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山姥切長義 刀さに

今年のジュンブラネタ。うちの本丸の結婚式は2023年6月5日でした。…で、まぁ回想ですけどそんなネタ。

二人でやった時は神域の手前だったので長義のカッコがいつものままでしたが、本丸でやったバージョンで衣装替え。
初と極衣装両方をちょっと入れてみる・

ちなみに右胸の釦は審神者紋のつもり。

で何となくお話。
何故だかただ甘いだけにならないよねー。

――――――――――――――――――――――

夜の静寂がどこか甘く部屋を満たしている。
 少しばかり灯りを落とした空間でこの本丸の主の審神者は端末の中の写真をめくっていく。
「……」
 山姥切長義は肩に身体ごと預けて来た主の手元―――端末に目を落として。あぁ、と小さくつぶやいた。

「なんだ、懐かしいものを見ているな。あぁもう三年か。早いね」
「あ、これ、私が撮ったやつー」
 ほら、と画面を向けて。
「へぇ、…こうして見るとあまり君の写真はないな」
「まぁ、これ私の端末だからね。…と言うか、皆や長義を撮ってた方がいいし」
「…自分の式で何を言っているのやら。主役がまわりを撮影しているなんてねぇ」
「いいのいいの」

「…こういうのって、長義でも…緊張した?」
「どうかな。……いや、していないだろう。…あぁ、君が衣装の裾を踏まないか、やら…そんな心配はしていたかな」
 顎に手をやり少し考える動作の後、あぁ、と声と口角を上げて長義は言う。



 ――――ただ、ヴェール越しに真っ直ぐと捉える栗色の瞳に、一瞬、息が止まった記憶はある。
 大きな期待と、少しの不安と。それに彼を包み込むような深い慈愛。その瞳を視界に収めた時、確かに震えた。

 小さく唇が動いた。式の途中だ。声を発したわけではなくただ唇の動き。「長義」と。

 その瞳に映し出された自分を、彼は俯瞰するように思い出す。
 ずっと見てきた。この本丸に来てから。
 いつからか手放したくないと思った。それをあろうことか未来永劫に、と願ってしまった。
 「次」という概念がない付喪神と、輪廻転生「次」がある生きている人の子。決して交わる事などないと思っていた。
 だが、「次」を手放してまで、「「こちら側」に来る。あなたを独りにはしない」と彼女は言い切った。


 「(……あぁ、この先も悪くない。…いや、貴女だからこそ…俺は山姥切長義でいられる)」




「えー長義、そんなこと心配してたの?私がコケるかもーなんて」
 審神者の声で長義は我に返った。
「酷くない?他に心配することあるだろー!みたいな」
「は?酷い事などないだろう。履き慣れない靴によろけて、式の直前まで俺か壁に掴まっていたことを忘れたのか?」
「あ〜!…あれさ、靴が酷いよね!?別にあんな履きにくいやつじゃなくてもいいじゃん」
「…靴の所為にするな」

 あれから三年経ち、こうして変わらず二人は柔らかな夜の中にいる。
 長義は審神者の手から端末をすい、と取ると布団脇の文机に伏せて置いた。
「…長義」
 ヴェールの向こうから見ていた瞳は今、より深く甘く彼だけを映して。

「そら、そろそろ休む時間だよ」
 文机の引き出しから端末の代わりにつげ櫛を取り出し、長義は審神者の後ろに胡坐で座り直した。
 長い指先が首に当たり、髪をかき上げて。
「…全く…乾かしたと思ったらもう緩やかに乱れて…。飽きないね」
「それは褒めてるのか、けなしてるのか…!いや褒めてないよね!?」
「はは…さぁ、どうかな」

「ただ…」
 と、長義は手を止めずに続ける。
「心地良いよ、君の髪は。真っ直ぐに大人しい髪より、…良い」
 長義が油布で拭いて櫛を仕舞い、いつもの息交じりの声で名を呼ぶ。振り向くより先に梳き終わったばかりの髪にそっと唇が当てられた。
 それから当たり前のように緩やかに、だが拒否はできない強さで長義の膝の間に引き寄せられ腕の中に納まる。
 息を吸って吐いて。その息の流れが耳を掠めて。
「ん…長義」
「何かな…」
「ずっと…一緒にいようね」
「……。 なんだ、今更…」
 長義は、ふ、と笑い、その息がまた、耳に触れる。「…あの癖のある髪が随分と艶やかになったな…」と、息交じり、少し掠れた低音の声は鼓膜を静かに、だが確実に甘く震わせて。
「―――君が、俺を唯一と定義している限りは、…ね」
「何、その言い方ー…。私だって…ずっと長義の一番でいたい」
「むくれるな。…俺も君を離しやしない。あぁ、そうだな。……生かすも殺すも、君次第。…と言う事だ」
 指にひと房、髪を絡め、唇に当てる。
 写真が格納されている端末―――文机に伏されたそれを見やり。
「あれは過去となったが…この現在、そして未来永劫、君の「時」は俺のモノだよ」


 ――――そう、神とは信仰がなければいつか消えゆく。
 それは刀剣男士たちも同じことだ。本丸がいつか閉ざされれば、途方もない時の中で徐々に霧散し、あるいは冷たい鉄へと還るだろう。
 人に輪廻転生があろうとも、生まれ変わったかつての主を見つけ出せる保証はどこにもない。再会を果たせるその時まで「あの日、あの主に仕えた刀剣男士」という存在が保つことができるのか、……それは誰にも分らないから。


「長義…?」
 少し首を動かして、長義と目を合わせて。
「大丈夫だよ。…私がずっと長義の存在を信じるから」
「……! はは。何を言い出すのやら」
「んーん?……だって「時」とか言い出したから、長義、そう言うこと考えてるかなぁ、って。…私なら良いんだよ?私の幸せは長義と一緒にいて、長義も幸せな事だからさ」
「……。あぁ…そうだったな」

 ―――ならば、俺はこの番にのみ、この身を捧げる刃となろうか。…いや、既に交わした誓いを今更なぞる必要もないか。
 けれども、何度でも定義しよう。強固な楔が打ち込まれていくのだから。
 この刃を納められる鞘は、貴女しかいない、と。



「さて……。折角梳いたばかり、だが…。 …まぁ、乱れてもまた直してあげようか。ならば良いだろう?」
 問いかけの形を取りながらも、すでに深い熱を含んだ誘い方。
「ん……」
 抗う理由などどこにもない。
 写真の過去の記憶よりずっと熱い、付喪神の体温がそこにある。 

 長義はそれ以上言葉を重ねる事もなく、ぐ、と腕に力を入れた。緩やかに、だが逃げられない程度の拘束。
 灯りが落ち、微かな月明かりと庭の街灯が障子を通してゆらりと闇を照らす。その中で誰にも邪魔をされない時間がこの部屋の空気を満たしていく。
 衣擦れの音と互いを甘く呼ぶ声と。
  
 ゆっくりと二人だけの深い夜へと溶けていった。




長義の右胸釦の審神者紋のつもり。
うちが九曜紋なので九曜。…で、自分が初雪の頃の生まれなので雪の結晶。初雪九曜、って感じで。

月と真ん中の結晶で九曜。
四つの結晶が雪。ちょっと刀の切っ先にも見えるかな〜みたいな。


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