第5話:受難…?―



 
またか。ロクスは肩を落とした。

 自分の後ろには『バカ正直』を絵に描いたような娘が立っている。
 正直――という言葉は普通は褒め言葉だろうが『バカ』がついているので少なくても褒めてはいないつもりだ。
 ついて来るな。
 そう言っても意味ないだろうな、思いつつもロクスはその娘に振り向く。

「今日は翼ついてないんだな」
「酒場に行くんですね?今日は町に着きましたし」
 話がかみ合ってない。
「おい、質問の答えになってないぞ」
「ええ、だから、こうやって人の服装でロクスについていこうかと」
 話を勝手に飛躍させている。

「だって、ロクスって放っておくとず〜っと飲んでいるんですもの」
 余計なお世話だ。
「お前は保護者か…。だいたい君がいると女性が寄って来ない…」

 それに、妙な男たちが絡んでくる。ロクスではない。勿論エスナに、だ。
 警戒心ゼロのこの天使は誰が来ても同じように接するので、勘違いした(もしくは「しめた」と思う奴)男に連れ去られそうになったことも、一度や二度ではない。
 大体、何故最近は天使の格好で、姿を消してこないのだろう。

「駄目ですか?」
「ああ」


「…………ん。…あ!」
 何かを思いついたように、ぱっと顔が明るくなる。
「ちょっと待っててくださいねっ」
「(それはいいから早く天界に帰ってくれないか…)」
 そうに言うと近くの建物の影に隠れた。
 一瞬、光が見えたような見えなかったような…。

「お待たせですっ!ロクス」

 間――――。

「(…誰だ、お前は)」
 5歳くらいの子供。…それは自分の膝くらいの背丈。少女はロクスを見上げてにっこり笑う。
「おい、エスナ…か?」
 背は高い方だったのに…いつの間にこんなに小さくなったんだ?
「そです。このカッコなら大丈夫ですよね?変装ですよ」
「何が大丈夫なんだ!!大体小さくなったからといってどういう風に解決してるんだよ。……それに…こんなの連れて行ったら…」
 (まるで隠し子みたいじゃないか…)
 それに酒場にこんな小さい子、入れられないだろう。

「…なに言ってもついて来る気か…」
 ロクスはため息をついた。
「わかった。元の姿に戻ってくれないか…」
 額を押さえながら、言う。出かける気も怒る気も失せて来た。
「え?いいんですか?」
「ああ、もう…今日は寝る…」
「あ、…そうですか…。それもいいですよね。…じゃあ宿屋までお送りします」
 少女はぱたぱたと駆け出した。
 だから元の姿に戻ってくれって言ってるのに。
「…………はあ」

 受難なのか、なんなのかさっぱり分からないロクスであった。




天使は変装も出来るのです。すごいですね〜。
シーヴァスのイベントで男天使がシーヴァスになってたし、アーシェのイベントでは女天使でもアーシェのダンスの相手になってましたからね。今回そういうのないじゃないですか〜。

しかし私の書くロクスってかわいそうだ。…ぐちっぽいし。でもゲームでもぐちぐちしてそうだったし〜?(そう?)


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