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クリスマスの話だったはず…なのだけども。
なんか全然関係ないな。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――「審神者」と「近侍」としてならば長い時間共に在ると表してもいいのだろう。
だが、「二人」としてはどうだろうか。
「(いやいや、休みの日はいられるし、部屋だって一緒に使ってるから夜だって一緒だし。これ以上求めたら罰当たるって)」
まぁ、それも結局部屋に居る時は資料の整理をしているのだが。
「あー…自宅兼会社ってこういう感じだよねー…」
「……何をぶつぶつと言っているんだ?」
「長義」
同時に障子がぱたんと閉まる音がした。
「―――もう少し乾かしてやろう、これでは櫛が通せない」
審神者の後ろに膝をつくとまだ少し湿っている髪を持ち上げ、タオルで包みながら乾かし始めた。長義自身の髪は既に乾いているようだった。
風呂上がりの少し上がった体温の指が首筋に触れる。
夜、風呂上がりのこの時間。他の刀剣男士たちも自由な時間だ。
乾いた髪を梳きながら一日の報告会をするのがいつの間にか二人の日課になっていた。…とはいえ、戦に関わる重要な事柄はすぐに共有できているので、この報告会はほぼ本丸日記のようなものだった。
「寒いよねー、お風呂場からここに戻ってくるとき結構冷えるでしょ」
「まぁそれが冬だ。君も風呂上りに外に長く居るなよ。―――あぁ、そういえば明日は買い出し組が忙しいみたいだな」
「! あ、ねぇ…」
「…明日は気温が上がりやすい昼に出るよ。万屋街―――ではないのだろう?少し雪もあるからな」
「!!」
肩が揺れる。振り向こうと首を少し回して。
「……覚えてて、くれた?」
「当然。…二人で過ごしたいのなら少し散歩でもするか?」
「うん」
それは「クリスマスの前日は二人で過ごそう」という約束。
* * * * * * *
「覚えててくれた〜なんて、嬉しい」
「は? …この俺が約束を忘れると思うか?」
「ん、思わないけどさ。覚えてもらってたら嬉しいじゃない?」
「へぇ…」
夏は苔生す石畳。
それが今は雪と薄く張った氷で半分以上顔を隠していた。
「…裏山に上がるのはやめておこうか」
ブーツの踵で氷を割って遊んでいる審神者を横目に長義は空を見上げる。
雲一つなく、とても高い。
「風なくてよかったね、風あったら寒くていられないよ」
「ああ、君が大人しく万屋街がいい、と言ってくれていたらな。今頃は良さそうな茶屋にでも入れそうだが?」
ああ、と声を上げひらりと手を振った。
「でも、最初に散歩って言ったの長義だよね。まぁどこに行くかは決めてなかったけどさ」
ざく、と足元で音がする。
雪が解けて氷になった音。
「(………あぁ…)」
本丸の裏手、このまま森を上がって行けば本丸の建物が見渡せる山になる。
そこに行くまでの少しばかり開けた場所だ。
「ね、ここって〜…他の子もあまり来ないし、なんかいいよね、って」
「ふぅん…?」
「長義が約束してくれたとこ、ってのもあるのかも」
「……」
―――そうだな、と長義は言葉の代わりに目の前の頬に指をあてた。
「はは。なんだ?…特別な場所、とでも?」
だが自分の口から出てきた言葉、声色は苦笑したような声。
「えー、私はそう思ってるんだけど」
「(あぁほらな、そう膨れる)」
「でもさ?」
「?」
「長義がなにも言わずここに来てくれたんだから、…長義にとってもここからの道は好きなのかなぁ、って」
「……」
―――明日は皆と一緒にいるから、その前の日は二人きりで居たいと約束をした。
それはどこでも良かった筈だ。
なのに、二人何を決めるわけでもなく、何となくこの場所に足を向けていた。
「…そうだな。 まぁ、俺も無駄に賑やかなのは好きではないからねぇ」
ストールを頭から掛け、引き寄せる。
突然、今まで微かに聞こえていた山の音が聞こえなくなった。
竹が雪を振り払いながらしなり、戻る音。溶けた氷がぽたぽたと零れる音。
「うわ、あったかぁ…」
「…まだいる気なのだろう?…なら、この方が良い。少しこうしていろ…」
「長義のさ、神域ってこういう感じなのかな…?」
暫くしてぽつ、と呟いた。
「……どうかな。試してみるか?手前までなら招いたが。―――その奥底まで」
肩が揺れる。笑ったのだろう。
それから長義の身体に腕が回った。
「…こんなに気持ち良いならそれも良いかなー、ってちょっと思っちゃうなぁ…」
「おや、良いのかな? 付喪神にそう言った冗談は通じないよ。俺はしたいと思えは実行する…」
ストールの中に入り込んだ手は、耳に触れながら髪を撫で。
「ん…ッ」
頭から首筋、背―――まるで自分を意識させるように身体をゆっくりと辿って行く指。
「…君が嫌だと思う隙など与えないかな」
「ふふ、なにそれ、すごい」
「…――――あぁ…、だから」
「長義…」
「……貴女は、この先も不安に思う事等ないよ」
「!」
「…だろう?俺はいつでも貴女を隠せる」
「それって、さ」
「うん?」
「…もし。…もし大変な事があったとして、…本当にそうなる前に、長義が私を隠す、って事?」
ストールから顔を出して、見上げた栗色は青い瞳と混ざった。
遮断されていた森の音が遅れて届く。
「あぁ。…そう言う事になるかな。……君に最悪を見せる前に、か。……ただ君はそれは嫌だと言うだろう。だが俺も最悪を君に見せたくないんだよ」
「…そりゃ、最悪なんて出来れば見たくないけど。…長義となら頑張れる、かな…」
「お断りだ。……俺は君を守ると誓った。君も俺を守ると言ったな。…なら、その為にも俺の言う事は聞いてくれ」
優しい青い瞳は、少し細められ。それから見上げたままの瞳に長義は唇を付けた。
「なんだ。らしくもない」
「…長義のこの中が温かくて気持ち良すぎるからかなー……たまにこういうこと考えちゃうんだよね」
「…へぇ…」
「ね、長義。―――こうしてくれて、そう言ってくれて、本当に嬉しい」
「……。俺はただ、貴女が心乱されることが許せないだけかな」
「ふふ」
「以前言ったろう?守れる自信はある、だが、危険な目に遭う可能性は潰したい、と。…俺の妻にその欠片も飛ばしたくないんだよ。俺はね」
「政府の刀って色々見て来た、っていうもんね…」
「あぁ…何となくでも理解してくれれば今はそれで良い」
濃い色の髪に顔を埋め、長義は息をついた。
自分を客観視して、随分とまぁ入れ込んでいるなと思う。人の子にここまで執着するものか、と。
だが仕方のない事だ。隣に彼女がいる事、それを守る事。――それに守ると言われた事が心地良いと思ってしまったのだから。
ふ、と思わず笑ってしまう。
頭に温かい息を感じて審神者は目を上げた。
「長義?」
「ああ……さぁ、こう温め合っているのも悪くはないが。どうする?」
「ん〜…。このままでもいいし、部屋に戻ってもいいし…?」
この季節、薄暗いと感じたら陽が落ちるのは早い。もう傾き始めた陽の光は木々の間につく高さまで着ていた。
「ってもう夕方かぁ…。……じゃあ部屋に戻って、ふふ、長義の膝枕でごろごろしたいー」
「…ああ、君が黙って寝ていてくれるのなら俺にとっても都合がいい。やる事があるからな」
「えー!仕事すんの? うわ、流石近侍だよね…」
「……何を言っているんだ、主」
二人ゆっくりと歩きだす。
長義の腕から抜け出し、長い長いストールを身体に回し、雪の上をざくざくと音をさせながら弾んで走って、それから振り向く。
「長義!」
「……」
「お願い! ……今日は仕事しないで一緒にごろごろしよ?」
「…それは「主」からか?それとも「俺の妻」…からか?」
「んー、どっちもー? あーでもそうだなぁ…」
歩いて追いついた長義は思案する審神者の頭に手を載せ。
「…それで?」
「仕事は置いといて、は主で〜…。 一緒に、は旦那様へのお願い、かな?…」
「なるほど。分かった。……ならば、この様な日だ。―――俺も貴女に甘え…癒してもらうとしようか?」
目線を合わせ。
その鋭いながらも包み込むような深く、優しい目。
「…長義」
少し高いその肩に、首に両の腕を回して。
「なんだ…?部屋を待ちきれずおねだりか?」
は、と笑い。
長義はもう一度ストールを――今度は二人の頭を覆うようにかけ直した。
木々の間に落ちきっていない微かな陽の光と、青白い視界。
胸元に光る青い石が余計、青く光る。
「これで、―――二人きりだ」
冬の凛とした空気に冷えた唇が瞬時に溶け、熱を増す。
息交じりに呼んだ名は二人の耳だけに残って。
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そう言えば友達からグレー×青の結構大きなストールを誕プレで絵付きでもらったのがめっちゃ暖かい。
そこんちの加州さん曰く「相変わらず神気増し増しで怖えぇ…」だそうで。
この本丸の裏手の森の話はこちら。
長義の膝枕ー……膝??
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