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もう半年前にラクガキしたのが放置されていたので色を塗りましたわ…。
なんか、うちの長義さん、自分の布に主入れたい希望があるんだと思う。絶対隠そうとしてる。
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その刀剣男士の肩を、ほぼ全身を覆う大きな布は触れるとさらりとして何処か冷ややかで。上質な布なのだろうと詳しくなくてもわかる。
だが、何故だろうか、羽織るとふわりと温かい気がする。「それは君だからだろう」と、ある時言われたが。
裏地の青い布から透ける光で肌が少し青みを帯びた。
「このまま青に溶けそう」
「へぇ?…ご希望ならそうするが?」
真上から降ってきた声。
「君がそのつもりなら俺にとっては都合がいい」
「ホントにそう思ってそうだから怖いよね」
「あぁ、俺はそんな軽口は叩かないよ。…審神者と言う仕事に危険がないわけではない。俺は政府刀だからね、惨い目に遭った本丸、審神者も知っているし、記録も見てきた。
…俺の主をその可能性から遠ざける事ができるんだ。ならば答えは決まっている。前にも言った通りにね」
「審神者してるか、長義の神域に閉じ込められるか……?」
「おや、人聞きの悪い。だが、まぁ…似たようなものか。―――いつでもどうぞ?」
くっくっく、と笑い声と共にまた声が降ってきた。
「ふふ、まだやめとく」
「あぁ…」
頬に温かい体温が伝わってくる。
今、頭を乗せているのは長義の太腿だ。そこに布を被っている。布越しに大きな手が頭を、肩を撫でてくれているのがわかる。
こうしている時間が好きだ。
大広間に居る時、他の男士が居る時は(軽く触れることはあっても)寄り添う事はほぼない。
審神者の左手に指輪が輝いても、長義の服の中に指輪が下げられるようになっても、それは同じだった。
そうしようと二人で決めたわけではないが、それは主としてのけじめだと思っている。
「ね、長義ぃ、代わろっか?」
「うん?…君が膝枕をしてくれるのか?……まぁそれもいいだろうけども、別にこのままでもいいよ」
「そうかー」
「ああ。……俺の布を被ってそのまま染まってくれ」
「だからさぁ、言い方怖いんだって」
「はは」
「ふふ……」
視界に見えるのは今頭を乗せている長義の脚と、自分の手と。それが何となく青色に染まっている。
少し手を動かして布から顔を出した。
「…?」
「わ、明る…」
「何を言っているんだ。まだ昼間だぞ」
「布の中、なんか秘密基地みたいで」
「…君は時折妙なことを言うな」
近侍用端末を操作していたらしい、それを傍らに置くと漸く見えた濃い色の髪を、す、と撫でた。
「ああ、でも秘密基地、か。―――なるほど」
――――普段、力がある刀剣男士たちの主をしているのは、恐らく精神的にも肉体的にも疲れを感じるのだろう。
人間より位が高い相手を何振りも従え、異形の者たちと戦っているのだから、通常であるわけがない。
それに主は元々審神者の家系の生まれではない。ということは幼少時から教育を受けてきた者らとは就任時点で差があるのだ。政府からの研修、文書では身につけられない経験がある。いまだ手探りの所もあるだろう。
「(ならば、もしかしたら…。主のこの行動、俺の神気を帯びた布で外と遮断をして結界化している…?)」
――――以前、布や上着を被って温かいと言っていた。俺の代わりにしているのだろうとその時は結論付けた。
所有の刀剣男士の中でも関わりが深い初期刀や近侍と共に居ることは審神者の精神力・霊力の回復にも一役買っている、とは言われている。
だがそれは「審神者に必要な力」であって、「人として活動に必要な体力」ではない、と思っていた。
「(ああ、…なら、この時間は回復に必要なわけだ…。ただ甘えているわけではないのだな)」
「…ん? どしたの」
「ああ、いや」
急に黙ってしまった長義の瞳が揺れたのを見逃さなかった。
「長義…?」
膝から顔を上げ、上体を起こして、その頬に手を、指を伸ばした。
作り物のように整った顔。青い瞳。青みがかかった銀色の髪。
「…大体さ、長義ってなんか……その、迷わない…じゃん?」
「は?何をいきなり」
「あ!考え無しとかそういうんじゃないよ!絶対的な自信みたいのあるよね。…多分それって考えるの早かったりしてるんだと思うんだけど」
「ふぅん…なるほど? 褒めているのかそれは」
「だからさ、考えが遅い時って大体私の事かなぁ、とか思うわけ。だってやっぱ人と付喪神って違うわけだし」
「……。は、随分な自意識過剰だな。君は」
驚いたのか、隠すように自嘲的に笑い、少し目を逸らす。
「自意識過剰でもいいや。…そうじゃない、って長義が否定しないから」
「……はいはい」
次に視界が少し暗くなり、先程まで審神者の身体にかかっていた布がかけられたのだと知る。
「? 何のつもりだ」
少し青白い視界には二人だけで。
「えへー秘密基地」
「………。全く、さっきから。…子供か?君は」
「あ、秘密基地とか子供の遊びとか知ってるんだ?男士って」
「…ああ、知っている。自分の国を作りたいんだろう?」
「え、そういうのなんだ、アレって。でも大人になってもこれやりたいよね」
あははと気楽に笑う審神者に長義は息をついた。
――――ああ、彼女に、俺が唯一と決めた俺の妻に、この俺が合わないわけがない。
神気が合っているのは確認済みだ。ならば、あとは段々となじませてやればいい。もっと。
「そうだな…」
そう、俺で満たして、不安も身体の不調も全て消し去れば問題はない。
手首を掴み、耳に唇を寄せ。
「ひっや!?だから、耳は駄目だって!びくってするんだから! ッ! ん ちょ ぅ ぎ…!」
「駄目なんて事はないかな…いくら声を上げても、どこにも届きやしないし聞いているのは俺だけだ。いくらでもどうぞ」
「俺と君の秘密基地、なのだろう?」
「ぅ…。 長義がそう言う時って大体怖いこと言いだすよね」
「おや、どういう意味だ?…俺を迎え入れたのではないのかな?」
「……ン… まぁ、そう…?」
「主」
「…?」
「誰も見ていないよ。好きに甘えてくれ」
「私はいつもここで長義にくっつけるからそれでいいんだけど」
「…へぇ?……なら、この狭い空間、俺が好きに甘えようか…?こちらの方が気分が上がりそうだ…」
互いの息で温まるようなこの距離。空間。
髪が頬に触れる。
「へぇ…」
布を通して落ちる光は青く白く。
名を囁いて。
「ん、長義 もっと…」
「…うん? …あぁ、俺の声が好きだ、と?」
「ん…好き。……ねえ、温かい、気がする、って前言ったでしょ」
「あぁ、俺の服や布を被っていると、だろう?」
「それも、そうだけど。……こうしてるとね。…すごく安心するし、良いなぁって思うんだよね」
「へぇ?…俺もそうだと言って欲しいのかな」
「んー…そりゃね。…そうだったらいいなぁとは思うけど。人間の私の力なんて男士にどのくらい影響するかわかんないけどさ。…長義が私と一緒に居てそういう気持ちになってくれるなら、嬉しいなぁ、って」
「……」
指に触れる髪を絡め、耳朶を唇で軽く噛むように。
「ん、……ッ」
身を捩るから優しく、だが強くその身体を引き寄せて。
熱が上がってくるのがわかる。
長義の審神者の名を呼ぶ声に息が混じり少し掠れ。それを受けて服を掴んでくる手が強く。
「はは…これは良いな…」
「…ちょう、ぎ?」
「ああ…ただこれは、男士と主だからではないよ。…俺の妻だからだ」
「ふふ。 …えー、でもそれって主としては駄目っぽい?」
「全く何を……。まぁ、俺と神気が合う審神者は恐らく他にも存在するだろう。だけど、君以外の審神者の霊力が俺に合う事はないよ。こうしていても俺には馴染まないし、心地良くも感じないね」
「え、なんで?…その、人として好き嫌いじゃなくて、力の相性とかそういう話じゃない…?」
「………あぁ…」
少し顔をずらし、互いの目が合う。
青い瞳は真っ直ぐと。
「…俺が他人の力など受け入れるわけがないかな。元々1年程度で政府に戻るつもりでいたからねぇ。監査官の方が性に合っているんだ」
「! え、…戻れとか、言われたりしたの?」
「…最初はね。あちらも人手不足なのかそう言われた事はあったかな。…だけど俺の所有権が完全に君になっているのは確かだ。―――ああ、そんな顔をするな。もう過ぎた事だよ。心配はない」
「はぁ、驚くよ…」
「……だからね」
瞳の色が、不安から戻りつつあるのを確認しながら、その目元を唇を這わせ。
「俺は受け入れない。他のどんな主だろうと。……所有者である審神者の霊力を受け入れた方が刀剣男士としての力が回復しやすいのはわかっていてもね。……この身体、刀身に君以外に触れられたくはないな」
「……長義、苦労しそうだね」
「さぁ、どうかな」
「…でも、私を受け入れてくれたなら、…それはとっても嬉しい……」
長義は返事の代わりに、小さく音を立てながら髪へ、耳へを唇を付けた。
「……いつかが楽しみだよ」
真っ赤に染まった耳と、潤んで光を帯びた栗色の瞳と。
山姥切長義は今この時、自分が唯一と決めた彼女がこちらしか見ていないことに内から湧き上がってくるような何かを感じる。
「(ああ、これが嬉しいと、満たされているという事なのだろうね…。貴女と居る時にのみ起きる感情…。ならこの時間は俺にも必要か。 誰にも脅かされない…)」
――――……貴女を、完全に俺の神域に招く時が、ね。
前もストール被ってた
布の中に入れたいというより、布の中を簡易的な神域にしたいんだろうな(笑)。やはり隠したいことには変わりなかったようだ。
なんか私が話を書くとどんなキャラもちょっと暗くてねっとりするなぁ…なんでだろ。
ストールとは違うけど結構長義に膝枕してもらってる主。
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