『笑い声』 天使様〜事件です〜〜。 天使様〜報告ですう〜。 天使さま、勇者さまがぁ…〜。 てんしさまぁ〜〜〜 てんしさま〜〜〜 ……… …… ―――――――――――――――――― Dear 天使様 フロリンダですう。突然のお手紙、ごめんなさいです。 フロリンちょっと疲れちゃいました。 ちょっとお休みが欲しいです。 探さないでくださいね。 フロリン ―――――――――――――――――― 「ロクス!フロリンダが!」 天使がそう言いながら文字通り飛んできたのは昨日の話。 「……ばっかりに、妖精たちはこんなに苦労して……」 思いつめた表情で、最後は聞こえないほど小さい声で。 時折りみせるエスナの一面。それは守護するものとしてはあまりにも脆弱で。 だから「探しておいてやる」、なんて言葉が自然と口から出たわけで。無論心当たりはあるわけなく。 自分のことながら無責任な発言だと思う。ただ、こんなエスナの顔は見たくなかった。 しかし昨日の今日、任務先へ向かう途中で、こうも簡単に探しものに出会うとは。 いつからアルカヤはこんなに狭かったのだろう。偶然なんて言葉はあまり好きじゃない。 それは最初、魔物かと思った。 歩を進める自分の視界の隅、林の奥、白い絨毯の中で蠢くものがいた。 雪の中に出たり入ったりしながら、はしゃぎ回る白い熊(のようなもの)。 近づいてみると、中身はよく顔の知った妖精と確認できる。 当の本人はこちらに気がついた様子もみせず、遊びに夢中のようだった。 「ん!!ぷはぁー!」 キャハハハハ―― 驚き顔のウサギを後にし、再び雪の中に消える。 雪の中を移動して、出しては引っ込む熊の頭。 撒き散らした雪が光を反射して、小さな星空をかたどった。 ふと我に返る。いつの間にか木陰に隠れフロリンダの様子を窺っている自分に気がつく。 「(これじゃあ覗きだな…)」 苦笑し、ここを後にしようとする。さて、どうやってエスナにこのことを伝えるか。 その時、僅かな空気の振動を感じた。何も考える必要もなく、天使が虚空に姿を現わす。 まるで狙ったようなタイミングだなと思う。それ以上は考えないことにした。 「ロ…、」 ロクスは立てた指を一本、口の前にもっていく。上を見ろという合図ではない。 エスナは雪上に降りたち、声をひそめて、 「ロクスこんな所でどうしました?」 さらに沈んだ声で続ける。 「……、まだフロリンダ見つかっていないんです。また探しに――」 「フロリンダならそこにいる」 目でその場所を伝える。 「あっ、フロ……。私の気も知らないで……」 そっと木の影から様子を覗く。そこはさっきまで自分がいたところ。 沈んだ空気は、怒った表情に変わり、そしてまたすぐ変化する。 「よかった…」 フロリンダを見守るエスナの姿。 まるで天使のような微笑。って実際に天使なのか。 横顔を眺める僕に気づき、天使はにっこり笑って口に指一本。 「がおぉ〜〜!」 子熊が子ウサギを追い回して。 「はい、次はあなたが鬼ですぅ〜」 キャァハハハ ――― 「ロクスにいちゃん!」 突然の呼び声に、目の焦点を合わせると一人の男の子。 毎日教会にやって来るすでに顔なじみの子。 腕を思いっきり前に伸ばしてグーの形。 こちらも苦笑いしながら、同じように返してやる。 男の子は満足したような微笑みでエスナのもとに駆け寄った。 「じゃあ次はねえ〜誰が鬼かな〜」 子供達と遊ぶエスナの横顔。そこから回想した記憶はいつのことだっただろう。 あの後、自分達はどうしたのだろう? そっと後にしたのだろうか、フロリンダの遊びに加わったのだろうか。 微笑。 いや、そんなことはどうでもいいか。 空を眺める。 あの日と同じ、澄み渡った青がそこにあった。 |
雪の中で遊ぶフロリンがかわい〜〜!!遊んでいるとことかすごく想像できますね〜…。 フロリンが行方不明になって、落ち込むエスナにロクスが探してやるってのもいいですね。面倒見がいいなあ。 今作でも妖精行方不明やってほしかったなあ〜…。 ロクスの「偶然は好きじゃない」っての。らしいかんじがします。 でも起きてしまったらそれは必然だったのですよ(謎)。 子供と遊んでいるとこの回想だったんですね。あれから……きっと見守っていたんじゃないでしょうか? BACK |