第15話:力の意味―



 どうして…こんなことになったんだろう。
 あるところに座って空を見上げていた。
「………」
 風が髪を揺らしていく。自分の羽を1つ取ると、風に流した。
 遥か下の聖都の美しい町並み。ここは、聖堂の屋根の上。
「副教皇様は…本気で出て行けって言ってるわけじゃない…」


 エスナは目を閉じて昨日の事を思い出した。
 まだ、耳に声が残っている。二人の声。みんな自分は見ていた。みんな聞いていた。賭けも、ロクスが喋らされるところも。全部。…でも、何も出来なかった。いつだって見ているだけ。それは任務をやる前から分かっていたのに。
「そういえばロクスを初めて訪ねて来たときもこんな様な事…」
 あのときより胸が痛い。あの時は、まだ客観的だったんだ。
「ロクス…」
 あのときよりロクスのことが分かってきて。自分がいかに力がないと前にも増して思えてきて。地上に必要以上介入してはいけない天使。
「…こんなんじゃ……」
 叫んでいる声が響く。『好きでここに居たんじゃない!』『誰かこんな力望むものか!』
「そうじゃない…あなたの力はあなただからあることなのに…」
 あなたじゃなきゃない力だと思う。
「………」
 ホントに言いたいことは…。
「(ロクス…)」
 まだ、辛くて、寂しい声が耳に響く。

 私は何が言いたいのだろう、何をロクスに伝えたいのだろう。
「わからない…」
 ふわりと屋根から下りて、近くの窓から聖堂の中に入った。
 姿を消したままだから誰にも見えない筈。案の定、すれ違っても誰も気がつかない。
「(やけに人がいる…ミサでもあったのかな)」

 こう見ると、まだ、聖都は平和だ。
 いや、今の悪夢も誰も気がついていないだけ。確実に地上は血に塗れはじめている。
「(本当の平和はいつ来るんだろう…)」
 聖堂を見上げる。吹き抜けで、気が遠いほど高い天井。
 クーポラには天界を示したフレスコ画。その真下に窓がずらりと並べられ、円を描いている。時間によって光が移動していくように。
「…あ」
 きょろきょろ見回していると、とある老人が目に止まった。杖がなくなってしまって歩き出せないような動きだ。
 また少し視線をずらすと老人の杖らしきものが転がっている。
「よし」
 姿を現して。

「おじいさん。私につかまってください。それと杖、どうぞ」
「ああ、ありがとう」
 差し出された手を探す。少し目が悪いらしい。エスナは「触れますね」と声をかけてから自分から老人の手を引いた。それからゆっくり歩き出す。
「ミサ…ですか?」
「いいえ、…この都も安全とは限らない。…いつ攻めてくるかとも。だからこうやって集まってしまう…祈るために」
「(帝国が…)」
「私には何の力もない。…だから祈ることしか出来ないのだよ。笑ってしまう話だがね…好きな土地を守ることも出来ない」
「…………」
「あんたはこの聖堂が好きかい?」
 突然の質問。
「え?…ええ。…好きですよ。礼拝堂に入ると身がしまる気がして、空気がぴんとしてて…でも優しくて」
「…でも、その中の人物はどうだ?」
「……中の…?」

 老人はため息をついた。
「教皇候補のあの子も小さいときから寂しそうな目をしていた」
「!…ロ…(っと。名前出したらまずいかも)その方をご存じなのですか?」
「いいや、話したことはないがね。…私は昔からここに来ているから姿は知っている。銀色の髪で紫色の瞳の可愛い子だ」
「(そういえば私、なにも知らないんだ…)」
「小さい時に親から…故郷から離れて…」
「? 猊下はこの都出身じゃないのですか?」
「エクレシアの全土から探していたんだ。この辺の出身じゃない。…ずっと会えないくらい遠いんだ。…
あんな幼いときから「教皇」などと呼ばれて…」
「(そうか…そうよね。……誰にも頼れなかったんだ…)」
 俯くくエスナに、老人は口を開きなおした。

「…………。それが正解かも知れんよ」
「どういう…!なにが…正解?」
 老人はエスナの手を放して、
「いつかはこの都に縛られる運命にある教皇なんてかわいそうじゃないか」
「……ロクスは」
 老人の言っていることがわからない。
 そんな顔のエスナをじっと見据え、ほっほ、と笑った。

「………私、わからなくって。ロクスが戦ってくれているのに、自分が…迷ってて…。!あ、いえ。すみません…忘れてください…」

「あんたにはあんたしかできないことがある。……それにこの土地を守る力がある。…天使様、未来の教皇に初代教皇の影を重ねるわけじゃないが、見守ってくれないか。…頼むことしか出来ない老いぼれからのお願いだ」
「!? お、じいさんっ……私が…」
 にっこりと笑って。窓を指した。
 つい、と窓の外を鳩が通過して一瞬影が出来る。
「翼が見える」
「!!」
 慌てて自分の背を見る…が、翼は隠したまま。

「目が悪くなると、他の感覚が優れるものだ。…さ、行きなさい。あんたの勇者が待っている筈だ」
 エスナはにっこり笑って。

「……はい。おじいさん、ロクスは大丈夫です」




なんだか、わかんないうちにできました。書いてる本人がわかりません。はあ。
石のことより力のことか、エスナさん(入れられなかっただけよ。おじーさんに言うわけにはいかんだろう)。
エスナ、見知らぬ人に何言ってるんだ…正体見破られてるし(爆)
なんだか……ストーリーはずしてません??

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