第11話:復活の儀式(後編)悪魔に翻弄された女性―



 こんな時だけど。二人の声が耳に届いてくる。
 『お姉ちゃんはね…』
 平和なときのことを話してくれたアイリーン。セレニスが大好きだと言っていた。
 『セレニスは…俺が…』
 自分の命を捨てても、救いたい、謝りたいと思っていたフェイン。


 スローモーションのように金髪が風に揺れて。
「な…」
 ロクスでさえ、驚いている。あまりにあっけなかった。あれで人を殺せるほどの力はなかった筈だから。

「……………終わっ…?」

 ――ふん、人間はこれだから使えん――

 その言葉に弾かれたようにセレニスに目をやると、どす黒いの光のようなものに包まれている。
「天竜が、…セレニスを殺した…?」

 ――拠り代を一人殺したくらいでいい気になるな…!!――

 地から響いてくる悪魔の声。
 空間が震えている。びりびりと肌を何かが駆け抜けていく。

「いやだ…やめて!」
 頭を抱えて、首を横に振る。
「やめて下さい…!!拠り代なんてッ」
 エンディミオンに重なった…ベルゼバブの声。

 ――天使ども!天竜が蘇った今…もはや何をしても無駄だ!!――


 不気味な光に包まれ、宙に浮かんでいたセレニスの身体は悪魔の戒めから解かれ、静かに祭壇に舞い降りてきた。それと同時にベルゼバブの気配もなくなる。もう、用なしと感じたからだろう。
「セレニス?…こんなんじゃ…そうじゃなくて……フェインとアイリーンに…ッ」
 駆け寄って、その髪に、頬に触れて。
「…本気で戦わなかったな」
 ぽつりと言った言葉。
「えっ?ロクス」

「……………」
 頬に触れていた手が、つかまれる。驚いてそちらを見ると、青い瞳と目が合う。

「アイリーン…?」
「私は…」

 アイリーンじゃない!

「私…とても怖い夢を見たの……も、朝よね…よかった。……今日から私……フェインの……」
 セレニスは笑顔なのに、涙がこぼれて。
「うれしい…」
「セレニス」
「…アイリーンの…天使様………あの子は元気…?」
「あ…!は、はい!」
「…アイリーンの声が聞こえるの。お姉ちゃん、お姉ちゃんって……天使様…。あの子はまだ笑ってくれてるの…?」
「元気です!!…だから…待って……声を聞いてあげて…!!お願い……まだ…ッ」

 一瞬、微笑んで。

「あり がとう…」
「セレ……ニス…?」
 つかまれた手がするりと落ちた。
「いや…。いやだ…!ダメです…まだ、ダメなんですっ…!!お願いです!!」
 がたがたと震えが止まらない。きっとこれからもっと辛いことが起こるだろうに。
 治癒の魔法も追いつかない。いや、追いつかないのではなく、一度でも悪魔に支配された身体には天使の魔法は効かないのだろう。

「…エスナ。こうなる事位はわかっていた筈だろ」
「…………」
「天使っていうものは博愛な代わりに、悪には容赦ないって聞いたけどな…。悪に染まった人間を殺める事も」
 言葉とは裏腹に、手を差し伸べるロクス。暫くそれを見ているだけだったが、ずっとその手はこちらを向いている。だから、掴んでふらふらと立ち上がった。
「キレイ事ですか? 例え堕天しても、幽閉されても…大事な人を守りたいって思うのは。それが敵でも……」



「エスナ…どうしてっ!!」
 思い切り翼をつかんでアイリーンは叫んだ。
「……お姉ちゃんッ…私…」
「…アイ…リーン……ごめんなさい…」

「わかってるよ…。お姉ちゃん…笑ったのね。…最後に笑えたんだよね」
「…………ええ」
「…ありがとう…って」

 残骸なった、祭壇。
 悪魔に翻弄された女性が今もそこに眠っている。





 復活の儀式2です。ヘタに分けてしまってすみません〜。
戦い中心のイベントって難しいです。戦ってるのって数行でしたね〜(爆)。
しかもこのイベントいろんな勇者でやったから覚えてないんですよね。
まず勇者でセレニスを殺したくなかったのです。

必殺技って「聖なるなんとやらが〜」だったね。

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