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万霊節だなぁ、と思って↓の超雰囲気小説から。
夕方〜夜の割には妙に明るいですけども…。
これでもレベル補正してみたのですが変わりませんでした…。いやいや、レベル補正に頼るなよ(笑)。
橙色の光が山々の間に落ちてゆく。 ああ、今年もこの日が来て、終わっていくのだ、と小さく息をついた。 ふわりと甘い香りを持つ木の枝。それと、小さな飾りたち。 「…にい、さま…」
かた。 細く開けていた窓枠が風にあおられて動き、それから枝が入った一輪挿しが倒れそうになって慌てて受け止めた。 「うわ! …はー、よかった、零れてない」 気が付くと山に完全に光が消えた所だった。闇の衣があたりを覆い始める。 窓の外―――下を見れば、小さな蝋燭の灯りがいくつか。また数人の人影が分かる。 「……」 「万霊節、か?こんなところでこそこそと」 「! ジョルジュ…」 「……」 窓辺に戻したその枝を指先で弾き、エスナの手の中の飾りを見下ろした。 「こういうのは騒ぐようなもんじゃないがな、ただ、皆とやるのもいいだろう。死者の日に壁があるわけでもない。……それに木犀ならこの裏にもある。…今からでも遅くはないぜ」 「…いいよ、大丈夫」 ジョルジュのその提案に目を細くし、それからまた枝に目を落とした。 「ま、無理にとは言わんが…」 「ジョルジュ、ここに居て平気?…私、一人でも大丈夫だから」 またちらりと外を伺う。 「死者の日」―――それはこの世に在らざる者全ての者の日だ。もう届かない彼らを想う日。だから庭ではその彼らを想うために蝋燭が灯され、静かな歌が響いていた。 まだ、話が分からないチキはそれでもこの刻限、皆と一緒に外に居られることが楽しいのだろう、はしゃいでいる姿が見える。 「(あの場所には…まだ加われない…)」 「……クラウス、か。……だが、お前の兄なら俺の兄でもあるんだろう。……気にならないと言ったら嘘になる。…エスナがそこに居られないと思うのなら――…」 「…!」 「俺はお前の傍に居てやるよ。…いや、お前と、クラウス、か」 隣の肩にこつん、と額を当て。目を閉じた。 「…ジョルジュ…。……でもね、…―――ああ、じゃあ来年、…来年のこの日にはこの場所の木で祈らせて。クラウス兄様の事…」 「……ああ」 「ジョルジュ」 「あん?」 橙色の光はほぼ完全に山に沈み、部屋の灯りが外よりも強くなっていた。だから、窓の外を向いている二人の表情は分かりにくい。 「ありがとう…。…多分、兄様も……喜んでくれると思う…」 「……」 微かに光る目元を指先で拭う。それから一輪挿しの枝を引き抜いてそのまま抱きしめた。 言葉の代わりのその行動に、エスナは目を閉じて微かに香る木犀を感じながらジョルジュの背に手を回すのだった。 多分、クラウスの事を堂々と追悼…というかそういう事は遠慮してるかな、とか。 部屋でこっそりやってるのをジョルジュが発見、みたいな。 作中の「5月」が〜は以下の曲から。知人の訳をアレンジ。 リヒャルト・シュトラウス作曲 ヘルマン・フォン・ギルム作詩 「万霊節」 |