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「光彩が人それぞれ違う事に気が付き、お互いの目を覗き込む。真剣に見つめ合っているところを第三者にツッコまれる」
…とありまして。それをネタにしてみた。
そして考えながら書く小説。
――――――――――――――――――――――――――
とても晴れているが湿気は少ない所為か、縁側の日陰になっている場所は涼しい風が通る。木の上の方で葉が揺れている。
ことり、と微かな音をさせて傍らにマグカップを置いた。
――――そろそろ時間だ。
そちらを眺めていると畑仕事を終わりにしてきた二振りがこちらに向かって歩いてきていた。
井戸で手や顔を洗って来たのだろう。その手には手拭いが握られている。
「お疲れー、長義、薬研」
「…あー…はいはい」
「よ、大将、見回りか」
「うん、二人におやつ届けに来たのもあるけど。ここなら通るし」
なるほど、審神者の傍らにある盆の上の皿には菓子。それに三人分の飲み物が置いてあった。
少し影で暗くなる。隣に長義が腰をかけたらしい。
「あぁ…ここは涼しいな。木漏れ日も入って良い…」
言いながら皿にいくつか乗った菓子に手を伸ばし、口に放った。
それからふと、視線を感じて。
「………。 あぁ、君が畑に来なくて良かったよ」
わざとらしく少し声を上げ、手をひらひらと振る。
「! え、なんでー」
「……わからないか? 君が来たら今の時間に終わってないだろうからねぇ」
「うーわ、何でそういうこと言うかなー」
そのやり取りを聞きながら薬研は声を上げて笑いながら皿に手を伸ばした。「お、うまいな。やっぱり作業後は塩気がある方がいいよな」などと言いながら。
「まぁ、大人しくしていてくれ、って事かな」
「ん! 痛っ?」
風に髪があおられ、同時に目に痛みを感じて手を当てる。
見せてみろ、という前に長義の手が伸びて来たのだが、何のことはない。砂が入ったやらで涙が出ているわけではなかった。
「あ、大丈夫、髪がちょっと目に当たっただけだって」
「そのようだね」
「―――目か。あー…そういえば、瞳の虹彩は人により違うらしいな」
風に揺れる自分の前髪をつい、と指でつまみながら薬研は思い出したかのように言う。
「……。まぁ、だろうね。同じ瞳がいるわけがない」
「おぉ?試しに誰かの瞳でも見たことがあるのか?長義」
「…なんだ?そんな事、確認せずともそうだろう。全く妙なことを言い出す…… な…?」
傍らから視線を感じてそちらに目をやると、じ、と見つめられていた。
「…何かな。主」
「長義の目、青が綺麗だよねー。濃い青と薄い青とさ」
「は?何を今更」
「ね、男士も人と同じような目なんだよね」
「ああ、身体の造りはそう変わらないと思うよ。まぁ、恐らく、だけどね」
「でもま、解剖した事があるわけじゃないしなぁ」
「うわ、なんか怖いこと言ってる人がいるー」
「はは、お、そうだ大将。そんなに見たいなら俺の目、見てみるか?」
「え、見る見る。どんなん?」
「………は」
興味ない、を顔に張り付けたように目を逸らし、長義は盆の上の飲み物に手を伸ばした。
横目でちらりとそちらに視線を動かす。
縁側に腰かけた審神者と、庭に立っている薬研は今、ほぼ同じ目線だ。いつもは薬研がかなり低いのだが、今は。
その目線の高さはいつも――――。
* * * * * * * *
「(だろうな、ってさ)」
――――薬研藤四郎は頭の上で腕を組みながら縁側を後にしていた。
「いや、面白いな。長義の奴、別に取って食うわけじゃないのに大将の事となるとああだしなぁ。鶴丸じゃないがちょっかい出したくなるんだよなぁ、これが」
* * * * * * * *
「ん、…ちょう、ぎ?」
視線の目の前は青い瞳。薬研の濃い色の瞳ではない。
頬に手を添えられ、顔は縁側ではなく、隣の長義の方へ向いていた。
「どうぞ、俺の瞳ならいくらでも見ればいいよ」
「………。わー青い」
「(いやいや、今のこの流れでそれなのか? まぁ大将らしい感想だが……)」
「……。全く君は…」
目の前、という事は長義の視界も今、審神者の瞳が目の前だ。
少し薄めの栗色の瞳が、今は陽の光でもっと薄く色を変えている。それに伴って黒い瞳孔がきゅ、と小さくなった。
ざ、と小さく土を踏む音が耳に届く。同時に薬研の気配が遠くなる。
――――ああ、してやられたな、と思う。
「(全く、俺をたきつけたつもりか。薬研の奴め。……ああ、いいよ。乗ってやろう)」
「すごい深い色。きれいだよね、長義の青」
そんな刀剣男士たちの水面下のやり取りなど全く気にせず。
「……」
「綺麗な湖みたい。すこーし青緑も入ってるのかなぁ」
「…へえ、いちいち何かに例えるのが好きだね。人は。……なら、君は秋の実りの色、かな」
「秋」
「君は秋―――冬生まれだからな、丁度いいだろう」
「えー…」
つ、と目の下に指を滑らせ。
「えー、とは何だ?ご不満か? だが、実りがなくては――――…生きていけないだろう。人の子も、刀剣男士も、ね」
「……なんか一生懸命褒めてる?」
「は?馬鹿を言うな。俺はそんな事はしないよ。意味なく世辞を述べても何の得にもならないだろう?」
俺がそういう性格なのはわかっているだろうに、と付け加え。
「君が何かに例えるからだよ。……ああ、薄青を水色、と「水」の色と人は判断するね。なら…俺は水で君は地の色、かな。…そのどちらが欠けても……」
少し声を落とし、呟くように。
「っ…… 長義が、そう思ってるなら、嬉し…な」
「今更何を言っているのかな、君は」
ふわ、と瞳孔が大きくなる。
それは先程よりも影を感じて、光を遮られたから。
長義の銀糸の前髪が触れる。
「は!? ……ん、…長義。―――待っ、近…」
気が付いたらとんでもなく近い。
息がかかるほど。
肌の熱がわかるほど。
瞳は影を感じてか、それとも長義を瞳に映しているからだろうか、もっと大きくなり。
「へぇ、君が見たいと言ったんだが?俺の瞳を」
「でも、こんな近くなくて………も」
近すぎて、逆に見えないよ、と言う間もなく。
長いまつげがこちらの瞼に当たるんじゃないかという程の距離で。
滲む視界の中、頬に当てられた大きな手は耳元に、髪を撫でるように滑り。優しくもしっかりと固定されて。
「長義、まっ……て、 薬研…」
「鈍感だね、君は。薬研な大分前に去ったよ」
「え。…でも、誰かいる、かも」
「―――おや」
くす、と笑った息の流れがかかる。「俺がわからないとでも?」――とでも言うように。
そうだ、この山姥切長義という刀は。
「そんなに俺の青い瞳が羨ましいのなら……この距離なら君にも照らされるな」
「…ぅ、 ん」
「なんてね、…互いに持っていないから良いのかもしれないよ。それに自分で持っていたら見えないだろう?」
「あぁ……た、確かに…?」
―――この栗色の瞳に、他の色を宿すのは俺の色だけで十分だ。
「(…全く。………大したもんだね)」
「ね、長義さ、栗色の目、よかったり…する?」
「うん? あぁ別に、栗色が何とか―――、ではないよ」
髪の間の手、指でゆっくり髪を梳けば、心地いいのか、目が細められる。
「君の色だから好ましいと思っているだけだ。他の者の瞳など興味はないね」
「――――〜…ッ」
「おや、どうかしたかな」
「…長義のそういう言い方、慣れたつもりだけど…なかなか…ッ」
「ああ。……まぁいい、そう簡単に慣れる必要はないさ。俺も面白いからねぇ」
「ああ」と面白そうに声を上げ、恥ずかしさに目を逸らしたその顔をもう一度、長義はこちらに向ける。
瞳は先程よりも光を湛えて。
やがて深い色の瞳はゆっくりと閉じられ―――…。
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