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誕生日ですので(私が(笑))それっぽく。
これで行くとブレスレットかなり長くなるんですが(笑)その辺りは心眼で修正ください(笑)。
そして書きながらぬるぬると考える小説。
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本日は休息日だ。―――なのに、本丸は朝からバタバタと騒がしい。
時は晩秋。そろそろ冬の便りが届く頃。
畑仕事の刀らは旬を迎えた野菜を急いで収穫しているし、厨の方からも賑やかな声と共に指示を出す声も届いてくる。
それに伴って廊下も誰かが行ったり来たりしている。
「あははー、追い出されたわ」
「…だろうね」
笑いながら障子を開ける。この本丸の主の審神者だ。
「「駄目だよ、部屋で待っててね」って燭台切が。見た感じ結構いたなぁ〜」
「へえ…張り切ってるねぇ」
パタン、記録帳を閉じ。文机に置く。
「……? 主、髪に雪虫が付いてるぞ」
このあたり、と長義は自分の頭で指し示し。
審神者の濃い色の髪に雪のような綿が一つ。
「え、くっついてきちゃった?外に逃がさないと」
もう一度障子を開け、雪虫に触れないように髪をゆっくりと払う。微かな風を受けて、ふわ、と綿は飛んでいった。
その向こうに誰かが小走りで厨の方駆けて行くのが見えた。
「……そういえば偽物くんは畑、か」
「ああ、さっきすれ違ったよ。あー……籠の中身さえ見せてくれないとか謎だよね」
「はは…」
その様子が容易に想像できて長義は苦笑した。
恐らく今晩の献立を審神者に知られたくないのだろう。
「なんか、そこまでしてもらう事もないんだけどなぁ」
「へぇ?」
「あ!いやいや。そりゃ嬉しいけどね!?」
男士らの気持ちを考えてか、即、そう訂正する。
「年に一度は必ず来る、と? まぁ確かにそうかもしれないけどね。君も子供ではない。 ……子の頃ならば祝って祝ってと、喜ぶこともできただろうが」
「そうなんだよー。みんなに大変な準備させて。…って」
「まぁ、皆もそれがしたいんだから、いいのではないかな。君は皆の気持ちをただ、受け取ればいい」
長義は髪に手を伸ばし、それからそっと頬を撫であげた。
「ああ…ちなみに今日の俺の役目は「主を部屋に閉じ込めておく係」だそうだ。あまり出歩かせないでくれ、と皆から釘を刺されてね、…それなのに君ときたら見に行きたいの一点張りで。全く子供か、と思うね」
「えー……」
「これ以上、君に好き勝手されてはたまったもんじゃないな。後で愚痴を言われるのは俺だ。…呼びに来るまでここに居てもらうよ」
「はーい」
ここ、と長義が自分の真横を指差すから、審神者はその肩に寄り添って顎を置くように。
「長義」
「?」
「…なんでもない」
笑ったような息の流れとともに目を閉じて。それから少し肩に重みがかかる。
「………」
それから二人、他の刀剣男士が呼びに来るまで静かな時間を楽しんでいた。
――――いつもとは違う食事と、騒がしいことが好きな男士たちの余興。
酒好きの刀は審神者に酒を勧めるが「はいはい、そこまでだよ」と長義が毎度止めていた。
この審神者が酒が飲めないことは皆知っている筈だ。それなのに勧めてくるとは皆、相当はしゃいでいるのだろう。
「あ、長義、飲みたいなら飲んでもいいよ。私、断れるからさ」
「いいよ。…そこまでして飲みたい代物でもなし」
政府にいた頃、この本丸に来た当時、そう何度か口にしたことはあるのでこの身体は飲める身体ではあるらしい、だが、審神者の近侍になってからは酒瓶を開けたこともなかった。
「全く…騒ぎすぎだな。…明日に障るぞ」
「ま、いいんじゃねえか?」
そう言いながら近づいて来たのは薬研藤四郎だ。彼も何やら瓶を持っている。
「大将。中身は冷たい茶だから安心しろ。こういうのに入っていると気分は盛り上がるだろ?」
薬研藤四郎はこうなのだ。それも長義は知っているから「では俺の分もいただくか」と二人分受け取った。
「ありがと、薬研」
「ああ、おめでとう。大将。これからもよろしく頼むな」
* * * * * * *
「……全く、自己管理も出来ないのかな…呆れるね」
肩に腕を回し、廊下をずるずると引きずる。
「飲める身体だとしても、だ。…自分の許容範囲を超える馬鹿がいるか」
「本科……。長義は飲んでないのか」
「飲んだとしても俺はこんな失態は犯さない」
「…う…」
頭を抱えながら国広は布を顔を隠すように引っ張った。
「…主の……誕生日、だというのに」
「………。まぁ、そのようなことを気にする主ではないよ。お前も知っているだろう。皆が楽しくやれたのならそれで良し。そこはお前が気にする所ではない」
「…長義……。そう、か」
「あー、いたいた!!国広、大丈夫!?」
廊下を追いかけてくる。パタパタと音をさせて彼らの後ろまで追いついた審神者は少し追い越して顔を伺った。
「ああ…」
「お水持ってきたからさ、後で飲んで。あと薬研から二日酔いに効くって薬ももらって来たよ」
「…すまない」
「いいっていいって。好きなもの食べて飲んだならいいじゃん。あー…明日大変かもだけど。寒いからちゃんと掛けて寝るんだよー」
「!……」
「………」
山姥切の二振りは顔を見合わせた。
長義は「ほらね」と言わんばかりに。国広は泣きそうな顔の後、「ああ…」とつぶやいた。
「明日、大変な子たち多そうだねー。結構飲んでたもん」
山姥切国広に割り当てられた部屋に彼を帰し、審神者と長義は廊下を歩いていた。
「だろうねぇ。…全くはしゃぎ過ぎだ。顕現間もないわけでもないだろうに」
「あーでもでも長義が酔ってるとこ見てみたいかも!」
「…残念だけど、俺はそこまで愚かではないよ。 ―――あぁ、それとも、俺が酔いつぶれたら君が介抱してくれるのかな?それは面白い」
「それでも、いいけど」
「はは、馬鹿を言うな。……というなら君が酔いつぶれたところを見てみたい、が…。 ま、身体を壊すようなことはしてほしくないからね。…絶対に飲むなよ」
「はいはい。わかってますよぉー」
「それに、君が酔いつぶれたところなど、想像できるよ」
「え、そうかな」
「ああ」
目の前の角を曲がれば審神者部屋だ。
その隣が近侍である長義の部屋。
長義は審神者部屋ではなく、自分の部屋に導き、障子に手をかけ、開けると明かりを灯してから審神者を部屋に入れた。
「主」
「ん?」
「君が生を受けた日に、今までの君の歩みに感謝を。 ……そして、何よりこの俺と出会ったことに祝福を。おめでとう」
部屋は明かりをつけても少し薄暗かった。
だから、か。長義の手にある装飾品が余計、光を放つ。
「わ、あ ありがとう!」
そのまま長義は審神者を自らの腕の中へ。
至近距離の耳に、唇をつける距離で名を囁く。
「…っ!」
「……主、俺の名を」
「え? 長義…? 山姥切長義…」
「そう……。貴女は…俺のものだし、…この俺、山姥切長義も貴女のものだ…」
少し、濁った声に、審神者は長義の背中に腕を回しながらきゅ、と、掴んだ。
「…長義」
「ああ…。俺は人に造られた物、が原点であり、…付喪神だからね。 少しばかり……引っかかるだけだよ」
「大丈夫だよ、心配するなーって思うんだけど。…長義。私は長義や―――皆が何でも気にしないし」
「! ……そうだったね。……ならば、俺の側に居る事。これは刀ではない、一人の男として渡した物だ」
手首に青と透明に光るそれをくるりと回し付ける。
それからその石に唇を付けた。
「―――。……」
もう一度、名を口にして。
まだ迷っているのか、と長義は苦笑した。
自分は良い。この付喪神の身体は人と契りを結ぼうがどうなるわけでもないだろう。神が自分の意思で人を隠す。など、この世界に溢れた話なのだから。
そうではない、…人の身体や精神がどうなるか、だ。
「(だが、…もう遅い)」
だから彼女を、段々と俺に染めていく事にした。物理的にも精神的にもまず俺が盾になれるように。
「(心配するな、か。…はは、簡単な事を。 …だけど主がそう強く心を持って、尚、俺の神気を受け入れる気があるのならば都合は良い)」
手を、手首のそれを部屋の明かりに透かすようにあげる。
キラキラと光るのは多分、石の効果もあるだろうが、石へと籠められた山姥切長義の神気だ。
「きれい」
長義の腕から解放された審神者は、今度は長義の背後に回るとぎゅ、と腕を回した。
「大好き 長義」
「ああ…知っている。しかし何故俺の顔を見て言わないのかな」
「……っ、 は、……ずかし…」
「…は、…何を今更」
胸の前で組まれた審神者の手に長義は指を絡める。
手は大きい方だと言っていたが、その細さはやはり男のそれとは違う。
「…主」
「なに?」
「俺の―――この山姥切長義の許に来てくれて感謝する」
絡めた指のまま、それを唇へと。
「っ!?」
わざと音を立てるようにしたから、少し、舌先を付けたから、――何をされたのか背後に居てもわかる筈だ。そこで腕が緩まったから、長義は腕を解いてまた、向き直る。
「……確かに、少し酔っているのかもしれないな」
「え?」
「あぁ…そういえば、俺が酔いつぶれたら…介抱、してくれるのだろう?ならば、今晩は……」
向き合えば、少し低い視線だがほぼ同じ高さだ。
青い瞳はまっすぐと捕らえ。
「…覚悟してもらおうか…」
この腕から離すつもりはないよ、とまた、囁いた。
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長義ってこの慎重な性格だから迷ったと思うんですよねぇ。
主を自分のものにすることの危険性とか。
だけどもう諦められない所まできた、みたいな。
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