‡エスナピンチ
〜聖都の里程は危険な香り(爆笑)編〜
やっぱりこうなったか。。。。。嬉しそうに焚き火を見詰めているエスナに目をやりながら、ロクスはため息をついた。
まぁ。。。。予想はついていたが。。。案の定今日は野宿である。聖都へと帰る途中。天竜復活による被害が過大であったこの辺は村の再建が遅れていた。人々の恐怖心がそうさせる部分もあるのだろう。草木だけが鬱葱と茂っている。
「やっぱり野宿になりましたね。」
何が嬉しいのかは解らないがエスナは微笑んでいる。
「かなり嬉しそうだな。」
がどうやらロクスの機嫌は悪いらしい。流石に勇者経験もあり、野宿には慣れてはいたが、好きと言う訳ではない。その上、ロクスには他の事情もあるらしい。
(警戒心のない奴。)
相変わらず足を揺らしながら頬杖をついて焚き火を眺めるエスナ。恐らくは。。。いや絶対ロクスの心情には気づいていないだろう。
「あっ。水くんで来ますねー。」
突然ぱっと顔を上げるとロクスが止めるのも聞かず森の中へと消えてしまう。
「大丈夫なんだろうな。。」
不安を抱きながらも、ロクスはほっと息をついた。エスナは無防備すぎると時々思う。いや、自分の場合は良いのだが、他の勇者の前でもこんな感じだったのだろうか。などと今ではいらぬ心配をしてみたりする。某妖精がこの場にいたら、
「ロクス様以外は理性のある勇者様ばかりですから大丈夫ですよぉ〜」
などと言う事間違いない。だだっ広い草原で二人っきりと言うのは、ロクスにとっては美味しい状況(爆)な筈なのだが、相手がエスナだと困るらしい。
「僕らしくもない。。。。」
そんな事を呟きながら。まぁ、大事にしていると言う証拠なのだろうが。。。
「よいしょっ。。。。」
後ろを振り返ると手桶を両手で持ちながら危なっかしくエスナが歩いてくる。
「転ぶなよ。」
そう言いながらエスナに歩み寄る。
「あっ。はい、大丈夫です。。。。っきゃぁ!!???」
がどうやら遅かったらしい。水をかぶってエスナはずぶ濡れである。
「やれやれ。。。。。ほら、これに着替えとけ。風邪ひくぞ。もう天使じゃないんだから。」
そう言って自分の法衣をかけてやる。それを受け取ったものの、エスナは何やら訝しげにロクスを見上げる。
「なんだ?手伝ってほしいのか?」
少し意地悪く笑って真赤になって否定するエスナを見詰める。視線に敏感に反応しながらも濡れたまま過ごす訳には行かず、エスナは仕方なしに重くなった服を脱ぎ捨てた。闇が募る静寂の中で衣服の擦れる音だけが微かに、しかしはっきりと聞こえる。
「。。。。エスナ。。。。」
急に名前を呼ばれて過敏な反応を示すエスナ。何故か躰が張る
「こっちに来いよ。」
「。。。。ロクス、何かする気ですね?」
流石に警戒心を抱く。
「僕が信用できないのか?」
そう言えばエスナが否定できないことを知っているから。そうして、案の定渋々自分の元に来たエスナの手を思いっきり引く。
「っ。。。きゃあ!ロクス、ずるいです!何もしないって言いました。」
すっぽりとロクスの腕に包まれながら頬を膨らませて抗議する姿はなんとも可愛らしい。
「僕は何もしないとは一言も言ってないぞ。」
笑いながらそう言ってエスナを抱きしめる腕に力を入れる。
「。。。きゃっ。ロクス??」
「君はもう少し警戒する事を学んだ方が良いな。」
「どういう意味。。。。っん。。。。」
言い終わらぬ内にロクスは既にエスナに口付けをしていた。じたばたと抵抗を試みるエスナを軽く押さえながら、唇が離れないように更に深くキスを落とす。
「っ。。。ロクスっ。。。っん。。。」
エスナがいなかった一年を埋めるかのように
脳裏に確かにあってそれでも追憶できなかった光の記憶
そして今、自分の元に帰ってきた光をもう二度と手放さないように
深く、激しく、続けられる口付け |
次第にエスナから抵抗が薄れて行き、握り締めていた法衣が緩められ。。。。
ロクスは優しくその露になった柔肌に触れよう。。。。。。。とした、その時
ひゅるるるるるる〜〜〜〜〜〜〜〜〜
どーーーーーーーーーーーーーーん!!!!! |
「ろぉ〜くぅ〜すぅ〜さぁ〜まぁ〜!!!!!!(怒)」
ボス敵も一撃抹殺のカンガルーパンチ直撃にも関らず、一命を取り留めたロクスが見たのは某妖精フロリンダ(ロクス俗称ペンギン娘)だった。
「天使様にお別れも言えずにさよならするなんて嫌だったから来て見たら、おじゃまだったみたいだねー。フロリン。」
ひょこっと後ろからリリィが顔を出して、面白そうに笑っている。
「二人とも、来てくれたんですね。」
やっと我を取り戻したエスナは未だ蒸気する顔を抑えて起き上がった。
「天使様ぁ〜。。。じゃなかった、エスナ様、フロリンとーーーーーーっても会いたかったですぅ〜。」
その後再開の喜びに浸り、しばらく雑談を交わすエスナたちはロクスの存在をすっかり忘れていた。
「おい!ペンギン娘、何時まで此処にいるつもりなんだ、用が済んだらさっさと帰れ。」
不機嫌度MAXのロクスに言われてそろそろ潮時かと思いリリィはフロリンダにこっそりと耳打ちをする。
「それでは、エスナ様ぁ、私達はそろそろ行きますぅ。エスナ様の幸せ、いつでも願っていることを忘れないでくださいねー。」
(さっさと帰れ)と思っているロクスにくるりと視線をやると、
「草むらでやるのは、健康に悪いので止めて下さい〜、ロクス様ぁ。次はカンガルーぱんちじゃ済みませんよぉ〜。」
とペンギン姿では想像もできない程の気迫で忠告した後リリィと共に天空に消えて行った。
(そう言う問題なのか???と言うより何故そんな事知っている!???)
笑顔で手を振るエスナをよそにロクスは何時までも不可解な謎に頭を悩ませるのであった。
<終>
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