『GOOD DAY』


「エスナ」
「ぎゃー!?」
自分を呼ぶ声に不自然なまで動揺して、エスナはあたふたと暴れた。
ドアから入ってきたばかりのロクスは、その声に驚いて一瞬止まってしまったが、なにやらがさがさとエスナが動いたことで、我にかえった。
「すごい声を出すな、君は」
「ロクス、スト―ップ!!」
あわてて、ロクスが部屋に入ってくるのを、エスナは止めた。走ってきた勢いで、そのまま胸に激突する。
「?」
「え、えと・・・。ロクス、何か用ですか?」
この不自然な笑顔。
地上界を守護している間も、翼を捨ててからも、これほどまでに不自然な笑顔をしたことがあっただろうか。
「用がないと、きちゃいけないのか?」
強引に部屋の中に入ろうとするのを、エスナはしがみついて、止めた。
「そんなことないです!全然OKです!じゃあ、外行きましょう!!」
ぶらさがっても、ロクスだったらエスナをひきずってくらい、歩ける。
「あいにく、雨が降ってるぞ」
神様の、馬鹿!
元天使だろうがなんだろうが、一瞬本気で考えてしまう。
ついでに、天界の大天使様に、心の中で助けを求める。
それが、届いたのかどうか。
「ロクス!」
廊下から、聞きなれた声が聞こえてきた。
声の調子から考えて、どうやらお小言らしい。しかも、時間はけっこう長めの。
「ちっ」
なんのために、この部屋まで来たのかという、当初の目的を思い出して、ロクスは顔をしかめた。エスナの態度に、すっかり忘れていたが、自分は副教皇の、お小言から逃れるためにここまできたのだった。
「はーい!ここにいます!」
いつもは、何よりも
「今度はなにしたんですか?」
と、聞いてくるエスナだったが、今日ばっかりは違った。
副教皇に連れていかれるロクスに小さく手までふっている。
「はぁー、危ない・・・」
ロクスが出ていった部屋のドアを閉め、もたれかかりながら胸をなでおろす。
「ばれちゃうところだった・・・」
とんとんと、歩いてさっきまで作業していた場所に行く。
そこには、ぐちゃぐちゃとあわててロクスから隠したものがあった。
「・・・いつになったら、できるんだろ?」
きっと、それこそ神のみぞ知るのだろう。

「ロクス!」
「どうした?エスナ」
うれしそうに、自分を追いかけてくるエスナを、立ち止まってロクスは迎えた。
「できました!」
「なにが?」
と、言った質問をとりあえず、少し変更したかった。
(なんだ?)
差し出された物体。うれしそうににこにこしているところからして、これでエスナ的にはカンペキなのだろう。
「て、天界のものか?」
少なくとも、今まで生きてきた中でこんなものは見たことがない。
「違いますよ!」
背伸びして、ロクスの首にそれを巻こうとする。
背伸びしても、身長差で、届かないところを、ロクスが少しかがんで届くようにした。
「よいしょっと」
「君は僕を殺す気か?」
おもいっきり、首にまきつけてきたエスナに思わずそう言ってしまう。
はっきりいって、エスナにこれを引っ張るようにしてぶらさがられたら死ぬ。
首にまこうとしてくれているのは、わかるのだがいかにも手つきが危ない。
「あったかいですか?」
その言葉が聞こえなかったようで、エスナは満足げにロクスから手を離して、そう聞いてきた。
「は?」
「前、勇者の友達にマフラーの作り方、教えてもらったんです。・・・冬になる前からがんばったんですけど・・・」
そろそろ桜も満開かというこの季節までかかったわけか。
しかも、時間をかけてこのでき。
「ある意味、奇跡だな」
この、元天使の不器用さは。
「え?なんですか?」
無邪気にそう聞き返してきたエスナの額を軽くロクスはこついた。
「いや、なんでもない」
「うー、いたいです」
額を手で押さえながら、抗議するように見つめてきたエスナに、ロクスはその手をどけてそっと唇をよせた。
「わわっ」
あわてて、再び額に手をあてるエスナに笑って。
「これのお礼だ。あったかいよ、これは」
確かに、見た目は爆発的だが。
きっと、世界で一番あたたかいマフラー。
(ま、つけるのは来年からだけどな)
窓の外の陽射しの強さを見て、心のなかでロクスはそっとつぶやいた。




って言うか、「ぎゃー」です(笑)。かわいいし、不器用だし。大天使様にお願いしちゃうし。
なんと言っても副教皇様出てきて嬉しいですね〜(笑)。
なんだか嬉しいです、副教皇のお小言逃れにエスナのとこ来るのが。

もう、マフラー(仮)をまきつけるトコとかかわいくって。ああ、そうか死んじゃうよな〜エスナぶら下がられたら。
やはりアイリーンなのかな〜マフラー作り教えたのって…(笑)。
ED後のほのぼので無邪気な感じがいいですね〜。
さやさん、いつもありがとう〜!!


BACK