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刀剣乱舞 山姥切長義

私が誕生日なので(笑)。


いつもより結構長くなった気がする小説↓

――――――――――――――――――――――

「………。ああ、それで?」

「なんだよ、聞いていなかったのか?」
「本科にしては珍しいな」

「聞いていないわけではないよ」
 息をつき、額に手を当てる。銀色の髪が指の間からさらりとこぼれた。
 とある夕刻、山姥切長義の部屋にて。数名の刀剣男士が詰めていた。
「大体、何故俺の部屋なんだ」
「主役だろう。お前が」
「……。今まで誰の話をしていたのかわからないのか、偽物くん?…全く」

「―――――よし、なら決まりだね。長義くんがいいなら」
「燭台切、俺は「いい」とは一言も口にしていないが?」
「まあまあ、長義がそういう物言いの時はだいたい「いい」方だろう?」
 そう手をひらひら振りながら言ったのは薬研藤四郎だ。

 そう、数名の男士たちで話がまとまっていくのを長義は一歩引いて聞いていた。
「(なんだ…。偽物くん、随分楽しそうだな…。―――まぁ、いい)」




* * * * * * *




 ――――そしてその数日後。
 冬の始まりを告げる綿のような虫が微かな風に乗ってゆるりと通過していった。

「あれ?」

「ん〜?」

「…っかしいなぁ…」

 厚手の靴下を履いていても冷たさが伝わってくる縁側を歩きながら辺りを見回している。


 審神者部屋の障子を滑らせると、部屋の中にはいつものように近侍用端末を操作しながら何かを書き取っている銀髪の刀剣男士が机についていた。
「あぁ…長義、いた」
「なんだ?そんな声を出して。俺がここに居るのは珍しくもないだろう」
「いや……あの、そうじゃなくて」
 長義の隣に膝をつき、座り込んで。

「誰も居ないんだけど!?」

「ああ、そうだな」
「え、驚かないの?皆して出かけてるとかある!?」
「通常時ならば…ないだろうね」
「でしょ?」
 「当番表見て来ようかな」なんて言い出すから、今まで軽く受け流していた長義は吹き出した。
「ふ、全く君は。彼らも大の大人だよ。子供を探すみたいに騒ぐ事ではないだろう?」
「……あれ? ちょう、ぎ?…なんか知ってるの?」

 そうだ、そういえば何も提案をしてこない。
 本当に困っているのがわかれば、いつもなら――――。

「ああ、……静かだろう?今この本丸内には誰も居ない」
「え、なんで」
「完全に空けるのは良くないからね、何振りかは遠巻きに見ているが。あとの奴らは買い出しやらなにやら―――まぁ、とにかく君が心配に思うことなどないよ」
 目の前の濃い色の髪を指で掬い、そのまま頬に触れ。
「なんだ、随分冷えているな。そんなに外を出歩いていたのか?」
「いや、だって。だっれもいないから」

 ―――そうだ、では何故。

「いや、じゃあ…長義はなんでここに居るの?」
「は?おい…。なんで?などと。……失礼な物言いだねぇ。彼らの好意を無にする気かな」
 まだわからないのかとため息混じりに長義は審神者に向き直った。
「好意?」
「……」
 そのままオウム返しした審神者に長義は苦笑し。
 そ、と顔を近づけ、耳元で。


「――――は?」
「…と言う訳だよ。全く。……まぁ、安心すると良い。夕刻には戻ると言っていたからね」


「……えぇ…」
 途端、途端何故か顔が熱くなって。
 多分恥ずかしい、に近い感情かもしれない。
「おや、どうかしたかな」
「ん、だって、長義と、二人きりなんて、なかった、し」

 額に手を当てて、少し目を逸らして。
「(へえ……)」
 ――――これは面白いなと長義は思う。

 そう、この本丸の建物内には現在、審神者と山姥切長義しかいない。
 長義が言った通り、遠巻きに警備している者はいるが。



『今年の誕生日はさ、一日、長義と二人きりにしてやろうぜ?何、夕餉に騒げばいいじゃねえか』
『確かにその日ってたまたま休息日だからねー』

 そう、誰かが言い出した。
 それに反対する男士も何振りかは居たが、結局皆納得した(否、させた)ようで、万屋街に出かけたりしている。



「それで?何か俺にしてほしい事は?…この通り皆は居ない。好きにお願いしてくれていいよ」
「えー……。そんないきなり言われても」
 落ち着きのない子供のように肩を、視線を動かして。
「(本当に面白いね。俺と部屋に二人きりなど、いつもの事だろうに)」

「ん〜……。じゃ、じゃあ…」
「………」
 視線を真正面の長義へ渡し、少し俯いているからか、意識せず上目遣いのような目で。
「いつもと同じに傍にいて欲しい…かな。 長義が近くにいてくれるの、もう当たり前になっちゃったけど…。そういうの、改めて嬉しいって思いたい」
「へえ?」
「本丸の中、散歩するのでもいいし。このままこの部屋で話したりごろごろしながら髪梳いてもらうのもいいかなーって」
「…確かにいつもの君と変わらないな」
「でも、長義独り占めできるんでしょ?これ以上ないじゃない?」
「この俺を、か?まぁ、そうかもしれないが。…いいのかな?」
 「いいの」と広く開いた内番服の上着の中に寄り添って、青色のシャツに顔をこすり付ける。
「いつもと同じだけど、ちょっと違って。それでいいよ私は。…んー……ふふ」
 長義はゆっくりとその頭を、髪を撫でながら、ふ、と息をついた。
「なんだ、俺の妻が可愛くおねだりでもしてくるのかと思ったが…? これではいつものままだな。まぁ、らしいと言えばそうかもしれないけどね」
「ぶっ…!何言ってん…!?」
「ああ、面白い顔。君はこうでなくては」
「えー、何それ」
「なら俺の妻の願いだ。叶えてやろうか。……夫婦水入らず、とかいうやつかな」
 軽く片膝を立て、審神者を寄りかからせるように。


 
「――――ね、長義は、さ」

「何かな」
 ゆっくりと髪を梳き。
 暫く静かな時間を楽しんでいたが、ふと、声を上げる。
「意外だったと思う? …私とこうなるの」
「………。さぁ、どうかな」
「あーそういう言い方だよね。 じゃ「俺の正史だ」って言ってくれたんだもん。そんな感じに取っとく。この山姥切長義は私だけのだーって」
「ああ、ご自由に」
 顔は見えないが、ぴったりと寄り添った身体が笑って揺れる。
「…それで?続きがあるのだろう?」
「ああ。 ん。…清光がね。「一番そういうのなさそうだった」って言って来たんだよ」
「へぇ?…それでは君はどう思っているのかな、俺を」
 それを受けて、少し考えるように、頭が上がった。
「確かに、そうかなとは思うなぁ……。長義って誰か一人をってなさげとは思った。あまり他と関わるの好きそうじゃないって言うか。 あと、私は―――…正直に言うと、付喪神となんて、無理って思ってたし」
「………」
「その辺、長義はすごく慎重な性格だから。…きっと悩んだんだろうなとも思う」
「………」

 ――――ああ、確かに。
 戦の最中ではある、浮かれていると政府には取られるかもしれない。
 だが、審神者としても、一人の女人としても俺が守ってやれば問題はない。文句など言わせてなるものか。

 いや、問題はそこではない。
 …彼女を俺に縛るという事は、彼女に次の選択肢を与えないという事だ。
 それはもう人では無くなってしまう。きっと。

 …だが、許せなかった。
 今の生を終え、次があるであろう彼女が、俺の妻が。他の者に向くであろう事が。
 俺たち刀剣男士には次がない。元々がモノであり、付喪神、として顕現されたのだから。来世など、そんなものがあるわけがない。


「確かにね、…見ていなければ良かったと後悔した日もあったよ。君をね。 ……俺の主がどんな人間なのか、刀剣男士となった俺が仕えるべき人間なのか…などと」
 息交じりに言った言葉に審神者は少し顔を上げる。そこで、漸く青い瞳と栗色の瞳が混ざった。
「モノは…刀は扱う人間の意思で振るわれ、飾られ、譲渡され…時には廃棄される。まぁ、それは当然だとは思うよ。俺とて、刀の時は主が何度も変わっているからね。だが、この主は嫌だ。この扱いはやめろ、などと言う権利はない」
「……ん」
「…では何故、君を見てしまったんだろうね。別に、「ああ、この審神者が次の俺の主、か」で良かった筈だった。俺は顕現されてからこちらに来るまで間があったからね。そういった意味では身体を持つ反動の好奇心…だけではないだろう」
「でも、やっぱり長義の性格ってのもあるよね?長く付き合うかもしれないんだもん、その主となる私が気になるのは当然、っていうか。男士たちも命かかってるし」
「だろうね。…そう、君を知ろうとしなければ、この感情は生まれなかっただろう」
「……嫌?」
「まさか。………―――は。…堂々巡りだな。やれやれ。この感情が…こんなにも厄介だとは思わなかったよ。まさか俺に、ねぇ」
 長い前髪をかき上げ、ふ、と息をつく。


「長義」
「うん?」
「…私は全然大丈夫なんだけど。前も言ったかもしれないけど」
「………ああ」
「多分、多分長義は長義で、人である私と一緒になるの、私を心配して悩んだろうけど。私もこれから人より長く生きられる長義のこれからをもらっちゃうわけだし。ほら、同じじゃない?」
「………」
 そんなことより、と、もう一度その胸に寄りそい、肩に額を付け。
「私はこの山姥切長義が私の事を離さない言ってくれたのが一番。 ねえ、長義。その手のつげ櫛は共にずっといよう、問題事を共に解きほぐそう、なんだよね?じゃあ私はそれで嬉しい。戦いの間でも、いつか戦いが終わった後も、ずっと」
「ああ…。君の幸は俺と共にある事なのだからね。俺以外の他の誰と歩んでも、幸せになどなれやしないよ」
 深く、複雑な色の青い瞳が細められて。
 指先は頬にゆっくりと触れる。
「すごい自信」
「当然だろう?……―――確かに後悔はした。この感情は俺の本質から外れる気がしてね…。だが、実際は良かったのだと思うよ。この俺の想いを注げる相手がいるという事はね」
 頬から唇へ指は辿り。
「勿論、…その幸は俺にとっても、だ。君以外の女人からの想いなど必要としない、邪魔なだけかな。もし…他に譲渡されても、俺は全て叩き斬って君の元に戻って来よう」
「ふふ…もう、物騒だなぁ…」
「おや、刀剣男士は…付喪神と言うものは案外そういうものだよ。――――ま、俺が、かもしれないけどねぇ…?」



「――――ああ、加州清光の「なさそうだったのに」…は以前の俺、ここに配属された当初の俺を評しての事だろう?」
 髪をひと房、指に掬い、思い出したかのように声を上げる。
「あー……そうだなぁ。それっぽい、ってそう言う事だもんね。監査官の時とか、ここに来てからの態度とか」

 当時の事を思い出すように、少し視線を上に向けて。
 ――――あの頃の長義は出来るだけ他と関わらないようにしている、ように見えた。
 話をしないわけではない。むしろ気が付かれないところで気を回していて。だから男士によっては「とっつきにくい奴」だと思われているようだった。
 だが、この本丸にとって最初の政府からの刀であったから審神者はよく話しかけていた。相談も、と。

「…ならば、その通りなのだろう。俺も人の子にはそういった興味はなかったからね」
 ひらり、手を振り。
「(ああ、だからどこか線を引いていた感じだったんだ…。世話焼きな所はあるけど、どこか)」
「貴女が、以前の俺にはなかったんだ。…ならば、その評価は間違ってはいないな」
「! ………ッ」
「どうした? あぁ…?俺は素直に言ったつもりだが?そんなに感激する事かな?」
「長義…!」
 寄り添っていて、力を込められて押されればそのまま畳に倒れることになる。
 審神者は寄り添ったまま長義をそのまま後ろに押すように抱きついた。
「んー…ふふ」
 ――――長義が引いていた「線」は私だけには今はない。


「! っと。 ………おや、襲われているのかな、この状況は」

 だがそれも、多分分かっていたのだろう、と思う。
「…長義ぃ」
「はは…」
「大好き…」
「…ああ」
 後ろに倒され、長義は驚くような短い声を上げたが、笑い混じりの声としっかりとこちらに回されたままの腕と。
 近くに来た耳元に、真名を囁く。


「………。貴女が生を受けた日に改めて感謝を。…この先もずっと伝え続けよう。俺の――…」






…というわけで長義に甘えて蜜柑を剥いてもらってあーんしてもらう(笑)。


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