啓子のオリジナル童話
            目次   夢に住むベストフレンド No.4-1
                                  No.4-2
                         竹の子姫  No.3
                      怪耳んミミンガー No.2
                      ホタルが光るわけ No.1

              夢に住むベストフレンド No.4-1

                  勇太とゆうゆう太

    勇太は 元気 いっぱいの小学校4年生の 男の子です。

  転んで ひざを すりむいたり、 たんこぶを作ったりは しょっちゅうです。

  友達と 喧嘩して 取っ組み合い 泣かしてしまうことも よくあります。

  
だから 先生や お母さんから 叱られ お説教される事も いつもの事なのでした。



     
ある日 家の裏の方の 田んぼ道を 歩いていると おばあさんが転んでいました。

  起き上がろうとしていますが、 ななかなか起き上がれないでいました。

  
「おばあさん手をかして。」

 
 勇太は近づき おばあさんの手を取り 引っぱって 起こしてあげました。

  「ああ どっこらしょ」

  「だいじょうぶ?」

  勇太が聞くと おばあさんは


  「ああ、 ありがとうね。」

  嬉しそうに そう言って ゆっくり歩き出しました。



  
勇太は家に帰っても、 今日の おばあさんの事は、なんだか 照れくさくて、

   お父さんや お母さんには言えませんでした。



    
その夜のこと、 夢の中に 自分に良く似た男の子が出て来て

  「今日は とっても良いことをしたよね。おばあさん 助けてもらって 嬉しそうだったよ。」

  親しそうに 話かけてきました。

  
「君は誰だよ?」

  勇太が言うと

 
 「まあ双子みたいなもんさ。 ずっと君の夢の中に 住んでいたんだけど、

  ゆうゆう太って呼んでよ。 これから 仲良くしようよ。」

 
 そう言って 消えたのでした。



    
次の日、 勇太は女の子の髪を引っ張って 泣かしていました。

  すると夜になって、 ゆうゆう太が、夢にでて来ました。

  「ちょっと 強く 引っぱりすぎだよ。 泣かしちゃって 可愛そうな事をしたね。」

  顔をしかめる様に 話しかけて来ました。

  そうだな、 やっぱりまずかったよな。 先生にも怒られたし。」

  そう言うと ちょっと笑って

  
「やっぱり まずかったよ。」

  と言って また消えました。



    次の日、 隣の席の大ちゃんが、 マンガのキャラクターの珍しい絵が描いてある消しゴムを、

 
 勇太に見せびらかして言いました。

  「これ、この辺の店には 打っていないだ。親戚の家に 泊まりに行った時、買ってもらったんだ、いいだろう。」

  「ちょっと貸してよ。」

  勇太が言うと

  「やだね、ボクの宝物だからさ。」

  
少し得意そうな顔をしながら 足早に他の友達の所へと行ってしまいました。

  大ちゃんは 他の皆にも 見せびらかして 歩き回っているようです。

  
昼休み 大ちゃんが 外に遊びに行った時、

  勇太は 大ちゃんの 机の中から 筆箱を出しました。

  そうっと 素早く 消しゴムを出してズボンのポケットにつっ込みました。

  それから筆箱を 机の中に 戻しました


    皆は外に遊びに行っていたり、トイレに行っていたり

  教室に残っている子も遊びに夢中で誰も気付いてはいませんでした。


    勇太は外に出て行きました。

 
 庭の隅に行くと ポケットから 消しゴムを出し

  石垣に石の すき間に押し込んで、 皆の遊んでいる方へ行きました。


    午後の授業が始まり、大ちゃんは消しゴムがない事に 気付きました。

  机の中 カバンの中 あちこち捜し

  「先生 ボクの消しゴムが なくなっちゃった。」と

  しまいには泣き出してしまいました。


    先生は 大ちゃんから話を聞き、みんなにも知らないかと聞きました。

  知っていると手を上げた人は誰もいません

  勇太も黙っていました。


  
結局 消しゴムは出て来ないまま 下校になりました。


    
その夜 ゆうゆう太は ニコリともせず怒った顔で夢に出てきました。

  「あんまりじゃないか、ひどいよ。大ちゃん泣いてたぞ。」

  「大ちゃんが悪いのさ あんなに見せびらかして 自慢して ぼくにも貸してくれないで、 いい気味だ。」

  「でもあの消しゴムは 大ちゃんの物だよ。返してやりなよ。」

  
「だって 誰も ぼくがやったって 知らないし、 見ていなかったんだから。」

 勇太は口をヘの字に曲げました。

  「いいや誰も知らないんじゃない。 ぼくはちゃんと知っているさ。 ごめんねを言って返した方がいいよ。」

  さっきより きつい声で ゆうゆう太は 言いました。


    「今さら そんなこと 出来ないよ。 また先生やお母さんから 大目玉だなんて いやだよ。」

  「そうか それならぼくは、夢の中じゃなくて君の心の中に立てこもってやる。」

  そう言ってゆうゆう太は消えてしまいました。



   目が覚めると 朝から心臓のあたりに 冷えた 缶ジュースでも 入っているように

   冷たいような 重いような感じがしました。


  「ゆうゆう太のやつ、本当に心の中にいるのかな。」

  そう思いながら 胸の辺りを 手のひらで さわってみました。

  でもそこに、ゆうゆう太が、 いるかどうかは分かりませんでした。


  何だか 体が重くなったようで 歩く時にも 足を上げるのが いつもより大変な気がしました。


  勇太はなるべく石垣には近づかないようにして過ごしました。


  夜になっても ゆうゆう太は夢に出て来ません。

  やっぱり心の中に立てこもっているらしくて

  心臓の辺りの 冷たさと重たさは 朝より ひどくなっているような気がしました。


  「このままゆうゆう太が どんどん重くなっていったらどうしよう...................」



    次の日になり

  大ちゃんの方をみると 大ちゃんも しょんぼりしていました。

  勇太は思い切って 石垣の所へ行きました。

  よく見ると 消しゴムが、奥のほうに はさまったままです。

  勇太は手を伸ばし グイッと消しゴムを引き出しました。




   大ちゃんのいる方へ走って行き 大ちゃんの前に立ち止まりました。

  消しゴムをさし出して

  「大ちゃん ごめんね、 これ。」  と言いました。

  大ちゃんは驚いて 消しゴムと勇太の顔を交互に見ましたが、

  手を伸ばして 消しゴムを受け取ると先生の所へ走って行きました。


  先生は 勇太の所へ来て訳を聞きました

  言いたくはなかったけれど、先生は根ほり葉ほり 色々と聞きました。

 そして消しゴムを取ってかくしたのは悪いと怒りましたが、

  ちゃんと自分で返して あやまったのは偉かったと ほめてくれました。

  大ちゃんも 皆に見せびらかしたのは悪いと注意されたようでした。


  家に帰って お母さんには 正座させられ足がしびれ 動けないくらい 怒られたけど

  何だか 心臓の辺りの 冷たさなくなり、軽くなったようで、楽に走ることができました。


  その夜 ゆうゆう太が夢に出てきました。

  ニコニコして

  「立てこもりは止めたよ。」

  と言い、それから

  「謝る勇気のある 勇太が大好きだよ。」

  そう言って 消えました。

  勇太も 嬉しくなって夢の中で

  「ようし、やったぁー。」

  ガッツポーズで決めたのでした。

       夢に住むベストフレンド No.4-2

                   心の穴

     いつも元気いっぱいの勇太が

  ここ一週間ほど元気がありません

  それというのも 仲良しの健斗君が転校してしまったからです。

  とても気が合って 休み時間に遊ぶのも

  夜、うっかり聞き忘れた事や 宿題のことを電話で聞いたりするのも健斗君でした。


    健斗君がいなくなってからは

  他のお友達と遊んでいても 楽しさは今までの半分くらいな感じだし

  面白い事があって笑っても 前のように

  自分が心から笑っているようには思えないのでした。


   ある夜、 夢の中で ゆうゆう太は驚いたように言いました。

  「どうしたんだい、ひどい落ち込みようだけど.........」

  その言葉を聞いたとたん、 勇太は急に涙が出てきて止まらなくなりました。

  「健斗君が転校したんだ、 お父さんの仕事の都合で引っ越すて急に決ったんだって」

  そう言うと もっともっと悲しくなり 勇太は 大きな声をあげ 泣き出してしまいました。

  ゆうゆう太は そばに座り 肩を抱いて ずっとそこにいてくれました。



    泣くだけ泣いて 勇太は

  「なんだか心の中に 穴があいたみたいな気がする。」    と言いました。

  「そうか穴があいたのか。 それならボクが修理してくるよ」

  ゆうゆう太は そう言って消えてしまいました。


   次の日夢に出て来たゆうゆう太は 少し青いような顔をしていつもの元気がありませんでした。

  「穴は思ったより大きかったよ 修理にはしばらく時間がかかりそうだけど きっと元どうりにふさいで来るからボク頑張るから。」

  きっぱりとそう言いました。


    二〜三日経って 疲れた顔で フラフラの ゆうゆう太が 夢の中に 顔を出しました。

  今度は勇太が驚いて 「大丈夫かい?」と声をかけました。

  「ああ、ごめん まだまだ ほんの少ししか修理できていないんだ

   ふさいでもふさいでも くずれ落ちてしまって...........。どうすれば いいのかな..................。」



    二人は言葉もなく並んで座り込んでしまいましたが、

   勇太は 「ゆうゆう太 ありがとう。」

  と言ってゆうゆう太を見ました。

  すると疲れた顔に少し笑顔がもどりました。

  「そうだ、オレ 健斗君に手紙を書いてみようかな 今どうしてるか  友達できたかって」

  「それがいいよ、さっそく明日にでも書いてみたら。」

  「うん。」

  勇太は少し元気が出て来ました。



    手紙には遠く知らない所で、どんな風に暮らしているのか

  どんな先生で、どんな学校かを聞き、自分は健斗くんがいなくなって とても寂しいと書きました。

  そして手紙をポストに入れたら返事が来るのが とても待ち遠しく楽しみになりました。

   二〜三日して 返事は すぐに来ました。

  勇太君 手紙ありがとう とてもうれしかったよ。

  こっちの学校も 来てから まだ少しだけど

  なんか 友だちが出来そうな気がします。

  担任の先生はやさしそうな女の先生です。

  いまは色々が心配だけど 早く健斗君みたいな 友だちをつくりたいと思っています。

  また手紙まってるよ


  勇太は 何度も手紙を読み返しました。

  今まで 健斗君がいなくなって寂しいと 自分の事ばかり考えていたと気づきました。

  知らない人ばかりの中に行った健斗君の気持ちが、 どんなものか 初めて考えてみたのでした。


    勇太はすぐにまた手紙を書きました。

  今日、ゆりちゃんとあつし君がけんかして ゆりちゃんが泣いたこと

  給食は大好きな ハーブステーキだったこと

  ドッジボールをして自分のグループが勝ったこと

  そして最後に心を込めて書きました。

  早く仲良しの友達ができるといいね。

  がんばれ!



    その夜 夢の中に ゆうゆう太が出て来ました。

  とてもすっきりした顔をしていました。

  「だいぶ穴がふさがったよ。あともう少しだよ。」

  「ありがとう  。」

  勇太は笑いかけました。

  ゆうゆう太も笑ながらうなづきました。



   二人は夢の中が

  雨上がりのようにさわやかに晴れてくるのを感じていました。







                   竹の子姫No.3


  まるで雀のお宿のように 竹林の中に
  一軒の家がありました。
  その家には、ちょっと変わった女の子がおりました。
  生まれた時、猫の仔のようにてのひらに乗るくらい
  小さかったのです。 両親はまるでかぐや姫のようだと言い
  大切に育てました。
  それなのに3才になっても生まれた時のままで
  大きくなりませんでした。
  両親は心配して、魚や肉や貝お菓子まで色々食べさせましたが、まったく効果はありませんでした。


  ところが竹の子が出てくるようになると、それを指さして食べる食べると言うのでした。
  両親はさっそく竹の子で、竹の子ごはんを作って食べさせると、驚いたことに大きくなるのでした。
  毎日毎日食べるたびに、グングン伸びて両親を越える程大きくなりました。
  村の人達はどこまで伸びるかと噂をし
   女の子のことを 竹の子姫と呼ぶようになりました。


  竹の子姫は、竹の木ほど見上げるくらい大きくなりましたが
  竹の子が出なくなり、竹の子ごはんが食べられなくなると
  また少しずつ小さくなり、十五夜の頃には両親と同じくらいに
  紅葉の秋には子供くらいに、お正月には赤ん坊ほど
  寒い大雪の頃には、こけしほどに、桜の花が咲く時には
  もうすっかり元の小さな姿になっていました。


  村の人も両親も、それは驚き母親はガックリ肩を落とし
  どうしたものか考えこむのでした。


  それでも竹の子の季節になると、竹の子ごはんを食べてグングン大きくなりました。


  両親は何年もの間 村から村へ町から町へ
  医者をたずね診てもらいましたが、どんな名医でも竹の子姫の病気は治りませんでした。


  とにかく竹の子姫の好きな物なら、何でも好きなだけ食べさしました。
  おいしいお菓子が食べたいと言えば、遠くの町まで買いに行きました。


  竹の子姫は、おまんじゅうでもカステラでも、一度に十個でも二十個でも食べました。
  それでも桜の花の頃には、小さな姿に戻ってしまいました。


  そこで両親は、村はずれに住むとても知恵のあるおばあさんの所、に相談に行きました。
  おばあさんは話を聞いて考えこんだ後、母親に
  「この子をしばらくここに置いておきなさいよ」と言いました。
  両親は「それではお願いいたします」と、竹の子姫を置いて帰っていきました。


  竹の子が出るようになり、おばあさんは竹の子ごはんを作って食べさせてくれました。
  竹の子姫はまたグングン大きくなり、何日かするとおばあさんを越えるくらいの背丈になりました。


  するとおばあさんは竹の子ごはんを作らず、夕食に
  梅干しのおにぎりと納豆のまき寿司を出したのでした
  竹の子姫は
  「わたしは納豆と梅干しは嫌いで食べられないの」と言いました。
  するとおばあさんは
  「食べられないと言っても他に食べる物は
ないし、私はどちらも大好きだよ、体にもいいしな。」
  そう言っておいしそうに食べました。
  竹の子姫は夕食に手を付けず、お腹をすかせたまま眠ってしまいました。


  次の日、朝ごはんに出たのは、梅干しと納豆の入ったお茶漬けでした。
  竹の子姫は驚き、青い顔をして後づさりをしました。
  おばあさんはそれを見ると「それしか食べる物はないよ。」とすかさず言いました。


  「竹の子ごはんが食べたい。」
  と言ってもおばあさんは作ってくれません。
  目が回るくらいお腹がすいて、竹の子姫は仕方なくお茶碗に手を伸ばしました。


  納豆とごはんを一口、口の中に入れました。
  納豆のねばった糸が伸びたので、引き千切ろうと
  竹の子姫は思わず立ち上がり、部屋の中をグルグルと三回走り回り、やっとゴクリと飲み込みました。


  そして次に、梅干しを一口かじりました。
  すると、あまりの酸っぱさに飛び上がり、あまり高く飛びあがって、天井に思い切り頭をぶつけて倒れてしまいました。


  不思議な事にその時から、竹の子姫の身長は伸びも縮みもしなくなりました。


  それからというもの、竹の子姫はおばあちゃんの言った
  「体にいいんだよ。」
  その言葉が身に沁みて分かり
  納豆も梅干しも、どんどん食べるようになりました。



                    かいじん
                    怪耳ん ミミンガーに注意せよ!No.2


  みなさんは、お父さんとお風呂に入った時
  ガーゼのハンカチなどで 海ぼうず 風呂ぼうずを
  作ってもらったことはありませんか。
  ガーゼのハンカチを広げてお湯に浮べ
  下からそっと持ち上げて空気を入れ
  風船みたいに丸くする。
  ぼうずの丸い所をつぶすと
  ブシュ-と大きな音が出る。


  それはとても面白く楽しいのですが
  そのハンカチは、本当は耳を洗うためのものなです。
  前に私のお父さんがハンカチで耳をふいてくれながら
  お父さんが見たという、本当の話をしてくれました。


  いいか、人がお風呂に入る時
  髪の毛はシャンプーで洗うし
  体だって石けんで、沢山の泡でツルツルに
  きれいに洗ってもらえる。
  でも耳は、さあ次は自分の番かと思って待っていても
  顔を洗うと、お湯につかりそのまま忘れて
  風呂から上がっていってしまう。


  それが何回も続くと、呪いの耳となり
  夜、人が寝ている間に
  「耳(オレ)を洗ってくれない人なんかと一緒にいられない、もう離れたい、逃げ出したい」
  そして変身  怪耳んミミンガーとなるのです。


  怪耳んミミンガーは、薄黒い色に変わり
  耳たぶは長く伸び、耳全体が羽のように大きく広がって
  体の中で耳だけが、別の生き物のように動き出す。
  まるで、こうもりのように
  顔から離れて飛んで行こうと、バタバタ羽ばたくのです。
  そして
  「なんでオレだけ洗ってくれないんだ!オレを忘れる奴なんか大嫌いだー。」
  と叫んで一晩中羽ばたきもがき続けているのです


  だから布団やベッドの真ん中に寝ていても
  怪耳んミミンガーが羽ばたき人を浮かせて
  畳や床の上にころげ落としたり
  頭と足がさかさになって眠っていたりするのです。


  それでも、まだ洗ってもらえないと
  次には臭いにおいをまき散らす、怪耳ん ヘドロンミミンガーとなり
  夜の街に出た時や、映画館の中、おばけ屋敷、夜の遊園地とか暗い所では
  回りにいる人にパタパタと悪臭を送り
  回りの人を気絶させようとたくらんでいるのです。


  だから皆さん
  怪耳んミミンガーには注意せよ!
  怪耳ん ヘドロンミミンガーには厳重注意!!
  耳を忘れず洗いましょう
  お風呂にガーゼのハンカチ用意して
  耳のすみからすみまでも
  忘れずきれいに洗いましょう。



                     ホタルが光るわけ No.1



 
 昔 むかしホタルは、光らないただの黒い虫でした。
  もちろん飛ぶことも出来ません。
  みんなからは黒虫 黒虫と呼ばれていて
  夏の夜になると、小川のふちや田んぼの中 水路などで
  こっちの水は甘いとか、苦いとか飲み比べては
  あっちへ行き、こっちへ来ては
  そこにいた黒虫と
  おまえたちは向こうへ行けだの
  ここはオレたちの水だ、などと言い合い
  頭で突き、取っ組み合い、ワイワイガチガチャと
  そこいらじゅうで言い争い けんかばかりしていました。 


  それを空の上から見ていたのが星でした
  むし暑いだけでも気分が悪いのに
  こう毎晩毎晩けんかばかり
  大さわぎするのを見ていると
  気持ちがいら立ってくるのでした。


  ある夜とうとうがまんできなくなって
  けんかを止めさせようと
  1つの星が地上に降りてきていきました。


  ちょうどその時同じように
  黒虫のけんかをずっと見ていて
  どうにもがまんならなくなったカミナリさまが
  目がくらむほどの黄金色(こがねいろ)の稲光りと共に
  地面が割れるかと思うほど
  大きな 大きな声で
  うるさい!いいかげんにしろ!と どなりました。


  そして稲づまは、空からおりてきた星に しょうとつしてしまったのです。
  その瞬間 星はこなごなに砕け
  四方八方とび散っていきました。
  そして星のかけらは、黒虫たちのお尻に
  吸いつくようにくっついて、離れなくなってしまったのです。


  黒虫たちはびっくりして
  あまりのショックに言葉をのみ込んだまま
  すっかりおしゃべりが出来なくなってしまいました。


  そんなことになり
  夜になると黒虫のお尻にくっついた星は
  空に帰りたいよと必死で浮きあがり 飛んでみるのでした。
  でも小さくなってしまった星は力が足りなくて
  空まで帰ることはできません。
  ピカピカ光りながら、たよりなさそうに
  ふわ〜 ふわ〜 と 飛びつづけています。


  黒虫はといえば
  お尻にくっついた星のいく方へと引きずられながら
  また カミナリ様におこられやしないかと、心配しながら
  土のうえに、草の中へと降りたくてしかたないのです。


  こうして夏の夜は静かになり
  星たちはおだやかな気持ちで 美しく輝き
  小さく砕けた星を見守っています。
  そうして黒虫は、みんなから ホタルと呼ばれるようになったのです。



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