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山姥切長義 刀さに

誕生日なので思い付きで話を書く。
絵は↓(小説の下)にある落書きの審神者付け足しバージョンでした。

―――――――――――――――――


「…―――いつの間にやら、君の物になってしまったかな…」

 長義は息をつきながら、自身の私物が入れてある押し入れの襖を閉めた。

「まぁ…そうなるとは思っていたけれどね」
 その場所に掛けてあったはずの大きな布。
 滑りのいい上等な銀色の布に青い裏地。綺麗なドレープを描く重りにもなる金色の房飾り。
 ほぼ身体を覆えるその大きさだからか、「山姥切長義を示す物」と言っても過言ではない存在感だった。

 いつからか、この本丸の主となっている審神者はその羽織をとても気に入ったようで、長義が使わない時はそれを羽織っていることが多かった。
 恐らく、この審神者の夫であり神気が馴染んでいる長義の布結界を作っているのだろう――――といつか結論付けたが。


「長義、いるー?」
「ああ、ここに」
 部屋の障子が滑る。外の空気が部屋の空気と混ざり合った。
 寝室としている続きの部屋の襖を開けたところで、やはりなと笑ってしまう。
「…全く、君が持ち歩いていたのか」
 知ってはいたがそう言う。
 審神者の身体にはぐるりと巻かれた長義の羽織。
「俺の羽織を日除けにするな」
「駄目?…って言っても、いいけどね、って長義言うじゃん?」
「……。へぇ?許そうと思ったが、先に言われると否定したくなるな」
 へぇ、とわざとらしく声を上げ。
「ふふ。あと日除けもそうだけど防寒です。これ暖かいんだもん」
「……はは」

「―――それで?俺を呼びに来た理由は?何かあったのか?」
「んー…いや、別に呼びに来たわけじゃなくて、いるかなーって」
「ああそう。中に入るなら羽織は衣桁に掛けろよ」
「…ね、長義も外、出ない?結構紅葉綺麗だよ、ちょっと落ちかけだけど」
「…まぁ、良い。 ――――では、伴をしようか」





 部屋の縁側から庭へと降りる。
 近侍用にと充てられたこの部屋の庭は(審神者部屋の隣と言う事もあって)池も近く見栄えがとてもいい。

 目の前に布が横切り、止まった。

「雪虫ー」
 羽織の上には白い綿毛が1つ。手に触れないように羽織に乗せているのだ。
「…紅葉と言っていてももう雪の季節も近い、か。  あぁ、あれは雪吊の準備か」
「そうそう、こないだ買ってきたみたいだよ」
 何となく視線は暖色に色づいた木々から青い空へ。羽織の上で羽を休めていた雪虫は微かな風にふわりと飛び立ち、空に消えていった。

「ねえ、長義!今年の私の誕生日はさ、これ欲しいなって」
「…は?」
 隣からの声に長義は空から目線を下ろした。そこには先程とあまり変わらない光景。ほぼ羽織になっている審神者の姿。「これ」と手を上げている。
「あぁ…。なんだ、とりあえず了解は取るんだな。気が付けば君のものになっていると思っていたが」
「む、人聞きの悪い」
「まぁ良いよ。それで俺の妻が守れるのならば、いくらでも」



 ――――ここに来てからずっと使っていた羽織、だ。

 いや、一度取り替えたか。
 刀剣男士の衣装は少しの破れならば修復できる。が、過去に修復不能なところまで破損したことがあった。

「(…あの時は転送陣の不調で本丸に戻れなくなったのだったな…)」


 もう過去の話だ、と長義は息をつく。
 実際、身体の傷は大した事はなく、震える手を理性で押し付けて手入れを作業に入る審神者に「大丈夫だ」と言いながら苦笑したものだったが――――。



「……あぁ」
「? 何? 長義」

「いや、少し昔の事を思い出しただけだよ」
 思い出してまた苦笑する。
 その騒ぎから数日、全てがいつも通りに戻った後、審神者から破損した衣装の事を聞かれたのだった。


 長義は羽織に触れ、その身体から引くと、しゅるりと音を立てて滑った。
 それから頭から掛けるようにふわりと囲い。

「長義…?」
 暖色の色の風景は突然青を帯びて。
「……冷えて来ただろう」

 頬の横を流れる髪に触れ、後頭部から自分に引き寄せる。
 晩秋の空気は確かに冷たいが羽織の中は二人分の体温に陽だまりのように温かく。

「…これで、さ。長義の服、両方私の」
「? ……。はは、まだ持っていたんだったな」
 少し驚く。今しがた過去の衣装を思い出したが、共にそこに繋がったか、と。
「そりゃ、ね。 だって長義が顕現してからこの身体を、刀身を守ってきてくれた服と、…それから歩んできた服だし」
 長義の身体に手が回り、しっかりと背で指を結んで。
 羽織の房飾りが風に揺れる。金属の飾りがちゃり、と音を立てた。


「…長義は、さ。私が知らない所で顕現してるじゃん?…だからってわけじゃないけど、その当時からの、欲しかったの」
「……強欲だね。 今の俺だけでは不満か」
 くっく、と笑った声。
「「服を捨てるなら、上着の釦をちょうだい。お守り袋に入れて取っておくから!」…だったか」
「ふふ」
「変わってないねぇ、君は。……俺のものなら――俺の事が欲しくて仕方がないのだろう?」
 背、腰まで長義は手を滑らせて、ぐ、と引き寄せ。
 もう片方の手は髪を梳きながら頬に。その緩んだ顔に触れて、は、と笑った。
 その手は毛先を辿るように緩やかに落ち、長義の色の石を持つネックレスに触れ、膨らみまで。
「ん!」
「………ここにあるんだったな。俺の釦は」
 息交じりに耳打ちされ、体温が上がるのをとめられない。
「ちょう、ぎっ」
 この山姥切長義の事だ。
 周辺に誰の気配もない事も、こうしていれば羽織で周囲には見えないという事もわかった上でのこの行動なのだろう。
「おや、随分と早鐘が鳴っているが。…ここに入れている時点で俺からは筒抜けだというのに」
「!?   は?そう言うもんなの…!?」

「――――さぁ、どうかな」
 はぐらかすように笑い、そこから手を放して今度は抱き直すように手を回した。




「(そうだったな、あの時…)」

 「なら、後で釦を外しておくよ。それから渡そう」と約束した。それからただ外すのも、と神気を篭めた。
 刀剣男士の装束として肌に触れてしたものだ。元々神気が移っていたが、さらに意識して。




「――…」
 晩秋の冷たい風に乗る温かい声。
 名を呼ばれて少し顔を上げる。
「…ん?」
「……。 いや?…君は俺の声で名を呼ばれるのが好きだからな」

「長義」
「……」
「服の釦も羽織も、神気で繋がってるなら私の霊力もそっちに行ったりするかも?」
「…は、どうかな」
「行くとしたら、私も長義を守れるね」
「……。…あぁ」

 ほんの少しだけ踵を上げて、銀の髪の後頭部に触れ引き寄せる。
「なんだ、おねだりか」
 真っ直ぐに見つめてくる栗色の瞳に長義は深い青色の瞳を細め。
「こんなところで、仕方のない主だね…」
「ふふ…」
「まぁ、良い」

 秋の太陽光が青さを際立たせる。
 ゆっくりと目を閉じれば感覚は一点に集中して。
 触れるだけの行為から段々と緩まった唇に舌を差し入れ角度を変え。「ん…」と少し吐いた息が長義の中へと流れ込んだ。その温かさに思わず口角を上げ、それから自分の体温を注ぐように深く。
 湿った熱を絡め、唇が離れない距離で囁く。

「っ ……あぁ…貴女が膝を折るまでここでする程、…まだ、飛んではいない、が」
「ここ、で?…」
「おや、既にふらついているか?」
「…ん、もう」
 少し重みが増した寄り添うその身体を長義はしっかりと受け止めながら笑う。

「あぁ、万が一でもそのような顔、他の奴らに見られたくないからな……。―――あまり煽るな…」
「ん…っ ちょう、ぎ」


「――――まぁ、…俺がまだ許してやれるうちに止められて良かったな、主」
 頬に手を当て、唇を指で辿って。



 少しの後、
 しゅるりと布が落ちる。
 途端、視界には秋の冷たい空気と暖色に色づいた木々、それに風に舞う木の葉の音が戻ってきた。

「…今はこの景色を楽しもうか。…そら、もう紅葉も終わりの季節だ。ならば見てやらねば」
 はらはらと落ちる葉を手に乗せるように。
「ん…。ずっと楽しめたらいいな、この景色」
 未だ口の中に残る長義の感触に、紅葉のように頬を染めながら。胸の奥底からじわりと温かいものが染み出してくる。
「…別に、羽織が欲しいわけじゃなくて……。私は長義とこう――――……」
 続きの言葉は長義の肩口に押し付けられた顔で聞こえなかったが、苦笑し、その髪を梳きながらもう一度名を呼ぶ。

「そうだな、それは同意見だ。……貴女との時間は、誰にも邪魔させやしないよ」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



↑元のラクガキ。
長義はムキムキタイプではないけども、うっすら見える程度がいいかなぁ。
でも、身体の厚みとかはちゃんとしてる感じ。そういう絵が描きたい。




とうとうストールを貰ったらしい。極になったら使わないからね、という感じ。
お守りの釦の話はオフラインでつらつら書いてる小説からのネタ。あまりに長いので抜粋も出来ず…(笑)。
服の中に長義の釦を入れてるのですよ。

結界化してる、ってはこちら。



長義のストールって良いよね。

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