最終話:光の在り処〜二人同時に見た夢―
涙が零れる。 嫌だと言う様に首を振る。 『もう…苦しませないで』と唇が動く。 「目を開けなさい、エスナ…よく分かりました」 ――――がしゃん。 重い鎖(のようなもの)がまた手の動きで揺らぐ。 「?……。 ロクス」 初めて見えたのは、鎖のようなもの。 暫くしてそれに自分がそれに繋がれていることを知る。上からいくつか延びてる鎖。恐らく建物の中なのだろう、けれど、真っ暗の中に大天使とその鎖しか見えなかった。 「あ…?」 「分かりますか?エスナ」 「よく、頑張ったな」 「ミカ…エル様……ラファ …エ…ル…様?」 自由の利かない目をゆっくり動かしながら。 ラファエルがその鎖に手を当て、何か口の中で唱えると直ぐに戒めが解かれる。鎖ではなくて魔法の結界のようなもの。 均衡を失った身体はそのまま倒れたが、床に着くより先にミカエルが抱きとめた。 「ほら、しっかりしろ」 「!あ、…動かなくて、すみませ…」 「! あれ?ロクス…?」 名前を呼ぶとまた涙が零れてくる。 「私、何か酷いことを……?」 今まで怖いもの、それと同時に幸せなものを見せられていた。 今、目を開けたらその記憶が飛んでしまったけれど。 痛くてどうしようもなくて。痛いけれど、また、幸せな記憶もあった。 両の翼を掴んで、うずくまる。 「?……まだ、翼はあるのに…?」 あった筈の記憶、その中でものすごく苦しんだ気がする。本当の意味で一人になること。人を悲しませたこと。 「エスナ、今見たあなたの夢は……」 「夢…だと?」 気がつくと頬が濡れていた。 折角手に入れたものを自分の所為で無くしてしまった夢。いや、そんなに簡単なものじゃない。本当に怖いと感じた夢。 ここ数ヶ月の曖昧な記憶の中で、確かに掴んだ大事なものがまた消えて…戻ってこなくなる。 「こんなに難しいことなのか…?」 何かに傍にいてもらうってことが。 「夢ですが、嘘ではありません」 ラファエルはその涙を拭ってやりながら言った。 「あなたが地上に降りたいと言っていることの重要さです。…と言っても何を言われているか分からないですね」 「ラファエル様、私は……約束したんです。笑っていこうと」 自分でもよくわからないのにラファエルに詰め寄って。 「いつ?」 「いつ……いつでもありませんっ!ずっと、ずっと前からッ…。そうに…ロクスと」 微笑んで頭に手を置いた。 「ええ。よく、頑張りました。エスナ。 あの中で、自分を選んでしまえば私はあなたを地上には降ろしません。…でも、他の幸せを選んで、命を……」 「………?」 今までの夢の記憶がないエスナは分からずに首を傾げた。消滅を選んだことも覚えてなかったのだ。 「そうだな、あの勇者もよくやったと言えるだろう」 「え、ミカエル様?勇者って?」 「エスナ、想うあまりにその選択を間違える者もいます。そう堕ちた者も多いのです。ですから、天使を地上に降ろすのはいけない事、とされています」 「……………」 「でも、あなたなら大丈夫ですね。エスナ」 「え、大丈夫、って…」 「ああ、降りて確かめて来い。いや、戻って来るな。…試すようなことをして悪かったな。勇者ロクスに俺のエスナを取られてしまうのは少々…面白くないが。ま、仕方ないか」 くしゃり、と髪を撫でて。 「!」 「ふふ、ミカエル。……では、行きなさい、そして、自分の想いを」 「!? あ、……ありがとうございます!!」 「あの夢は必ずしも夢じゃない。か。良かったのか?エスナを地上に降ろして。あれは未来だろう?」 ラファエルは微笑んでそれに言葉を返した。 「翼の血は私が封印しました。もう、あの子を苦しませることはないでしょう。……1000年前…ヴァスティールの異変に気が付いていれば…私は彼を救うことが出来たのです…きっと」 「……それをしたくないと、かばったんだったな」 「後は、エスナの勇者に任せます。あの子に手を差し伸べられるか…。翼を消してあげられるか…」 ラファエルはそこまで言うと目を閉じた。 「ただ…」 あの夢をエスナと勇者に見せた理由なんて、彼らを試していたと言う前に自分の気持ちのせいなのかもしれないと。
「あなたの本当の…声を聞かせてください………ロクス」
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というわけで回想でした。全部。最悪だな。夢オチだよ……。 ここから『真実』へとつながります。 長編でロクスの記憶を曖昧にしてたからきっと夢ん中ではエスナのこと覚えてるだろうとか、 なんだか十字架あげてたからそれを活用しようとか、そういやエスナの翼ってロクスが癒しの手で消したんだったとか。 偶然は必然なりでしたね(謎)。 というわけで、かなり行き当たりばったりでした。 だってさ〜天竜の血受けちゃったことだしなにかしようかな〜って思っただけなんです。 EDで騒がれている「あの血」とはまた別物なのでは……。とかそんな難しいこと考えません。 このお話でとばっちり食ったのはロクスでしょう。…記憶がないのにその記憶で苦しむ人。 でも、ロクスも出さないと心情かけないしさ。 読んでくださってありがとうございました〜。感想とかありましたら是非メールくださいね!! TOP |