『12年前の任務』 ―――ぐいっ。 「う、きゃんッ!…や、やめてください〜」 「へえ、おれ、こんなん背負ってるヤツ、初めて見たぜ」 「やですってば。痛いですう―――…そうじゃないんですッ、私はあなたにい〜…」 「は?なんだよ」 ルディエールはぐいぐい引っ張っていたやわらかいそれをようやく放した。エスナはもう引っ張られないように急いで数歩下がる。 「……お願いがあってきたんですっ。ええと。…私は天使のエスナって言います」 「だっせ〜。天使なんているわけないだろ」 ――間。 「……でもお…そうなんですッ」 ――こんなわけで話しが本題に入るにはかなり時間が掛かったが…。 「いいぜ、お前おもしろいからな、やってやるよ」 「ホントです!?…ありがとう!ルディ」
「お疲れ様です。天使様」 「天使様〜?浮かない顔ですねえ?」 気の上で足をぶらぶらさせている、小さい翼。妖精二人が声をかけると浮かない顔のまま…見上げる。 「ローザ…シェリー……。ロクスもルディもひどいですっ。カエル乗っけたり、羽引っ張ったり…」 「ああ〜痛かったですね〜。大丈夫ですか〜?」 「人間には…そうですね、天使様は珍しいですから」 なだめる妖精二人。顔を見合わせて、それから。 「でもすごいですよ、天使様。あの長いセリフをよく覚えましたっ。偉いですよ」 「(偉いって…)」 「!?ホント?」 シェリーに褒められてぱっと顔を明るくする。 「だってラファエル様にも褒めてもらえるんですっ。頑張りました」 「ふふ、じゃあ……天使様。次は女の子のところです。…名前は――…」
「―――ダーナ・ウン・ジャック…っと。………ええ―――いっ!!」 がつんっ!―――がらがらがっしゃあああん。 「ひゃっ…!??うわっ!………ったあ〜…」 「あ〜。ごめんごめん。失敗だわ…ちょっと〜平気?生きてる!?」 エスナはくらくらする頭を押さえて立ちあがった。何かが降ってきて本に激突され…。 アイリーンはそんなこともお構いなしに遥か彼方から声をかけてきた。 「う〜ん。これはっ……ふんふん、なるほど。座標まちがえたわねっ。…あんな遠くに現れるなんて」 「う、痛い…(ビンです…)」 エスナの頭に落っこちてきたのはビンだった。 「それ?ポーションよ。…使えば?………ってか、アンタ。頭おかしいわけ?そんなんつけてさ」 もちろん『そんなん』とは翼のこと。 「私は…天使のエスナというものです…」 「はあ?天使ィ〜?」 「私、アイリーンにお願いがあって……うわわっ!!」 「おもしろいわアンタ。…私の実験台になってよ」 翼を物珍しそうに観察始めるアイリーン。エスナは暫く話しを本題にもっていけなかった。 「きゃ――。違いますう〜!!」 ――その頃ロクスは――…。 「おい、お前」 「はいですう。ああ、ロクスさま?ちゃ〜んとお勉強やらないとだめですう」 「うるさいな!お前には関係ないだろ。…いいから、廊下に司教がいないか見てこいよ。んで、エスナ呼んで来い、遊びに行くぞ」 外出するところだった。 ――まだ、アルカヤは平和である。 |
12年くらい前に任務が始まっていたら――です。 羽引っ張られても痛くないだろうけど…。 BACK |