第7話:聖都を眺める―



 約束――。それは数日前になる。

「ね、もう一通り周ったの?」
 こんな何気ない日常会話。
「ん、あー…。そ、ですね。大体は分かるようになりましたよ?」
 目線を上に上げて、少し考えた仕草をした後。

「んじゃあさ、どこが楽しかった?っていうか、どこが好き?」
「ん〜……エクレシア教国!」
 アイリーンは『言うと思った』という顔をして。
「わっかりやすー。 ああ、僧侶様の勇者がいるのよね。…やっぱそうかあ。大聖堂とか好きなんでしょ。エスナらしー」
 気がつくと他の勇者にも『エスナらしいな』とよく言われている。分かりやすい性格と言うことか。
「でも、私もそういうの好きよ。人ごみは苦手だけど市場とか、活気あるとこ。…聖堂とかも…わりと好きかな」
「今度、行きましょう?歴史を知る分にもいいかもしれません」
「えっ?いいの!?…うん、じゃあそっちに行くときあったらね!!絶対よエスナ!」
 と、まあこんな感じだった。


 約束の日。
「う、わあ」
 初めて見る聖都。1000年続いた都。
 長い年月を経て、多少修復してあるとはいえ、建物もそのままの町並み。重さを感じる―――とアイリーンは思った。重いと言っても勿論悪い意味ではない。
 遠くで聞こえる教会の鐘の音も、噴水で水浴びをする鳩も、天使や預言者、英雄たちの白い像も。

「すごい、きれい!やっぱ歴史があるとこっていいよね」
 アイリーンはあたりを見回しながら微笑んだ。
「…まだ、平和だね。よかった」
「そうですね…」
「ここに侵攻してくる前に…どうにかしようね」
「はい!ありがとう、アイリーン」
「なに、気持ち悪いなぁ…。もう、いいんだって! ……あ、ねえ、あっちってなにかお店があるのかな?」
 返事も聞かずに駆け出す。アイリーンが言っていた視線の先は市場だった。


「ほら、見て!」
 アイリーンに追いつくともう、露店の前で座り込んでいた。週一度のメルカートだろうか、簡易的な建物がずらりと並んでいる。そこのアクセサリー商の露店は台に並びきれなかった装飾品が石畳に布を敷いてある状態で無造作に並べられていた。
 エスナも並んでそれを眺める。
 天界で入手できるものと比べると、正直拙い作りだと感じてしまうが、それがとても優しい、と感じた。
 また、中には魔法補助関係のものもあるのだろうか。微かな力を感じるアイテムもある。

「かわいいでしょー!」
「ホント!…あ。これも」
 二人して座り込んで品定め。
「エスナ、そういうの好きだね〜」
「えー、なんですか、アイリーンもですよ」
 天使と勇者だということを忘れても、いいと思う。
 二人はころころと笑いながら、自分の気に入った意匠の物を胸や首に当てて、備え付けの少し曇った鏡に映す。鏡は曇っているどころが歪んでいるのだろう。少し不恰好に映る自分に二人は苦笑した。
「なにこれ、変な鏡ー!」
「あはは、これじゃよくわかりませんね」

「私、このネックレス欲しいな!買っちゃおうかな……ね、いいと思うでしょ?」
「はい。かわいいです」
 頷く。

 それからあるものに目が止まる。
「あ。銀の…」
「欲しいの?そのブレスレット」
「………たまにはこういうのもいいかもしれない」
「へ?何が。………でも、それ―――(っと…)」
 エスナの手の中のブレスレット。それについて言いたいことがあったのだが、言いかけてやめた。
「おじさん!これくださいっ!」
 と、気がつかなかった振りして。
「じゃあ、私も買おうっ」


 その場所から街並みを眺めて。
「ね、エスナ」
「はい?」
「平和になったらまた来ようね。また遊ぼうね」
「……はい!」

 エスナが…帰ったあと。アイリーンはあの銀のブレスレットを思い出して笑った。
「…まさか。あれ、自分でして来ないでしょうね……女物じゃないわよ…あれ」
 とか、妙な心配をしながら。




攻略本買ってから『聖都を眺める』を見てなかったことに気がついた私。
(ロクスの話に何故か…アイリーンの話が。お得ですね(謎))
見られなくって、くやしいので想像で書きました。攻略本でアイリーンがアクセサリーを選んでるCGみて。かわいい〜と。

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