予感がしたのだった。
「なんだ?それは。」
思いっきり訝しんで。
「だから薬ですってば。天界には夏ばて用の薬がなかったので、地上界で手に入れたんです。」
「どうやって?」
金銭概念がまったくないエスナが買ったとは思えない。入手方法を気にするのは言わば当然の事であろう。
「クライヴから頂いたんです。あっクライヴと言うのは他の勇者です。」
ピキッ。何故か無償に”他の勇者”と言う言葉に頭が来て。けれど取り合えずは暑さの所為だろうと思い込む。
「僕はそんな得体の知れないような物を腹に入れるつもりはないな。」
「でも、これはゾンビパウダーと言ってクライヴ推薦の薬なんですよ。絶対に効くと思います。」
それが更にロクスのイライラメーターをアップさせる事など夢にも思わず、エスナは懸命に説明をする。
ふーん。僕の言う事は一々疑うくせに、その勇者の事はあっさり信用する訳だ。脳裏にそんな事がよぎってから、ロクスはふと悪戯な光を瞳に燈した。
「僕が夏バテになったのは誰の所為か解ってるよな?エスナ?」
「うっ。。。。私ですか。。。?」
背中に悪寒を感じて、表情を引き攣らせながらも答えるエスナ。ロクスがニヤリと笑ったのを見て、更に鳥肌をたてる。
「それじゃあ、責任とってくれるな?」
「。。。。。。。。。」
訳もなくさーっと血の気が引くエスナ
「夏バテって言うのは、薬よりも良い治し方があるんだ。」
そう言うな否やロクスは行き成りエスナの腕を引いてベットに押し倒した。視界に入るロクスの顔と天井を丸々と目を見開いて見詰めるエスナ。そんな姿には構わずロクスは暴れないように軽く両腕を押さえつけると状況を把握する暇も与えず激しい口付けを落とした。
「。。。。。。。。。。。っん。なっ何するんですか!!??ロクス!」
半ば息を切らせてまじまじとロクスの顔を見詰める。。が真っ赤なエスナとは対照的にロクスは相変わらず満面笑みである。
「これが尤も良い夏バテ解消法だぞ。知らなかったのか?」(僕流のだがな。)
そう言って再び近づいてくる顔に思いっきり抵抗するエスナ。が押さえ込まれた手はびくりともしない。
「絶対嘘です〜!!!」
辛うじてそう叫ぶと、まるでその語彙を待っていたかのようにロクスは悪戯っぽく微笑した。
「ほぉ。。。そのクライヴとかいう勇者の事は信じるくせに、僕の言う事は信じられないと言うんだな?」
「。。。。。うっ。。。。そう言う訳じゃありませんけど。。。。。。」
案の定否定できずに口を噤んだエスナに内心苦笑しながら、それでもロクスは行為を止めようとはせず、結局その日、エスナはたっぷりとロクスの”夏ばて解消”に付き合わされてしまったと言う。。。。
その効果あって(?)ロクスの夏ばてはすっかり解消されたが、等のエスナはすっかりの夏ばて恐怖症となってしまい、以後、勇者の夏バテ見舞いには決して行かなかったのはまた別のお話。(笑)
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