‡エスナピンチ第三弾(何時までやるつもりやねん) 〜酒とチョコの危険な誘惑(爆)〜
翼を無くしても、何処となくふわふわしながら、エスナは街を歩いていた。今日は収穫祭の前とだけあって聖都の街は各国の多彩な食物が所狭しに並べられている。何時も一緒に遊んでいる子供たちは、家族の手伝いがあるのからと行って家に帰り、ロクスはロクスで布教。。。。基、副教皇の説教を受けている筈であるからして、エスナはやる事もなく、ぶらぶらと買い物に来たのだ。
「おっと!其処の可愛いお嬢さん、この名産品、うぃすきぃーぼんぼなんてどうだい?」
見た事もないような珍品にばかり目を取られていると、急に声をかけられ、エスナは振り返った。何故、アルカヤにウィスキーボンボがあるのか、っという突っ込みは、この際忘れて頂きたい(爆)。
「うぃすきぃーぼんぼ。。。?なんですか?それは。」
「知らないのかい?そりゃぁーもったいない!これは珍品中の珍品と言われる、この大陸外から取り寄せたチョコレートなんだよ。」
「そうなんですか。。。でも、そんな高そうな物買うお金ないです。」
「何、今日は収穫祭なんだ。それ、これはプレゼントしてあげよう。お嬢さんは可愛いからな。」
はぁ。。。。。っとなんだかしっくりと来ない返事をすると、そんなエスナには構わず、店主はエスナに小さな包みに入ったチョコレートを渡した。が、それはエスナの手に渡る前に誰かによって取られる。
「君にこれはまだ早い。」
「あっ。。。。。え!?ロクス!?なんでこんな所にいるんですか?」
顔を上げると、其処にはなんだか不機嫌な顔をしたロクスが立っていて。
「収穫祭まで副教皇の説教聴いてられるか。ったく、収穫祭ってたら各国から危ない物とかも渡ってくる日だってのに無防備に外にでるな!」
説教中にふと、窓の外に目をやって。其処から見える筈のエスナの姿が見えなくて、心配でたまらなくて探しに来たなどとは口が裂けても言えない。
「ぅぅ。。。。。でも、なんでそれ、食べちゃ駄目なんですか?」
「君に酒を飲ませるくらいだったら副教皇の説教を一週間聞いてた方がましだ。」
「えぇー!?そんな事ないですよ〜。飲んだ事もないのに、どうして解るんですか!?」
(だから余計たちが悪いんだ!!!!!)
時は、まだエスナが天使で、地上界勤務から1年程経った頃の事である。
[†]
「ロクス〜、何処に行くんですか〜?」
「酒場に決まってるだろう。君は邪魔だから着いてくるなよ。」
空からふわりと舞い降りてきた天使を見てロクスは不機嫌そうに答えた。どうせ着いてきてもエスナの姿は他の人間には見えない訳で、問題など得に生じなかったのだが、無邪気な微笑みとは対照的に、その背より伸びる無機質な翼が何故かロクスを苛立たせた。
「でも。。。今日はロクスに同行するつもりで来たんですけど。。。どうしても駄目ですか?」
「駄目だ。」
「むぅ。。。。。なんでですか〜?」
「。。。。。。。君に酒は飲めないだろう?酒を飲まない奴を酒場に連れて行っても面白くない。」
本当はそんな事問題じゃないけど、エスナは暫く何か考え込んだかと思うとぱっと閃いたように顔を上げた。
「じゃあ、お酒を飲めればいいんですね?」
「は?」
「大丈夫です!アストラル体になれば、お酒飲めますから、今日は付き合います!」
どうやら、飲めるか飲めないかっと言う問題を勘違いしているようだが、すっかりやる気のエスナを見て、ロクスは少し悪戯っぽく笑った。
「ふーん。じゃあ、着いてきてもいいぞ。けど、お前が酔い潰れても、僕は面倒見ないからな。」
「はい〜。解ったです。」
本当に解っているのかは可也不明な所だが、間もなくして二人は酒場に着いた。酒場には明らかに似合わないエスナの形相は周りの注目を浴びている。
「をっ。可愛いねぇ。。。。お嬢さん、ちょっとこっち来て一杯やらないか?」
(。。。。。。。。。ギロッ)
「。。。。をっと。。。ちっ。男連れか。」
やっぱり連れて来ない方が良かったか。。。と思っても既に後の祭りである。エスナはエスナで警戒心もなくほけっと首を傾げるばかり。だが、ロクスの本当の災難はこれからだった。
「うぇ。。。。。美味しくないです〜。」
「だから言っただろう?君には無理だって。」
差し出された透明な液体をペロっと舐めただけで顔を紅くしてうつ伏せてしまうエスナ。あまりに予想通りな展開にこちらが苦笑してしまう。
「むぅ。。。。。そんな事はありません!」
「おっ。。。おい!待て!一気に飲むな!」
からかわれて向きになったのか、エスナは巵を手に取ると、液体を一気に飲み干した。ちなみに、酒の名前は鬼殺し(爆)プロ(?)でも一度には飲まない酒である。
「。。。。。。。」
「おいっ!大丈夫か!」
空になった巵をことりとテーブルに置き、黙り込んだエスナに恐る恐るロクスは話し掛けた。
「平気です〜。」
「。。。。酔っている奴は大体そう言うんだ。」
にっこり微笑んで首に腕を回してくるエスナを見て言う。でも、実はまんざらでもなかったり。(爆)
「酔ってません!!!!」
「。。。。。(汗)」
「。。。。。(うるっ)」
(今度は何だ!??)
怒鳴り散らしたかと思うと行き成り涙目になるエスナ。なんとなく嫌な予感のするロクス。
「ロクス。。。。。また酒場に来たんですね。。。」
「何言ってるんだ?今更。君が勝手に着いて来たんだろう?」
「酷いです〜!!任務は受けてくれなくっても他の女の方と遊ぶ時間はあるんですね〜!!」
「をっおい!そんな大声で叫ぶな!」
まぁ、身から出た錆なのだが。当然、周りの注目は今や全て二人に注がれている。
「ロクスが遊んでばかりいるから、レベルの差が他の勇者の方よりどんどん開くし、それで私が同行をしなければならない事になるんですよ〜!!!??」
「なっ!うるさいな、他の勇者の方がレベルとやらが高いんなら、そいつらに頼めばいいだろう!!??」
酔っ払いの話しなど、まともに信じる物ではないが、相手がエスナなだけにそうも行かない。自分に同行するのは、レベルを上げる為だと言われて、理性を保てなくなってしまった。
「うりゅぅ〜〜〜。。。。そんな言い方酷いです〜!!!!!」
「わっ!泣くなって!!」
ねぇ。見てみて。ロクス様ってば女の子泣かせてるわ。
可愛そうに、きっとロクスの本性を知らなかったんだなぁ。。。
純情そうだものね〜。
きっと、偶然教会に祈りを捧げに行った時に、脅かされて。。。
周りではどんどん勝手に話しが飛躍されているようである。
「。。。。。。。。。ちっ。」
「きゃっ!!何するんですか〜?離して下さい〜〜!!!」
このままでは酒の肴にされるだけだと確信したロクスはエスナを軽々抱え上げると、客全員の視線を浴びながら不機嫌そうに酒場を出た。
「まったく、あんな目立つ事するな!酒場には二度と連れて行かないからな。」
イライラとした気持ちのまま、足で乱暴に宿屋のドアを閉めた後、ロクスはエスナを降ろそうとした。ところがエスナはロクスの法衣を掴んだまま離そうとしない。
「エスナ。。。。。?」
「。。。。。。」
「。。。。????」
「。。。。。zzzz。」
(寝るなーーーーーーー!!!!!!!!!!!!)
ロクスの心の叫びを知ってか知らずか、エスナは熟睡モードに突入していたのだ。
「まったく。。。。こいつに酒は飲ませられないな。」
そう言ってエスナをベットの上に寝かせる。淡い金髪にふわりと包まれた寝顔はなんとも可愛らしかった。
それで私が同行をしなければならない事になるんですよ〜!!!??
(。。。。。。。馬鹿らしい。何を気にしてるんだ?僕は。)
自分に自嘲してその場を離れようとまだ法衣を握り締めたままのエスナの手を解く。
「うっ。。。。。」
「ん?」
「いや。。。。。いっちゃ嫌です〜〜〜!!!!」
「!!!!!!」
寝てたんじゃないのか!!!??と言う驚きと、エスナから発せられた大胆発言(?)に思いっきり驚きおののくロクス。エスナはと言うと、潤った瞳で法衣を掴んだまま見つめてくる。どう考えても尋常じゃない。普段エスナはそんなキャラじゃないし、第一。。。。
こいつには色気と言う言葉の欠片もなかった筈だ!!!!!!(爆)
やはり酒で酔っているとしか思えない。見れば顔も火照っている気がするし。。。それがまた一段と色っぽかったりするのだが。。。って何言ってるんだ!!??僕は!!っと、ロクスの平常心はどんどん失われつつあった。
「おい!エスナ!しっかりしろ!」
「ちゃんと良い子にしてたんですよ〜。。。。私、昨日も。。。一昨日も。。。ずっと前も。。。」
「何。。。。言ってるんだ?」
「これからも良い子にしますからぁ。。。。。」
「。。。。。。」
虚ろな眼で涙を流しながら話すエスナ。もはや独白に近かったのだが、ロクスは釘付けになったまま動く事ができなかった。
「置いて行かない下さい。。。。ラファエル様ぁ。。。。」
「。。。。っ」
自分を誰と勘違いしているのかは解らなかったが、我慢できなかった。只、その瞳から流れる涙を止めたくて、ロクスは衝動的にエスナに口付けていた。
「。。。。。。ん。。。。」
絡まる吐息の中で、小さな声が漏れる。きつく握り締られていた手が解けるのを感じると、ロクスはやっと長い口付けを離した。
(眠ったか。。。。)
規則正しく呼吸を繰り返して、エスナ眠りについたのを確かめると、ロクスは残っていた目元の涙を拭ってから部屋を出た。
「おやすみ。。。。エスナ。」
[†]
「ロクス〜。。。?ロクス!!!!」
「。。。あ?」
「何ぼ〜っとしてるんですか?」
「。。。あぁ。。。なんでもない。で?なんなんだ?」
「お祭り、見て帰りませんか?」
「ったく、何時まで経っても君は子供だな。まぁ、いいさ。」
「わ〜い。有難うございます。」
太陽は既に沈み、収穫祭は絶頂を迎える頃だった。多くの家族が子供を連れて街中へと集る。その様子を嬉しそうに、それでいてなんとなく寂しそうに見るエスナに気づく。
「寂しいのか?エスナ。」
「。。。。え?。。。そんな事ないです。」
そう言って笑う。無理するなって言いたかったが、そんな事言えるような柄でもなくて。だけど、エスナが親の元へと帰る子供たちを見て、なんとなく寂しくなって街中に出た事ぐらい想像できた。
「只。。。いいなぁ。。。。って思ったんです。。。。家族って。」
「。。。。。。」
「でも、いいんです。今は、ロクスが私の家族ですから。」
「!!!!!」
(意味解ってるのか。。。。。エスナ。。。。)
ロクスの心情を理解できる筈もなく、エスナは嬉しそうに上る炎の光を見詰めていた。今は、このままでもいいか。。。とロクスは思う。二人が本当の家族になれる日もそう遠くはない。。。。かもしれない。
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